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第10章、召喚された 幼女先輩

ダクネスの遺跡その2( アンジェリカ)

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 私、アンジェリカ=フェリーチェは アレクさんと付き合っていました。
 でもそれは 世界が改変される前の話で、 今のアレクさんはその時のことを覚えていません。
 エリスちゃんは私が【フェアリーウィッシュ】を発動させたことをなぜか知っていましたけど、 私とアレクさんとの仲までは知らなかったようです。
 正直ホッとしました。
  だって、今のアレクさんの彼女はエリスちゃんなのだから。
 私の気持ちは胸の内にしまっておけばそれでいいのです。

「 なんてことなの!」

 エリスちゃんの非難するような声に、私はドキリとしました。
 私の密かな想いに気付かれてしまったのでしょうか。

「 まさか、パフェが闇堕ちしてしまうなんて!!」
「 よくわからないけど怖いの」

 パフェというのはフェアリードラゴンの子供で、妖精の庭という空間でみんなで育てています。 闇堕ちすると真っ黒なドラゴンに 成長するそうですが、 今の所真っ白な光属性にすくすくと 育っています。
 エリスちゃんとパフェは今も仲良くおしゃべりしているのですが、 闇堕ちとは一体どういうことでしょうか。
 きっと、場を和ませるためのエリスちゃんのジョークなのでしょうね。
 巨大で真っ黒なドラゴンが目の前に迫り、 大口を開けているから、のほほんとしている場合ではないんですけどね。
 さすがエリスちゃん。大物ですよ。

「 ゲーム通りの展開だ! すごーい!」

 かんなちゃんは無邪気にはしゃいでいます。 あなたもなかなかの大物ですね。

「 つまりアンジェリカが 倒したはずの、 世界改変前のダークネスフェアリードラゴンが 登場してるって事ね」
「 そういうことです」

 フェリスちゃんの 推測に、かんなちゃんが頷いています。
【 フェアリーウィッシュ】が 発動した時の爆発的なエネルギーを 利用して・・・・・・。
 話には完全についていけないけど、 今この場にいる ダークネスフェアリードラゴンが、以前私が戦った ドラゴンだということはわかりました。
 以前は苦戦したとはいえ、今回は楽勝でしょう。 エリスちゃんを筆頭に戦力過剰ですからね。 油断さえしなければ負ける気がしません。

 ところがーー。

「 契約者アンジェリカ=フェリーチェよ。 契約に基づき汝の願いを遂行しよう」

 ダークネスフェアリードラゴン、ダクネスが 私に向かってそう言いました。

「あ・・・・・・え・・・・・・?」

 私は最初言っている意味がわからなかったけれど、 すぐに思い出し全身が震えだ します。

「だ、ダメッ!」
「 何がダメなのだ。そなたはアレク=アンダーソンと 婚姻の義を交わし、 エリスリーナ= バージェスに祝福してもらいたいのだろう? それがそなたの願いだったはずだ」

 血の気が引いていき ます。
 私の 想いをバラされてしまい ました。
 醜くも傲慢な願い。
 私は自分だけの幸せを願ってしまったのです。
 私はエリスちゃんが思っているようないい子ではありません。 むしろ逆で、とても悪い子なのです。

「 エリスちゃん、ごめんなさい」

 その証拠に私は、卑怯な涙を流して許しを求めています。
 こんな状況でも、エリスちゃんの友達のままでいたいと願ってしまいます。
 失望されたかもしれませんね。

「 私の方こそごめんね。 気づいてあげられなくて」
「 エリスちゃんは悪くないよ」
「 だったら、アンジェリカだって悪くないよ」

 エリスちゃんは 優しく微笑んで私を許してくれました。
 なんて素敵な天使なのでしょう。
 私はアレクさんが好きでした。
 でもそれ以上に、 今はエリスちゃんの親友でいたいのです。
 だから・・・・・。

「 ダクネス、契約を解除してください!」
「 いいだろう」

 原因だった私の願い を破棄すれば、 無限ループも止まるはずです。
 これで万事解決ですね。

「 アレクさん、エリスちゃんを泣かせたら許しませんよ」
「えっ? ああ、 もちろんだ。約束する」

 アレクさんとも約束をしましたし、これで安心ですね。
 
 アレレ?
 なんだか目が霞んできましたね。 魔力を使い果たしたような、それ以上の疲労を感じているようなそんな気がします。
 願いを破棄した代償でしょうか。
 周りが傾いてーー。

「 アンジェリカ、しっかりして!!」

 私はエリスちゃんに 抱きかかえられています。

 心配しないでください。私は大丈夫ですよ。

 もう声も出せません。
 ダクネスに全ての力を奪われました。 罠に嵌められたということですね。
 私の心の弱さのせいで、エリスちゃんを泣かせてしまいました。
 今の全身に 走る苦しみはその罰です。 甘んじて受け入れましょう。
 ですが、ダクネスの思い通りになんてなってあげません!
 エリスちゃんの親友だと胸を張って言えるようになること。それが私の 今のお願いなのですから。 少しだけ待っててくださいねーー。
 
 
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