至高の騎士、動きます〜転生者がこの世界をゲームと勘違いして荒らしてるので、最強騎士が分からせる〜

nagamiyuuichi

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転生者が来る‼︎

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「これだけ暗いってのに、燭台の一つもないとはな」

 歩くこと数十分、もはやどちらが北でどちらが南かもわからないそんな状況の中私たちは歩き続ける。

「これでは、何の目的で作られたのかもわからないですね」

 幸いだったのは、この迷宮が一本道であるということであろう……。

 何もない道を、私たちはただまっすぐに歩いていく……。

 道中罠が仕掛けられていることもあったが、熟練の冒険者の前ではあまり意味をなさず。

 ただ進み続ける……それだけの単純な探索が続いていた。

 「……ほかの遺跡もこんな感じだったのか?」

 代わり映えのしない一本道にアッガスさんも退屈をしたのか、そう私に声をかけるが。

 「それは違うね、異世界の遺跡といえば、確かに似たような素材を使って作られてはいるけど、内装は全く違うものだ。こんな殺風景な場所じゃなく、民家だったり、共同の施設だったりと、転生者たちの生活の痕跡がはっきりと見て取れるつくりのものばかりだった……こんな何もない遺跡は初めてだよ」

 それに対し、すかさず局長はアッガスさんにそう返す。

「なるほどね……となると、外れだったというわけかい?」

「当たりはずれの概念が適当かどうかは置いておいて……異世界の情報といった意味では今のところ大外れですね……ですが」

「ですが?」

「これだけ複雑なつくりだ、この最奥にある場所が重要な場所である可能性は高いよ」

 局長の息をのむ音が私たちの耳に響く。


その緊張が伝わったのか、アッガスさんもほかのギルドのメンバーも、つられるように息をのみ、無言のまま私たちはさらに奥へと進んでいく。

と。

「待って……その先に扉だ……結構大きいけど、そこから視認できるかい?」
 
 探知の魔法を使用している局長から通信がいきなり入り、アッガスさんは松明を掲げてその先を照らす。

 確かに、道の先には壁とは異なり装飾がされた扉のようなものが確認できる。

「扉の先は、大きな空洞になっているみたいだ。気を付けてくれ、生体反応は確認できないし罠もないが……やけにその扉の先の魔力の濃度が高い」

「魔力が充満している?」

 私はその矛盾した発言に首をかしげる。

 そも、魔力とは生物の生命をもとに作られるこの世界の元素だ……。

  その魔力が、生命のない石だけの空間に充満している。

 それは矛盾以外の何物でもない。

 確かに、強大な魔物や転生者がその場に滞在していた場合、残滓として魔力が残ることもあるが……だが、広大な部屋に充満するほどの魔力の残滓など聞いたことがない。

「いやーな感じだな」

 アッガスさんもその言葉に表情をゆがませ、扉に耳を当てて中の様子を探る。

「探知を逃れるような魔物がいるってわけでもなさそうだな」

 ごくりと息をのむ面々……物音一つしない無音の世界の中……。

 しかし扉の外に漏れだす魔力が局長の言葉が嘘ではないことを物語っている。

「嬢ちゃんは下がっててくれ、俺が先に入る。一人は俺に、一人は嬢ちゃんについてくれ」

 そういうと、アッガスさんは扉に手をかけ、ゆっくりと開く。

 通路をふさぐほどの大扉は、さほど力を込めたわけでもなさそうだというのに、ゆっくりと開き、酔ってしまいそうなほどの魔力が流れ込んでくる……。

 濃度も、質も、今まで感じたことのないほど桁違いで。

 それでいてどこか……暖かい。

「……なにもない……入ってこい……」

 アッガスさんが部屋に侵入をして数分後。

 扉の中では何かが起こるという様子はなく、アッガスさんのそんな短い声が響く。

 どうやら、本当にただ魔力が充満していただけの様で、私たちは言われるがまま中に入る。

「……これは……」

 思わず私は声を漏らし。

「すごい……」
 
 すぐ続けて局長が声を上げた。

 そこにあったのは儀式の祭壇。
召喚の儀式か、降臨の儀式かは不明であるが……、失われた魔法により編まれた術式が、その部屋いっぱいに書き込まれ、それぞれの術式が、天井にある六芒星と床にある六芒星をつなげる様に無数に書かれている。

