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イブキミコト
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「第三番魔法クレイドル。ふむ、二人きりになりたいとは言ったが、随分と強引なデートのお誘いだな。ミコト・イブキ」
カランとグラスを鳴らし、ナイト=サンは喉を鳴らして蒸留酒を飲み干す。
「あら、お嫌いだった? でも私、人の目があると気になっちゃうのよね。誰にも見られたくない場合は、隠れるんじゃなくてこうしてみんな眠らせちゃうの」
背後を振り返ると、そこには今朝であった女性の姿。
黒い服を身にまとい、クリーム色の髪を揺らしてギルドの中に入ってくる女性は。
「今朝方ぶりね、ナイトさん」
なんて挨拶をしながら店の中を歩く。
「あぁ、随分と早くお前と夜を過ごせてうれしい。金貨銀貨になど興味はないが、これならば今日の労働の対価としては十分と言えるだろう」
ナイトさんはくるりと振り返ると、両手に持ったグラスをカチンと打ち鳴らす。
「まるで来るのが分かっていたって言いたげね」
「あぁ。わかっていたとも。朝、わざと俺にぶつかったことも、ずっとそこのネズミに監視をさせていたこともな」
そういうと、ナイト=サンはおつまみとして出された小さな豆を人差し指ではじくと。
「ひゅい!」
声をあげて一匹のネズミが打ち抜かれ、煙を上げて消滅をする。
「ふぅん。あんたほどの男にばれてないのはおかしいとは思ったけど、踊らされてたのは私の方ってわけ? 気に入ったわよナイト=サン。素敵な夜になりそうね」
「あぁ、ぜひともそうしたいものだ。一パーセントほどは、ソニックムーブのかたき討ちの可能性も考慮していたが、その心配は無用のようだしな」
「あぁ、それに関してもお礼を言わなきゃね、本当は蜻蛉切に始末させる予定だったんだけど。手間が省けたわ」
「なるほどね、まんまと利用されたわけだ」
「まぁね。お礼に付き合ってあげるから勘弁して」
立ち上がるとナイト=サンは空のグラスに蒸留酒を注ぎ、投げてよこす。
お酒はこぼれることなくゆっくりと平行移動をし、やがてミコトの手の中に納まった
「ブレイブは使えないんじゃなかったかしら?」
「ナイトに不可能はない。三度も見れば簡単に体得出来よう」
「本当、怪物ね」
「誉め言葉として受け取っておこう。レディ」
にこりと笑みをこぼすと、ナイト=サンは自分のグラスに蒸留酒を注ぐ。
「この出会いに乾杯、とでも言っておくか?」
「君の瞳に、の方がロマンチックよ。古臭いけれどね」
「ではそれで」
グラスを少し上げて、ナイト=サンとミコトはグラスを合わせる。
「まさか、こんなにも早く攻め込んでくるとは、予想外だったよ」
こくりと口元にグラスを運びナイト=サンはおどけて見せる。
ミコトもそれにつられるように口に酒を含み、右隣に腰かけた。
寝息を立てる人々は、転生者が現れたことに気づくこともなく健やかな眠りについており、そんな人々を彼女は一瞥すると、まるで我が子を慈しむかのような穏やかな笑顔を見せた。
「いい顔して寝てるわ」
「お前もな。とても国崩しなどを考えるようには見えない」
「ソニックムーブと同じかと思った? それとも、伝説の騎士様は私もあいつも同列に見えてしまうのかしら?」
グラスをカウンターに置くと、ミコトはじとりとした目でナイト=サンを睨むが。
ナイト=サンは気にする様子もなく酒を注いでその言葉に応える。
「いいや、比べるべくもないだろう。君は賢くそして強い」
「酒と言葉で酔わせたからって、簡単には落とせないわよ? それともその言葉も私が本心でのぞむ理想だったりするのかしら?」
「さぁな。俺は理想の騎士ではあるが理想の恋人ではない。この言葉はただ事実のみを口にする余計なものだ」
呆れるように嘆息をつくと、ナイト=サンは再度蒸留酒をグラスに注ぐ。
「そう、貴方もしかして自分が何者なのか薄々気づいているのかしら?」
「いいや、この世界の人間でも、転生者でもない。虚ろでぼやけた魍魎のようなもの。その程度の認識しかない」
「それでよく自我を保てるわね」
「どこにいたかなど問題ではない。ただ俺は理想の騎士であればそれでいい」
「なるほどね、随分ととんでもないものが作られたわけね」
からりと、女性のグラスの氷が音を立てる。
ナイト=サンはそのグラスにお酒を注ぐことはなく。
「さて、ここに来たということは、教えに来てくれたのだろう。俺がいったい何者なのか」
ナイトさんは代わりに質問を注ぐ。
交差する視線。敵意ではなく異常なまでの好奇心がお互いの心臓を高鳴らせる。
「あなたの所の局長さんが推理した通りよ。あなたを呼んだのは私、そしてあなたは私が作り出した理想の怪物」
やがて少女は、そんな答えをナイト=サンに伝える。
