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運命の終焉
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「 エミリア、一緒に行こう」
スタリオンは右手を向けてくる。 握手をしようというのだろう。
私はその手を取ることはできない。
「 私はお前たちの仲間に戻ることはできない」
「 俺たち仲間だろ」
「 しかし、私は犯罪者だ」
勇者パーティーの中に罪人がいれば外聞が悪い。 私は裁かれるだけの存在だ。
「 私にはもう関わらない方がいい・・・・・・」
「 そんなこと言うなよ!」
スタリオンは叫ぶように告げた。
「 旅をしている時に、エミリアが俺の失敗をフォローしてくれただろ。 だから今度は、俺がーー俺たちがフォローする番だ。 一緒に罪を 償っていこうぜ」
スタリオンは愚かしいほどお人好しだ。カティアも 優しく微笑んでいる。
「 エミリアさんは魔王に操られていたのでしょう。 情状酌量の余地はあるよ」
「 戻ってきてくださいよ、エミリア様」
「 エミリアがいないと、私ひとりではこの人達へのツッコミが追いつきませんわ」
ライルと チェルシーまで普通に接してくれた。 涙が出るほど嬉しい。
「 こんな私を受け入れてくれてありがとう」
私はスタリオンの手を取ろうと手を伸ばした。
その時。
不穏な気配を感じる。 スタリオン達はまだ気づいていないようだ。
「・・・・・・ 悪いが先に行ってくれ」
「 どうかしたのか?」
「 私はお父様と戦わなければいけないのだぞ。 気持ちの整理がつくまで時間が欲しいんだ」
「ああ、 わかった」
「 待ってるからね」
スタリオン達が見えなくなった後、 私は 誰もいないはずの後ろに向かって話しかけた。
「 そろそろ出てきてはどうだ?」
「 この私を一人で相手にしようというのかね」
現れたのは魔将軍ザンギラだった。
生きていたのか、 それとも魔王が復活した事で蘇ったのか。 何にしろ厄介な相手である。 5人がかりでやっと倒せた相手だ。 まともにやれば私が勝てる相手ではない。
「 こんな私でも足止めくらいはやれるさ」
「 では、確かめるとしよう」
ザンギラが 動き出す。 その一瞬の隙を突いて、 私は奥義を炸裂する ことに成功した。
「【刹那】!!」
素早さと手数で戦うスタイルの私が、 唯一 敵を一撃で葬ることができる必殺技だ。 そのぶん体への負担が大きいが、 そんなことには構っていられない。
私はバックステップして、 四方八方動き続けた。
「 生意気な小娘が!」
ザンギラは、 頭に血が上って 私を殺すことしか 考えられないでいる。 これならば、 スタリオンたちを追うことはないだろう。
「 そこだ!!」
とうとうザンギラの一撃が私を捉えた。 私は岩になりボロボロと崩れ落ちていく。
「 ゴーレムだと!? 本体はどこに行った!?」
最初の一撃以外は、 私の形をしただけのゴーレムだった。ザンギラは 冷静さをかけていて気づかなかったようだ。
「 時間稼ぎのつもりか!」
「 貴様を倒すためのな」
「 何!?」
私の命を代償とした魔法で、ザンギラを 倒してみせる。
「【 ブラックホール】!!!」
闇の異空間が周囲を飲み込んでいく。ザンギラを、 私をーー 要塞全てを飲み込んでいった。
私は聖剣に話しかける。
「 付き合わせて悪かったな、シャルロッテ」
「 私はどこまでもお嬢様にお供しますよ」
暗闇だったはずの空間が光に包まれていく。
走馬灯というものだろうか。 懐かしい光景が映し出されていった。
私が幼い頃に風邪を引いて、 お父様が看病してくれた。当主としての仕事が忙しいのに、 わざわざ来てくれたことを嬉しく思ったことを覚えている。
額に当てられた大きくて優しい手の感触。
私は確かにお父様に愛されていたんだ。
こんなに優しかったお父様が、どうして 魔王の手先となってしまったのだろう。 何か理由があるはずだ。
子供の頃の私が眠った後でも映像が続いている。
「 神様、どうか私の可愛いエミリアの命を奪わないでほしい」
お父様は 神に祈りを捧げている。
私は命の危険があるほど重い病気だったのだろうか。 正直よく覚えていない。
「 その願い 私が叶えてやろう」
邪悪な声が聞こえてきた。
そうか。 お父様は私を助けるために魔王からそそのかされたんだ。
ひどいじゃないか。涙が溢れ出てくる。
こんな安っぽいお芝居のような事実を、どう受け止めればいい?
