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冒険者になろう‼︎
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「ひどい! 役に立つんだぞ! 僕は役に立たなくてもクッコロ旅行記は立つんだぞ!」
「はいはい、クッコロはもういいですから。それよりも帰還の方法ですが、何らかの手段で路銀を稼いで馬車か獣車で帰還をするのが一番現実的かと」
「まぁそれがベストだろうね」
「しかし、普通に働くのでは一か月この町で働くだけで終わってしまいます。情報を得つつ路銀を稼ぐのに、この町で一番適した職業等を教えていただけますか?」
「あー……えーと……そこはほら、召喚術を使って見世物小屋を開いたり、ねぇ?」
「今日び召喚術なんて珍しいものじゃないでしょうに局長……確かに私の取り扱う召喚獣は珍しいものではありますが、一般人から見れば何の変りもない召喚術ですよ……子供たちが喜んで手をたたいてくれれば大成功……そんなものです」
「あー、うー確かに」
なんて局長は早くも困ったような声を上げ頭を悩ませる。
早くも口すら出せなくなったご様子だ。
「やれやれ……それなら冒険者登録をすればいい」
頭を悩ませている私と局長……そんな私たちの姿を見かねたのか、不意にアッガスさんはため息をつくと、そう進言をしてくれた。
「冒険者登録?」
「この町アルムハーンは勇者伝説始まりの地ともいわれていてな、他国からも依頼が舞い込むぐらい大きな町だから仕事には困らないはずだ。俺のギルドもここなら顔が効く。馬がないからこの辺り限定のクエストを地道にこなすことになるだろうが、ギルドは酒場になっているからな……情報の出入りも激しい。お嬢ちゃん一人なら薦められねえが……そこの至高の騎士がいれば何も問題はないだろう?」
「だけど、冒険者として登録するにはそれこそギルドで試験を受けなくちゃいけないし」
局長は慌てるようにそういうが、それに対しアッガスさんは鼻で笑い飛ばし。
「お利巧さんかあんたは。 ここに正式にギルド登録されてる冒険者がいるだろうが」
そういうと首にかけてあるネックレスを引きちぎると、私に向かって投げてくる。
「わっ! たたっぷ!」
ずっしりと重い素材はおそらくオリハルコンでできているのであろう青紫に輝く宝石。そしてそこに刻み込まれた
【悠久の風】とかかれたクラン名。
「お前さんにはほら、こっちだ」
隣に寝ている女性の胸元に手を突っ込み、同じようにネックレスを引きちぎり、今度はナイトさんに渡す。私に渡されたものよりも一回り小さいものだが、同じようにそこには悠久の風と書かれている。
「……これは?」
「俺が率いているギルドクラン、悠久の風のギルドジュエルだ」
「ギルドジュエル?」
「ギルドに正式に登録された人間であることを証明する宝珠だ……以前はカードだったんだが、偽装が多すぎてな。オリハルコンならば加工も難しいし、偽造も困難だから代わりに広まったのさ」
「時代は進化しているんだねぇ、一時は冒険者を語った盗賊の討伐に騎士団もよく駆り出されていたけど、最近聞かなくなったと思ったらそういう技術の進歩があったんだね」
「ふむ興味深いな。ギルドジュエルという技術は俺の世界にはなかったからな」
ナイトさんは物珍しそうな表情をしながらも、首からギルドジュエルをかける。
「これを付けてればお前たちは悠久の風としてギルドで活動ができるようになる」
「それだけでいいのか?」
「あぁ。ただ盗むだけじゃギルドクランとしての活動はできないが」
そういうと、アッガスさんは腕を伸ばし短く。
「レイド……」
とつぶやくと、同時にギルドジュエルが光り輝く。
「光ったな……特別な魔術効果は見られないが」
「あぁ、俺の権限で一時的だがお前を冒険者クランの一員に招待した」
「なるほど。起動していなければギルドジュエルの意味はなさないということか」
