至高の騎士、動きます〜転生者がこの世界をゲームと勘違いして荒らしてるので、最強騎士が分からせる〜

nagamiyuuichi

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走れ風のようにイワンコフ‼︎

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【うっはははははははははっはは!! 外だ! 外ですよ本当に!】

 竜の背に乗りナイトさんとアルムハーンへと戻る。

 徒歩で歩いたときは果てしない道のりにも見えた平原の道も、龍の背に乗り走ればどれほど短いことか。吹き抜ける風は嵐のように強くも心地よく髪をなびかせ。

 背中に咲き誇る満月草が、私の太ももや腕を優しくなでては独特の優しく甘い匂いをこすりつけてくる。

 それだけでも気持ちがいいというのに、空は雲一つない青い空。

 今日という日は最高のドラゴンドライブ日和というやつだ。

「なかなか早いものだな、イワンコフ!」

【地竜は空を飛べない代わりに足が速いんです! てか、私イワンコフって名前になったんですね! 了解っす!】

「いええい! 走れイワンコフ! 風のようにでぇす!」

「えぇと、約一名性格が変わっちゃってる人がいるから代わりに聞くけど、本当によかったのかい? 先代勇者が封印したって言われる竜の封印を解くなんて」

「問題はない。俺と同じようにマスターに従うように契約をしただろう。ある程度の動きは操れるはずだ、それにこいつは俺の世界でもそこそこ高位な魔物だ。低レベルの魔物なら向こうから逃げていく。この速さだ……お前のもとにマスターが戻るには、うってつけの足だと思うが?」

「それはそうだけど……自分を封印したアルムハーンの人たちに、復讐をするかもしれないじゃないか」

【ご主人!! 空! 鳥! 鳥の群れっすよ!!】

「あっはははははは! そら負けるなイワンコフ―!」

【了解っすー!】

「って、言おうとしたけどその心配はなさそうだね」

「復讐心よりも、解放された喜びのほうが勝っているようだ……」

「前向きな竜で助かったよ」

 何やら独特な雰囲気で楽し気に話す二人。

【そういえば、ナイト様!】

 そんな二人の会話を聞いていたのか、ふとイワンコフはナイトさんに向かって走りながら声をかける。

「どうした? イワンコフ」

【いえ、差し出がましいことで恐縮なんすけど、たぶんこのまま俺がアルムハーンまで向かっちゃうと、あっち大騒ぎになると思うんすよね】

 そんなイワンコフの言葉に、私はポンと一つ手を打つ。

 確かに、先代勇者を封印した竜が、アルムハーンに向かって猛ダッシュをしているのだ。

 大騒ぎになっても不思議ではないし、むしろそっちのほうが自然だろう。
しかし、ナイトさんはそれすらも織り込み済みだというように一度イワンコフの背中をなでると。

「あちらも魔物退治のプロだ、いきなりこの巨体に全軍突撃をしてくるということはないだろう。少し手前で止めてくれれば戦闘にはならないさ、まぁ弓矢ぐらいは飛んでくるかもしれないが」

【へっへっ! 弓ぐらいで倒れる俺じゃねーですよ主様! 自慢じゃないですが、私は竜の中でも最高硬度の金剛石っすから! 並大抵の攻撃じゃびくともしないっすよ!】

金剛石ダイアモンド?……けずって売ったら……お金になるでしょうか」

 ぽつりと己の欲望が口から顔をのぞかせた。

「やるかマスター? ゴリゴリと」

「おそらく、歴史上最大カラットのダイアモンドを取り出すことに成功できるね」

 そして、その欲望に食いつく二人。

【ひいいいぃ! 後生っす! 体を売るのは勘弁してほしいっす! 親からもらった大切な体なんっす!】

 そんな会話に鼻から煙を吹き出して懇願するイワンコフに、私たちは微笑む。
 
 誰一人瞳は笑っていなかった。

「さて、話は戻るけど、アルムハーンが近づいてきたよサクヤ君」

 話題は戻り、局長の言葉に私は顔を上げると。

 アルムハーンの城壁がうっすらと見える距離まで近づいてきた。

「……ナイトさん、そろそろあちらからドラゴンさんのことを確認できる距離まで近づいてきましたが……本当にこのまま突っ込むんですね?」

「あぁ、このままだ。行け! イワンコフ!」

【了解っす!】

 ナイトさんの命令にイワンコフさんは速度を上げる。

「さて、この町はどう打って出るのか……」

 風を切る音の中、そんな期待に満ちたつぶやきが聞こえたような気がした。
                       ◇
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