お父様は 魔王の言うことを聞き、 7本目の聖剣で魔剣の封印を弱めた。
場面が変わる。
私の死を知ったお父様は魔王に刃向かった。 しかし、実力が違いすぎてあっさりと殺されてしまう。
「 親子共々愚かだな」
私たちは今まで何のために戦ってきたのだろう。 すれ違って、上手く気持ちを伝えられてこなかった。
あの世に行けば伝えられるだろうか。
次の場面は、スタリオンが見事に魔王を討ち果たしたところだった。
「 エミリア、見てくれたか。俺たち、勝ったぞ」
ああ、 見事だ。 スタリオンは既に私よりも強くなっている。 本物の勇者だ。
魔王を倒しただけでは終わらなかった。
魔力を制御していた魔王がいなくなったことで、 魔力暴走により大爆発が起ころうとしている。
聖剣を 代償として、 暴走は食い止められた。
しかし、4本だけでは足りないようだ。
「 お嬢様、どうやら お別れのようですね」
「 あの世ですぐに会えるさ」
誰にも語り継がれることがない、 5本目の聖剣も 魔力暴走を食い止める一役を買った。
気が付くと私は、草原の中にいた。 これも幻覚の一種だろうか。 一人の女の子が私に近づいてくる。
「 私リーリア。 あなたのお名前は?」
リーリアは 心なしかスタリオンに似ている気がする。カティアの 面影もあった。 彼女はきっと二人の娘なのだろう。
走馬灯は未来の映像まで見せてくれるのか。
あるいは 最後の夢なのだろうか。
「 私の名前は・・・・・・」
リーリアとの 出会い。 それは終わらない夢の始まりだったーー。
[完]
スタリオンは右手を向けてくる。 握手をしようというのだろう。
私はその手を取ることはできない。
「 私はお前たちの仲間に戻ることはできない」
「 俺たち仲間だろ」
「 しかし、私は犯罪者だ」
勇者パーティーの中に罪人がいれば外聞が悪い。 私は裁かれるだけの存在だ。
「 私にはもう関わらない方がいい・・・・・・」
「 そんなこと言うなよ!」
スタリオンは叫ぶように告げた。
「 旅をしている時に、エミリアが俺の失敗をフォローしてくれただろ。 だから今度は、俺がーー俺たちがフォローする番だ。 一緒に罪を 償っていこうぜ」
スタリオンは愚かしいほどお人好しだ。カティアも 優しく微笑んでいる。
「 エミリアさんは魔王に操られていたのでしょう。 情状酌量の余地はあるよ」
「 戻ってきてくださいよ、エミリア様」
「 エミリアがいないと、私ひとりではこの人達へのツッコミが追いつきませんわ」
ライルと チェルシーまで普通に接してくれた。 涙が出るほど嬉しい。
「 こんな私を受け入れてくれてありがとう」
私はスタリオンの手を取ろうと手を伸ばした。
その時。
不穏な気配を感じる。 スタリオン達はまだ気づいていないようだ。
「・・・・・・ 悪いが先に行ってくれ」
「 どうかしたのか?」
「 私はお父様と戦わなければいけないのだぞ。 気持ちの整理がつくまで時間が欲しいんだ」
「ああ、 わかった」
「 待ってるからね」
スタリオン達が見えなくなった後、 私は 誰もいないはずの後ろに向かって話しかけた。
「 そろそろ出てきてはどうだ?」
「 この私を一人で相手にしようというのかね」
現れたのは魔将軍ザンギラだった。
生きていたのか、 それとも魔王が復活した事で蘇ったのか。 何にしろ厄介な相手である。 5人がかりでやっと倒せた相手だ。 まともにやれば私が勝てる相手ではない。
「 こんな私でも足止めくらいはやれるさ」
「 では、確かめるとしよう」
ザンギラが 動き出す。 その一瞬の隙を突いて、 私は奥義を炸裂する ことに成功した。
「【刹那】!!」
素早さと手数で戦うスタイルの私が、 唯一 敵を一撃で葬ることができる必殺技だ。 そのぶん体への負担が大きいが、 そんなことには構っていられない。