「そういうこと、持ち主の手を離れるとこうして光を失う。光のないギルドジュエルを持った人間は偽物ということだ」
「ふむ、色々と考えられてるんだな」
「転生者が冒険者に成りすますって可能性もないわけじゃないからな……人種も出自も問わないからこそ、こういったことに慎重になるのさ」
苦笑いを浮かべながら、アッガスさんはそういうと、再度横になる。
「俺にできるのはこれぐらいだ……お前を護衛するのが俺の役目なのにな、逆に足手まといになるとは」
ばつの悪そうなアッガスさんの言葉。今回の出来事に責任を感じてしまっているようだ。
だが、それは間違いだ。
「いいえ、あの時アッガスさんが助けてくれなければ、私は今頃あの部屋で死んでいましたありがとうございました」
かなわないと分かっていて、私を守るために身を挺して戦ってくれたアッガスさん……その勇気のおかげで私は今ここにいる。
「そうか……まぁ少しでも役に立てたならいいが。とりあえず俺はもうひと眠りさせてもらう。どうにも動けそうにない」
「無理をしないほうがいい。あとはこの至高の騎士に任せて眠れ、タフだからとはいえ、低レベルでの蘇生は体に毒だ」
ナイトさんはそう言い、そっとアッガスさんを横たわらせるとさわやかに笑う。
その笑顔はどこか誇らしげで……そしてとてもうれしそうな表情だ。
「さて、話は済んだかい? アッガス君も休ませてあげないといけないし、とりあえずはアルムハーンの冒険者ギルドまでの道のりを説明するよ」
局長の言葉により、私はその質問を飲み込み、任務に戻る。
「お願いします、局長」
「ふふっ、冒険者ギルドに教えてやろうマスター……勇者ではなく、ナイトこそ至高の存在であることをな」
「いや、必要な分だけお金が稼げればいいですから、余計なことはしないでくださいよ?」
「え? あー……うむ」
「あ、そういえば旅行記には、おいしいしゃぶりソーセージのお店があるって書いてあるんだけど」
「行きません……」
「あ、はい」
変わったナイトに引きこもり……なんとも不安が山積みのパーティーではあるが、とりあえず私は宿泊施設を出て、アルムハーンの冒険者ギルドへと歩を進めるのであった。
◇
「はいはい、クッコロはもういいですから。それよりも帰還の方法ですが、何らかの手段で路銀を稼いで馬車か獣車で帰還をするのが一番現実的かと」
「まぁそれがベストだろうね」
「しかし、普通に働くのでは一か月この町で働くだけで終わってしまいます。情報を得つつ路銀を稼ぐのに、この町で一番適した職業等を教えていただけますか?」
「あー……えーと……そこはほら、召喚術を使って見世物小屋を開いたり、ねぇ?」
「今日び召喚術なんて珍しいものじゃないでしょうに局長……確かに私の取り扱う召喚獣は珍しいものではありますが、一般人から見れば何の変りもない召喚術ですよ……子供たちが喜んで手をたたいてくれれば大成功……そんなものです」
「あー、うー確かに」
なんて局長は早くも困ったような声を上げ頭を悩ませる。
早くも口すら出せなくなったご様子だ。
「やれやれ……それなら冒険者登録をすればいい」
頭を悩ませている私と局長……そんな私たちの姿を見かねたのか、不意にアッガスさんはため息をつくと、そう進言をしてくれた。
「冒険者登録?」
「この町アルムハーンは勇者伝説始まりの地ともいわれていてな、他国からも依頼が舞い込むぐらい大きな町だから仕事には困らないはずだ。俺のギルドもここなら顔が効く。馬がないからこの辺り限定のクエストを地道にこなすことになるだろうが、ギルドは酒場になっているからな……情報の出入りも激しい。お嬢ちゃん一人なら薦められねえが……そこの至高の騎士がいれば何も問題はないだろう?」
「だけど、冒険者として登録するにはそれこそギルドで試験を受けなくちゃいけないし」
局長は慌てるようにそういうが、それに対しアッガスさんは鼻で笑い飛ばし。
「お利巧さんかあんたは。 ここに正式にギルド登録されてる冒険者がいるだろうが」
そういうと首にかけてあるネックレスを引きちぎると、私に向かって投げてくる。
