至高の騎士、動きます〜転生者がこの世界をゲームと勘違いして荒らしてるので、最強騎士が分からせる〜

nagamiyuuichi

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隠された村

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十数分後。

【本当すんまっせんでした。調子乗ってました。お願いですから、その……もうぶたないで】

 全身という全身を殴り続けられ宙を舞うこと十数分。 

 最高硬度を誇る鱗と体のおかげで外傷はないドラゴンさんであったが、ぼこぼこにされ続けた痛みで戦意喪失したのか、器用に前足を折り畳み頭を垂れて土下座のようなポーズをとる。

 芸達者なことだ。

「分かれば良い、とりあえず満月草をもらってもいいか?」

【どーぞどーぞ!!もう何なら背中の全部持って行って構いませんので!】

「いや、三つでいい。そんなに量は必要ないからな」

「そういうところは謙虚ですよね、ナイトさん」

「強欲はナイトにふさわしくはない」

【流石ですナイト様】

「半面巨竜くん、君にはプライドはないのかい?」

【命大事に、鉄則です】

「先代勇者の時も、そうやって見逃してもらったんだね……」

 局長はあきれたようなセリフを漏らすとコーヒーをすする。

「この森は相当量の草花があるが、ふむ、この辺りはお前を含め大半が外の世界のものだな」

【ええ、その通りでございます。千年より前から私はこの森を作り、生活しておりました。もともとあった森は消
えてしまいましたが】

「お前が管理しているのか?」

【いえ、私はこの場にとどまるように言われておりました】

「誰に?」

【先代勇者でございます】

「先代勇者が? どうして君にここにとどまるように言ったんだ?」

【恥ずかしながらその理由までは分かりませんが、退治されたのちこの森より外には出られないという誓いを立て
させられまして……気が付けば背中に草が生える始末】

「ふむ。満月草の栽培に使われたか、となるとこの草を取りに来ていたものがいたはずだが」

【ええ、エルフ族の言うことを聞くようにと言われてずっとここに】

「人間は嫌いだったんじゃなかったのかい?」

【エルフ族は別です。彼らはとてもおいしい石をくれるので】

「餌付けされてる……」

「で、そのエルフ族はどこに?」

【わかりません。モノを食べなくても死にはしないんですけどね。おなかがすいてしまって、気が立っていたんです】

「それはいつごろから?」

【だいたい一か月前くらいですかね】

「案外最近だな」。

「様子は、見にいっていないんですか?」

【近寄れないんですよ、あのあたりは嫌なにおいがして……ほかの魔物も動物も同じです】

「強力な魔よけの結界か何かかなぁ? エルフ族は魔法にたけているっていうし」

【むっ! 外の世界の魔法ならいざ知らず、私の鱗はたいていの魔法は弾きます。エルフ族の魔法ごときにやられたりはしませんよ!】

「なるほどな……近くまでは案内できるか?」

【近くまでなら問題ないですよ。道が入り組んでますので私の背中に乗ってください】

「では頼む」

「ちょっとちょっと! ナイトくん? 目的は達成したんだから、早く戻ったほうが」

「エルフの森が気になった。少なくともこの森は先代勇者、転生者が残したものだ。何かあるかもしれない」

「……!?」

その言葉に、私も局長もうなずくことしかできなかった。

                   ■
 竜の背に乗り、しばらく森を進む。

 森は身を震わせ竜を歓迎し、自分たちから道を開ける。

 まるで、懐かしい友人の来訪を喜ぶかのように軽快に葉は騒めきたち、心地よい風が私たちの頬をなでる。

「随分とこの森とも長いみたいですね、ドラゴンさん」

【おや、お嬢さんはもしかして召喚師ですかい? 森の声が聞こえると見た】

「ええまぁ、詳しい声までは聞こえないんですけれども、なんとなくドラゴンさんが通ると、森たちが嬉しそうです」

【まぁ、この世界に来てからろくなことはなかったですけどねぇ、この森が私の家族みたいなもんですよ……】
懐かしそうにそう言い、ドラゴンさんは首を伸ばして近くにあった気になる木の実を口で食む。

「主食は岩じゃなかったのか?」

「雑食ですから。岩が好きってだけです」

「よくわからない食生活をしていますね。どういう構造してるんですか?」

【さぁ、もともとそういう生き物なので】

 ドラゴンさんはそういうと、さらに先へと進んでいく。

 森は穏やかそのものであり、魔物一匹獣一匹ドラゴンさんの前に現れることなく、やがて

 独特な柑橘系のような匂いが森の奥からかすかに香る。

「あ、いい匂い」

【これ、これっす! この匂いっす……う、まだ少量だからぎりぎり大丈夫ですけど、は、鼻が曲がりそう。ナイ
ト様……マスターサクヤさま……こ、ここが限界です……】
同時にドラゴンさんは体中から滝のような汗を流しその場に倒れこむ。

「花の香り……どうやらこの匂いには魔物はこの匂いが苦手らしいな」

「は、鼻が焼けただれそうっす」。

「これ以上は無理そうだ。……マスター、ここからは徒歩で行こう」

「そうだね、エルフの村はまだ先かい?」。

【こ、ここからそう遠くないはずっす……申しわけないですが、私はもう少し離れたところで……休んでますね】

「ええ、ありがとうドラゴンさん」

 ずしりと、踵を返し来た道を戻っていくドラゴンさん。

「行こうか、マスター」
                     ◇
 
 匂いをたどると、目的地に到着するまではそんなに時間はかからなかった。

「なるほど、これが魔物が近づけない理由か」

 森を抜けた先にあったのは一面の花畑。

 光も差さないほど暗くなった森を照らすように、煌々と光り輝くその花は、独特な香りを発しながら、私たちが近
づくとざわりと一度身を震わす。

「ふむ……魔物にとっては毒性が強い香りを出す花のようだ。なるほど、あのドラゴンでさえも嫌がるわけだ」

「これは、イリーラスの花だね。別名勇者の加護と呼ばれる花さ」

「イリ―ラスの花?」

「君が知らないということは、どうやらこの世界の花みたいだね。この花は人間に対しては毒性はないんだけど、魔物に対しては毒になる花なんだ。大気中に飛び交う花粉が、魔物に対しては有毒らしく、茎の部分にはさらに強い毒を保有している。綺麗な水に肥沃な土壌がないと育たない花なんだけど……こんなに咲いているのは初めて見るよ。 あのドラゴンが嫌がるわけだ」

「ふむ、魔物除けにはもってこいといったところか。となるとこの花畑の向こう側がエルフの村のようだ……ご丁寧に花を踏まないように道が作られている」

 踏んでしまわないように、ナイトさんと私は花畑を歩いていくとイリ―ラスの花は姿を消し、その代わりに茨が生い茂る場所が現れ、行く手を阻む。

 来るものを拒む壁……触れればその身を傷つける拒絶の塊。 

 だけど、その壁には違和感がある。

 目の前に生い茂る茨は確かに生きている壁であるはずなのに……生命の息吹を感じられないのだ。

 回りにあふれる声明の息吹に囲まれていて誤魔化されそうになるが……ここまで近づくとその異常性がわかる。

「魔力を感じるね……その壁はまやかしだ」

「のようだな」

剣を抜きナイトさんは一閃を振るう。

「……これは……」

 幻影のいばらの向こうに崩壊した村が現れた。
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