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きっとクレメントは、公爵家に入るお金が少なくなったと知ったら、表向きは賛同しながらも裏では罵倒するのだろう、とアリアナは思った。
しかし、この心優しいメイドにわざわざ本当のことを告げて心配させる必要もない。そう思い、アリアナはにこりと微笑むにとどめた。

「あ、そうだ。クレメント様にお会いしたいのだけれど…手紙届けてもらえるかしら」
「はい、もちろんでございます。」

アリアナが手紙を渡すと嬉しそうにベスは受け取った。

「お嬢様とクレメント様が並び立たれた結婚式、さぞかし美しいでしょうね。私楽しみです」

うきうきと話すベスを見て、アリアナは苦笑いして送り出した。

「気をつけてね」
「はい!では行ってきます」

2時間程して、息を切らして帰ってきたベスはすごい形相でアリアナに向かってきた。

「お嬢様。少しよろしいでしょうか」
「どうしたの?すごい顔してるわよ。いつものかわいい顔が台無し…」
「お嬢様!少しよろしいですか!」

あまりの勢いにアリアナは茶化すのをやめて尋ねた。

「ええ、大丈夫よ。本当にどうしたの?クレメント様が私の悪口でも言ってるのを聞いてしまったのかしら」

アリアナが真面目に聞くと、さっとベスの顔色が変わった。

「まさかお嬢様…ご存知だったのですか。あいつが最低な男だって」
「あいつって、あなた。仮にも公爵よ?」

アリアナが笑いながら言うと、ベスは複雑な顔をしたまま答えた。

「お嬢様の婚約者に対して使う言葉でないことは重々承知しております。ですが私の憧れでもあるお嬢様を侮辱するような男に私は敬称など使えません」

アリアナが馬鹿にされたことがよほど悔しかったのだろう。瞳に涙を溜めてベスは言い募った。

「ちなみになんて言ってた?」

そう聞いたアリアナの瞳に面白げな色が浮かんでいるのを見て、ベスの怒りの矛先はアリアナに向かった。

「言いたくありません!とりあえず、このことは旦那様と奥様にお伝えしてまいります。大事なお嬢様をあんなところに嫁がせる訳にはまいりません」

その言葉を聞いたアリアナは慌てて言った。

「ねえ、ベス。ちょっと落ち着いて聞いてくれるかしら。」
「はい」
「あのね、両親はこの結婚とても喜んでくれてるの。だから優しい二人を悲しませたくない」
「ですが、あの男のもとに嫁いではお嬢様が不幸になられます。その方がお二人を悲しませます」
「ええ、分かってるわ。だからね、私とユージンで考えがあるの」
「ユージン様も知ってらっしゃるのですか」

驚いているベスに、アリアナは本当のことをすべて話すことにした。
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