「わっ! たたっぷ!」
ずっしりと重い素材はおそらくオリハルコンでできているのであろう青紫に輝く宝石。そしてそこに刻み込まれた
【悠久の風】とかかれたクラン名。
「お前さんにはほら、こっちだ」
隣に寝ている女性の胸元に手を突っ込み、同じようにネックレスを引きちぎり、今度はナイトさんに渡す。私に渡されたものよりも一回り小さいものだが、同じようにそこには悠久の風と書かれている。
「……これは?」
「俺が率いているギルドクラン、悠久の風のギルドジュエルだ」
「ギルドジュエル?」
「ギルドに正式に登録された人間であることを証明する宝珠だ……以前はカードだったんだが、偽装が多すぎてな。オリハルコンならば加工も難しいし、偽造も困難だから代わりに広まったのさ」
「時代は進化しているんだねぇ、一時は冒険者を語った盗賊の討伐に騎士団もよく駆り出されていたけど、最近聞かなくなったと思ったらそういう技術の進歩があったんだね」
「ふむ興味深いな。ギルドジュエルという技術は俺の世界にはなかったからな」
ナイトさんは物珍しそうな表情をしながらも、首からギルドジュエルをかける。
「これを付けてればお前たちは悠久の風としてギルドで活動ができるようになる」
「それだけでいいのか?」
「あぁ。ただ盗むだけじゃギルドクランとしての活動はできないが」
そういうと、アッガスさんは腕を伸ばし短く。
「レイド……」
とつぶやくと、同時にギルドジュエルが光り輝く。
「光ったな……特別な魔術効果は見られないが」
「あぁ、俺の権限で一時的だがお前を冒険者クランの一員に招待した」
「なるほど。起動していなければギルドジュエルの意味はなさないということか」
「そういうこと、持ち主の手を離れるとこうして光を失う。光のないギルドジュエルを持った人間は偽物ということだ」
「ふむ、色々と考えられてるんだな」
「転生者が冒険者に成りすますって可能性もないわけじゃないからな……人種も出自も問わないからこそ、こういったことに慎重になるのさ」
苦笑いを浮かべながら、アッガスさんはそういうと、再度横になる。
「俺にできるのはこれぐらいだ……お前を護衛するのが俺の役目なのにな、逆に足手まといになるとは」
ばつの悪そうなアッガスさんの言葉。今回の出来事に責任を感じてしまっているようだ。
だが、それは間違いだ。
「いいえ、あの時アッガスさんが助けてくれなければ、私は今頃あの部屋で死んでいましたありがとうございました」
かなわないと分かっていて、私を守るために身を挺して戦ってくれたアッガスさん……その勇気のおかげで私は今ここにいる。
「そうか……まぁ少しでも役に立てたならいいが。とりあえず俺はもうひと眠りさせてもらう。どうにも動けそうにない」
「無理をしないほうがいい。あとはこの至高の騎士に任せて眠れ、タフだからとはいえ、低レベルでの蘇生は体に毒だ」
ナイトさんはそう言い、そっとアッガスさんを横たわらせるとさわやかに笑う。
その笑顔はどこか誇らしげで……そしてとてもうれしそうな表情だ。
「さて、話は済んだかい? アッガス君も休ませてあげないといけないし、とりあえずはアルムハーンの冒険者ギルドまでの道のりを説明するよ」
局長の言葉により、私はその質問を飲み込み、任務に戻る。
「お願いします、局長」
「ふふっ、冒険者ギルドに教えてやろうマスター……勇者ではなく、ナイトこそ至高の存在であることをな」
「いや、必要な分だけお金が稼げればいいですから、余計なことはしないでくださいよ?」
「え? あー……うむ」
「あ、そういえば旅行記には、おいしいしゃぶりソーセージのお店があるって書いてあるんだけど」
「行きません……」
「あ、はい」
変わったナイトに引きこもり……なんとも不安が山積みのパーティーではあるが、とりあえず私は宿泊施設を出て、アルムハーンの冒険者ギルドへと歩を進めるのであった。
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