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本編【第二章】
2-19
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「なぜだ…先ほどは私に名前を呼ばれて嬉しそうにしていたではないか」
父は震える声で尋ねてくる。
「いつも父様や母様からは、怒鳴り声や冷たい声でしか名前を呼ばれたことがありませんので驚いて…」
「なら、なぜどうでもいいなどと嘘をつくのだ」
私は意味が分からず小首を傾げる。
「誰だって怒鳴られながら名前を呼ばれるのは嫌ではありませんか?それを初めて優しく呼ばれたので安堵で涙が出ました」
「…」
「あの、父様。罵倒されるのは嫌でしたが普通に接してくださるのであれば私を好きでも嫌いでもどちらでも構いません。」
「そんな…」
「だから、私の許しを乞うて頂く必要などありませんよ」
「だが」
「私も父様や母様のことに興味はありませんし…父様や母様も無理して私を可愛がろうと思ってくださらなくて構いません。」
「私たちのことがそれほど許せないのだな」
悲痛な声で答えた父がますます分からなくなる。
「いえ、許すも何もそれをあなた達に求めるほどの執着や愛情が今となってはわかないのです。だから気になさらないでください」
柔らかい声音で答えると父は涙を流した。
「お前は…人を愛することができないのか!?」
ますます意味が分からずに私は困惑した。愛せないのは家族だけだ。答えに窮した私を見て、父も言葉を失っている。
その時、扉をノックする音がした。答える気のなさそうな両親に代わって私が返事をする。
「どなたですか?」
「フォーゼムです。入ってよろしいでしょうか」
「どうぞ」
フォーゼム様は入ってくると、私の元へやってきた。
「カレン嬢の件ですが…」
「あ、申し訳ございません。失念しておりました」
「いえ。あの後止血して今は眠っておられます。特に問題もないでしょう」
私はほっとして答える。
「ありがとうございます。安心しました」
「いいえ。あなたを傷つけようとした妹君の心配をされるとはお優しいですね」
柔らかな笑顔で言われて、罪悪感から本音を吐露する。
「誰であれ目の前で死なれては夢見が悪いので…」
その答えを聞いたフォーゼム様は愉快気な笑い声をあげた。
「確かに。夢見が悪いですね」
そして、フォーゼム様は改めて父の方に向き直った。
「初めまして。フォーゼム•バレールと申します。カリーナ嬢に先ほど求婚させていただき承諾をいただきました」
父は震える声で尋ねてくる。
「いつも父様や母様からは、怒鳴り声や冷たい声でしか名前を呼ばれたことがありませんので驚いて…」
「なら、なぜどうでもいいなどと嘘をつくのだ」
私は意味が分からず小首を傾げる。
「誰だって怒鳴られながら名前を呼ばれるのは嫌ではありませんか?それを初めて優しく呼ばれたので安堵で涙が出ました」
「…」
「あの、父様。罵倒されるのは嫌でしたが普通に接してくださるのであれば私を好きでも嫌いでもどちらでも構いません。」
「そんな…」
「だから、私の許しを乞うて頂く必要などありませんよ」
「だが」
「私も父様や母様のことに興味はありませんし…父様や母様も無理して私を可愛がろうと思ってくださらなくて構いません。」
「私たちのことがそれほど許せないのだな」
悲痛な声で答えた父がますます分からなくなる。
「いえ、許すも何もそれをあなた達に求めるほどの執着や愛情が今となってはわかないのです。だから気になさらないでください」
柔らかい声音で答えると父は涙を流した。
「お前は…人を愛することができないのか!?」
ますます意味が分からずに私は困惑した。愛せないのは家族だけだ。答えに窮した私を見て、父も言葉を失っている。
その時、扉をノックする音がした。答える気のなさそうな両親に代わって私が返事をする。
「どなたですか?」
「フォーゼムです。入ってよろしいでしょうか」
「どうぞ」
フォーゼム様は入ってくると、私の元へやってきた。
「カレン嬢の件ですが…」
「あ、申し訳ございません。失念しておりました」
「いえ。あの後止血して今は眠っておられます。特に問題もないでしょう」
私はほっとして答える。
「ありがとうございます。安心しました」
「いいえ。あなたを傷つけようとした妹君の心配をされるとはお優しいですね」
柔らかな笑顔で言われて、罪悪感から本音を吐露する。
「誰であれ目の前で死なれては夢見が悪いので…」
その答えを聞いたフォーゼム様は愉快気な笑い声をあげた。
「確かに。夢見が悪いですね」
そして、フォーゼム様は改めて父の方に向き直った。
「初めまして。フォーゼム•バレールと申します。カリーナ嬢に先ほど求婚させていただき承諾をいただきました」
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