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本編【第二章】
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カレンは今まで頑なに、彼女にしか似合わない色を着ていたはずだ。私にも着れそうな色合いは着なかった。思惑は色々あったのだろうが、そのうちの一つには、私と万が一にも間違われるのが嫌だっだからだろう。
今日はなぜ…いえ、そんなことより、カレンが襲われたのはまさか…。
そういえば、カレン嬢と呼んでいたフォーゼム様が二人で話した後から、カレン殿と敬意を込めて呼ぶようになった。ついこの間まで蛇蝎の如く嫌っていたはずなのに…二人で話した時に本当は何があったの…。
それにカレンが襲われた際のことを尋ねた時のフォーゼム様は、明らかに何かを知っているはずだったのに、言い淀んだ挙句、わからないと答えた。
「二人の間になにがあったの?」
静かに眠る妹に語りかける。当然返事はない。
その時、不意にドアがノックされ、はっと我に帰る。
「はい」
「エルシラでございます。よろしいでしょうか」
「ええ」
「失礼いたします」
「どうしたの?」
「フォーゼムが、カリーナ様をお呼びするように、と。」
何か分かったのだろうか。エルシラ様の案内でフォーゼム様のもとへ向かう。
部屋に入ると苦りきった表情のフォーゼム様がカレンを襲った男と対峙していた。いや、男の方の様子が変だ。だらりとした腕に、頭をがっくりと落としている。まるで意識がないように。
フォーゼム様は私に気づくと、労りを宿した表情で問いかけてきた。
「カレン殿との時間を邪魔してしまってすまない。こいつがカレン殿を襲った犯人だ。ファボ子爵の次男で、腕の立つ騎士だったが、粗野な言動が疎まれて退団させられたはずだ。
そもそもファボ子爵自体、最近は困窮しているという噂だったが…ファボ子爵と付き合いはあっただろうか」
「いいえ。私もおそらくカレンもなかったと思います」
「それなら、おそらくこいつはただの手駒だ。」
「手駒?」
「うまくいけば、依頼主から莫大な金を受け取るつもりだったのだろう。反対に失敗すれば依頼主が誰か分からないように毒を煽って命を断つように言われてたはずだ」
「それでは、その方は死…」
「いや、何かを飲み込む仕草をしたからな。すぐに吐かせて大量の水を飲ませたから、おそらく命は助かるだろう。しかし再び話せるかは分からない。」
淡々と答えるフォーゼム様は、決意に満ちた瞳で私を見た。
「簡単に死なせるわけにはいかない。カレン殿のためにも。」
私はそっと近づいてその男の顔をしげしげと眺めた。そして気づいてしまった。この男を私は知っている。しかし…。
「カリーナ。何か分ったことがあれば教えて欲しい。どんなことでも」
「え」
「あ、いや。気のせいならすまない。ただ、君が何かを言いかけた気がして」
「…」
答えあぐねている私の様子を見て、フォーゼム様は額に手を当て天を仰いだ。呟くような独り言には絶望的な色合いが含まれていた。
「シュナイダー…か。」
今日はなぜ…いえ、そんなことより、カレンが襲われたのはまさか…。
そういえば、カレン嬢と呼んでいたフォーゼム様が二人で話した後から、カレン殿と敬意を込めて呼ぶようになった。ついこの間まで蛇蝎の如く嫌っていたはずなのに…二人で話した時に本当は何があったの…。
それにカレンが襲われた際のことを尋ねた時のフォーゼム様は、明らかに何かを知っているはずだったのに、言い淀んだ挙句、わからないと答えた。
「二人の間になにがあったの?」
静かに眠る妹に語りかける。当然返事はない。
その時、不意にドアがノックされ、はっと我に帰る。
「はい」
「エルシラでございます。よろしいでしょうか」
「ええ」
「失礼いたします」
「どうしたの?」
「フォーゼムが、カリーナ様をお呼びするように、と。」
何か分かったのだろうか。エルシラ様の案内でフォーゼム様のもとへ向かう。
部屋に入ると苦りきった表情のフォーゼム様がカレンを襲った男と対峙していた。いや、男の方の様子が変だ。だらりとした腕に、頭をがっくりと落としている。まるで意識がないように。
フォーゼム様は私に気づくと、労りを宿した表情で問いかけてきた。
「カレン殿との時間を邪魔してしまってすまない。こいつがカレン殿を襲った犯人だ。ファボ子爵の次男で、腕の立つ騎士だったが、粗野な言動が疎まれて退団させられたはずだ。
そもそもファボ子爵自体、最近は困窮しているという噂だったが…ファボ子爵と付き合いはあっただろうか」
「いいえ。私もおそらくカレンもなかったと思います」
「それなら、おそらくこいつはただの手駒だ。」
「手駒?」
「うまくいけば、依頼主から莫大な金を受け取るつもりだったのだろう。反対に失敗すれば依頼主が誰か分からないように毒を煽って命を断つように言われてたはずだ」
「それでは、その方は死…」
「いや、何かを飲み込む仕草をしたからな。すぐに吐かせて大量の水を飲ませたから、おそらく命は助かるだろう。しかし再び話せるかは分からない。」
淡々と答えるフォーゼム様は、決意に満ちた瞳で私を見た。
「簡単に死なせるわけにはいかない。カレン殿のためにも。」
私はそっと近づいてその男の顔をしげしげと眺めた。そして気づいてしまった。この男を私は知っている。しかし…。
「カリーナ。何か分ったことがあれば教えて欲しい。どんなことでも」
「え」
「あ、いや。気のせいならすまない。ただ、君が何かを言いかけた気がして」
「…」
答えあぐねている私の様子を見て、フォーゼム様は額に手を当て天を仰いだ。呟くような独り言には絶望的な色合いが含まれていた。
「シュナイダー…か。」
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