「これは……」

 当然、昔の言語であり読むことはかなわない……だが、だからこそこの魔法が失われた魔法だと気づくことができたともいえよう。

「すごい、すごいぞすごいぞすごいぞすごいぞ! この形状は文献に残っている勇者召喚の魔法陣とそっくりだ! ロストマジックの一つだよ、もっとよく見せておくれサクヤ君! すぐに記録……いやすぐに暗記するか
ら!」

「ろ、ロストマジック?」

 興奮気味にそう語る局長、私はとりあえずあたりを一望し、映像を魔術研究局へと送る。

「うっわーー!? なんだこれ全然読めない!? でも形は記憶できるし、これぐらいならきっと研究室でも再現可能だな! あははは楽しくなってきた!」

「局長落ち着いてください! とりあえず聞きたいんですけど、ここってつまり転生者を召喚するための場所だったってことですよね」

「うん! そういうことになるね……」

 局長の言葉に、その場にいた誰もが身構える。

 アッガスさんでさえも、目の色を変えて大剣の柄に手を伸ばすほどだ。

「危険です。 やはり、この場所からは早々に引き返したほうが」

「大丈夫だよサクヤ君、見たところこの魔法陣は停止している。ロストマジックを理解できるものなら扱えるのだろうけど、あいにく僕たちはロストマジックのことなんて何もわからないからね……起動することは万が一にもありえないだろうよ。そもそも術式を起動するための呪文すらわからないんだから」

 しかし、局長はそう楽観的に笑うと、興奮気味にぶつぶつと独り言を始める。

 確かに千年前の魔法、ロストマジックは存在こそ仄めかされていたものの、残されてはいなかった伝説上の魔法。
 
 局長の言う通り私たちに扱えるわけもなく……魔法に携わるものとして興奮をするのは当然なのだが。

 私はどうしても、いやな予感を拭い去ることはできなかった。

「ふむ……ここにも門があるみたいだが、どうやら閉まってるらしいな」
部屋の反対側にはもう一つ扉があり、アッガスさんは扉をたたいてそう呟く。

「局長、この先に何があるかはわかりますか?」

「探知によると普通に同じような道が続いてるね。それ以上はすまないが、探知が届かない」

「わざわざ鍵が閉められている扉ってのは、その奥に宝がある代わりに、とんでもねえもんが閉じ込められてたりするもんだ。この戦力でむやみやたらに開かないほうが得策だろう」

 アッガスさんは扉をもう一度こつんとたたくとそう呟く。

「アッガス君の言う通り、欲を張らない方が身のためだろう。この場所だけでも十分な情報だし、残りの調査は万全の準備を整えたうえで当たるべきだ。今回はとりあえず、その召喚陣の調査がメインになるだろう。だけどなんだろうねこの文字……何かパターンがあれば転生者の世界っていうものが見えてくるんだけど……あぁ、やっぱ僕も行けばよかったかなぁ」

 興奮気味に語る局長に、それを聞き流し物珍しそうにあたりを見回すアッガスさんたち。

 私も調査のために、壁に描かれた文字なのか文様なのかがよくわからない術式を指でなぞっていくと……。

「あれ?」

 その文様の中に……一小節だけ、私たちの世界の言葉が紛れ込んでいた。

「局長……アッガスさん……これ」
私は不気味に思い、一歩引いて興奮気味の局長にそう声をかけると。

「ん? これは……僕たちの使用している言語に類似している。掠れていてこっちからじゃよく読めないけどね、サクヤ君は読めるかい?」

 促す局長に、私は目を凝らすが……。

「わかりません。 方言でしょうか? 単語はうっすらわかるのですが【始める】それに、何かを【押す】と書かれてます」

「押す? 始める? よくわからないな」
そう首をかしげていると。

「冒険を始める……だ」
後ろでアッガスさんの声が響く。

「アッガスさん?」

「プレススタート。ノエールズ地方の方言で、冒険を始める……という意味の言葉だ」

 アッガスさんの言葉に、私は首をかしげながら。

「冒険を、始める?」

 それはアッガスさんの言葉をただなぞっただけ。
 だけどその言葉に私ははっきりと、魔力が宿ったことを感じた。

【――――――!!】

 不意に、先ほどまで闇が覆っていた迷宮に光がともり、同時に床が、壁が、そして天井が発光を始める。

「なっ、なんだ! どうなってやがる!」

 突然の迷宮内の変化に、アッガスさんの驚愕する声が反響をする。

 相談する暇も与えないといったように……上下に設置された召喚陣が光り輝き、その中心に稲妻が落ち、炎がともる。

「そんな、ど、どうして! まずい、召喚システムが作動したみたいだ!? すぐにそこから離脱するんだサクヤ君……転生者が来る!」
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