【完結】悪女のなみだ

じじ

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本編【第二章】

2-35 エリナの独白

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カレン様付きになった、あの日。私は本当に嬉しかった。優しげな美貌。天使のような甘い微笑み。自分より幼い少女に一目で心を射抜かれた。

日を追うごとにカレン様がわがままで、カリーナ様の方が穏やかな性格であることは分かった。度重なる無茶な要求に心が折れそうになったこともある。時にはカリーナ様付きのアンを羨ましく思うこともあったほどだ。
しかし、私は容姿も性格も非の打ち所がないカリーナ様よりは、カレン様の方が人間味があり好きだった。

そう、カリーナ様の完璧さには悲しみが宿っている。自らの美しさを隠すための老女のような格好も、他者を傷つけないようにするための振舞いも、細い綱を渡り続けるような危うさを見てしまう。
その点、カレン様は分かりやすい。魅力を最大限に引き出すために美しく着飾り、気に入らない者は容赦なく排除する。
人間性で言えばカリーナ様の方が素晴らしいことは分かっているが、それでも私は天使のような美しさを持ちながら、人間臭いカレン様のことを愛した。

そのカレン様が今、カリーナ様のために、全てを曝け出そうとしている。美しく取り繕っていた自分も、他者を陥れるために流した噂も…その身でもって贖おうとされている。

それほどまでにカリーナ様に焦がれていたのか、私のお嬢様は。全てを捨ててもその瞳にもう一度自分を映してもらえるなら構わないと思えるほど…
カリーナ様のことをカレン様が気にしていたのは分かっていた。それが憧憬と嫉妬と羨望が入り混じった複雑な感情だったことも。

でも、カリーナ様のために全てを捨てようとなさっているカレン様の瞳は恐ろしいほど澄んでいて、その瞳はまるで…カリーナ様のようだ。
私が大切に慈しんできたお嬢様の変化が恐ろしい。カレン様が変わったからと言って、カリーナ様がカレン様を再び受け入れられるのかは分からない。
だからこそ私はカレン様には、わがままで傲慢なカレン様のままでいていただきたかった。

だって、今更カリーナ様に気に入られる行いをしようとしても、それが実を結ぶかは分からない。もしカリーナ様がカレン様に対して無関心だったら、あまりにもカレン様が…滑稽でしょう?
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