私はバックステップして、 四方八方動き続けた。
「 生意気な小娘が!」
ザンギラは、 頭に血が上って 私を殺すことしか 考えられないでいる。 これならば、 スタリオンたちを追うことはないだろう。
「 そこだ!!」
とうとうザンギラの一撃が私を捉えた。 私は岩になりボロボロと崩れ落ちていく。
「 ゴーレムだと!? 本体はどこに行った!?」
最初の一撃以外は、 私の形をしただけのゴーレムだった。ザンギラは 冷静さをかけていて気づかなかったようだ。
「 時間稼ぎのつもりか!」
「 貴様を倒すためのな」
「 何!?」
私の命を代償とした魔法で、ザンギラを 倒してみせる。
「【 ブラックホール】!!!」
闇の異空間が周囲を飲み込んでいく。ザンギラを、 私をーー 要塞全てを飲み込んでいった。
私は聖剣に話しかける。
「 付き合わせて悪かったな、シャルロッテ」
「 私はどこまでもお嬢様にお供しますよ」
暗闇だったはずの空間が光に包まれていく。
走馬灯というものだろうか。 懐かしい光景が映し出されていった。
私が幼い頃に風邪を引いて、 お父様が看病してくれた。当主としての仕事が忙しいのに、 わざわざ来てくれたことを嬉しく思ったことを覚えている。
額に当てられた大きくて優しい手の感触。
私は確かにお父様に愛されていたんだ。
こんなに優しかったお父様が、どうして 魔王の手先となってしまったのだろう。 何か理由があるはずだ。
子供の頃の私が眠った後でも映像が続いている。
「 神様、どうか私の可愛いエミリアの命を奪わないでほしい」
お父様は 神に祈りを捧げている。
私は命の危険があるほど重い病気だったのだろうか。 正直よく覚えていない。
「 その願い 私が叶えてやろう」
邪悪な声が聞こえてきた。
そうか。 お父様は私を助けるために魔王からそそのかされたんだ。
ひどいじゃないか。涙が溢れ出てくる。
こんな安っぽいお芝居のような事実を、どう受け止めればいい?
お父様は 魔王の言うことを聞き、 7本目の聖剣で魔剣の封印を弱めた。
場面が変わる。
私の死を知ったお父様は魔王に刃向かった。 しかし、実力が違いすぎてあっさりと殺されてしまう。
「 親子共々愚かだな」
私たちは今まで何のために戦ってきたのだろう。 すれ違って、上手く気持ちを伝えられてこなかった。
あの世に行けば伝えられるだろうか。
次の場面は、スタリオンが見事に魔王を討ち果たしたところだった。
「 エミリア、見てくれたか。俺たち、勝ったぞ」
ああ、 見事だ。 スタリオンは既に私よりも強くなっている。 本物の勇者だ。
魔王を倒しただけでは終わらなかった。
魔力を制御していた魔王がいなくなったことで、 魔力暴走により大爆発が起ころうとしている。
聖剣を 代償として、 暴走は食い止められた。
しかし、4本だけでは足りないようだ。
「 お嬢様、どうやら お別れのようですね」
「 あの世ですぐに会えるさ」
誰にも語り継がれることがない、 5本目の聖剣も 魔力暴走を食い止める一役を買った。
気が付くと私は、草原の中にいた。 これも幻覚の一種だろうか。 一人の女の子が私に近づいてくる。
「 私リーリア。 あなたのお名前は?」
リーリアは 心なしかスタリオンに似ている気がする。カティアの 面影もあった。 彼女はきっと二人の娘なのだろう。
走馬灯は未来の映像まで見せてくれるのか。
あるいは 最後の夢なのだろうか。
「 私の名前は・・・・・・」
リーリアとの 出会い。 それは終わらない夢の始まりだったーー。
[完]
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