「理想の怪物? 随分と変な名前だ」
「ええ、正式な名前は【多相の戦士】召喚主の理想を読み取り、敵が想像する最強の存在に姿を変えて敵を倒す伝説の怪物。それがあなた」
カランとグラスを鳴らし、ナイト=サンは喉を鳴らして蒸留酒を飲み干す。
「あら、お嫌いだった? でも私、人の目があると気になっちゃうのよね。誰にも見られたくない場合は、隠れるんじゃなくてこうしてみんな眠らせちゃうの」
背後を振り返ると、そこには今朝であった女性の姿。
黒い服を身にまとい、クリーム色の髪を揺らしてギルドの中に入ってくる女性は。
「今朝方ぶりね、ナイトさん」
なんて挨拶をしながら店の中を歩く。
「あぁ、随分と早くお前と夜を過ごせてうれしい。金貨銀貨になど興味はないが、これならば今日の労働の対価としては十分と言えるだろう」
ナイトさんはくるりと振り返ると、両手に持ったグラスをカチンと打ち鳴らす。
「まるで来るのが分かっていたって言いたげね」
「あぁ。わかっていたとも。朝、わざと俺にぶつかったことも、ずっとそこのネズミに監視をさせていたこともな」
そういうと、ナイト=サンはおつまみとして出された小さな豆を人差し指ではじくと。
「ひゅい!」
声をあげて一匹のネズミが打ち抜かれ、煙を上げて消滅をする。
「ふぅん。あんたほどの男にばれてないのはおかしいとは思ったけど、踊らされてたのは私の方ってわけ? 気に入ったわよナイト=サン。素敵な夜になりそうね」
「あぁ、ぜひともそうしたいものだ。一パーセントほどは、ソニックムーブのかたき討ちの可能性も考慮していたが、その心配は無用のようだしな」
「あぁ、それに関してもお礼を言わなきゃね、本当は蜻蛉切に始末させる予定だったんだけど。手間が省けたわ」
「なるほどね、まんまと利用されたわけだ」
「まぁね。お礼に付き合ってあげるから勘弁して」
立ち上がるとナイト=サンは空のグラスに蒸留酒を注ぎ、投げてよこす。
お酒はこぼれることなくゆっくりと平行移動をし、やがてミコトの手の中に納まった
「ブレイブは使えないんじゃなかったかしら?」
「ナイトに不可能はない。三度も見れば簡単に体得出来よう」
「本当、怪物ね」
「誉め言葉として受け取っておこう。レディ」
にこりと笑みをこぼすと、ナイト=サンは自分のグラスに蒸留酒を注ぐ。
「この出会いに乾杯、とでも言っておくか?」
「君の瞳に、の方がロマンチックよ。古臭いけれどね」
「ではそれで」
グラスを少し上げて、ナイト=サンとミコトはグラスを合わせる。
「まさか、こんなにも早く攻め込んでくるとは、予想外だったよ」
こくりと口元にグラスを運びナイト=サンはおどけて見せる。
ミコトもそれにつられるように口に酒を含み、右隣に腰かけた。
寝息を立てる人々は、転生者が現れたことに気づくこともなく健やかな眠りについており、そんな人々を彼女は一瞥すると、まるで我が子を慈しむかのような穏やかな笑顔を見せた。
「いい顔して寝てるわ」
「お前もな。とても国崩しなどを考えるようには見えない」
「ソニックムーブと同じかと思った? それとも、伝説の騎士様は私もあいつも同列に見えてしまうのかしら?」
グラスをカウンターに置くと、ミコトはじとりとした目でナイト=サンを睨むが。
ナイト=サンは気にする様子もなく酒を注いでその言葉に応える。
「いいや、比べるべくもないだろう。君は賢くそして強い」
「酒と言葉で酔わせたからって、簡単には落とせないわよ? それともその言葉も私が本心でのぞむ理想だったりするのかしら?」
「さぁな。俺は理想の騎士ではあるが理想の恋人ではない。この言葉はただ事実のみを口にする余計なものだ」
呆れるように嘆息をつくと、ナイト=サンは再度蒸留酒をグラスに注ぐ。
「そう、貴方もしかして自分が何者なのか薄々気づいているのかしら?」
「いいや、この世界の人間でも、転生者でもない。虚ろでぼやけた魍魎のようなもの。その程度の認識しかない」
「それでよく自我を保てるわね」
「どこにいたかなど問題ではない。ただ俺は理想の騎士であればそれでいい」
「なるほどね、随分ととんでもないものが作られたわけね」
からりと、女性のグラスの氷が音を立てる。
ナイト=サンはそのグラスにお酒を注ぐことはなく。
「さて、ここに来たということは、教えに来てくれたのだろう。俺がいったい何者なのか」
ナイトさんは代わりに質問を注ぐ。
交差する視線。敵意ではなく異常なまでの好奇心がお互いの心臓を高鳴らせる。
「あなたの所の局長さんが推理した通りよ。あなたを呼んだのは私、そしてあなたは私が作り出した理想の怪物」
やがて少女は、そんな答えをナイト=サンに伝える。
「理想の怪物? 随分と変な名前だ」
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