【完結】悪女のなみだ

じじ

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本編【第二章】

2-46

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「カレン、お願い、目を覚まして!」

家族とは家を出たあの日から関わるつもりはなかった。それでもお互いがそれぞれ幸せになれればいいと思っていたのに。

「カリーナ」

優しく名前を呼ばれ、肩に手を回されて、私は初めてフォーゼム様がずっと側にいてくださったことに気づいた。

「カレン殿は勇敢だった」
「え」
「暴漢に襲われても、取り乱すことなく…むしろ犯人を逃がさないように相手の手を抑えていたんだ」
「そんな…どうして」

一瞬逡巡したような表情のあと、首を振る。

「本当に分からないんだ」
「そう…カレンは最期は…」
「私の腕の中で静かに息を引き取ったよ。眠るように」

良かった。冷たい土の上ではなかったのなら…そう思いふとフォーゼム様を見つめると、フォーゼム様は一筋涙を流していた。

「悼んでくださるのですね」

カレンのために流す涙を見て、心が震える。

「ああ。」
「カレンのこと多分…本当はずっと嫌いでした。美しい顔をして私を貶めてくる。優しい声で残酷な言葉を言う。彼女がいなければ、もしかしたら私が愛されたのかも、なんて浅ましいことも考えない日はありませんでした」
「カリーナ」
「でも、今はただ悲しい…悲しいのです。縁を切ったつもりだったのに…愛してなどいないと思っていたのに!」

カレンの身体に突っ伏して泣き崩れた私をフォーゼム様は優しい手つきで、抱き起こした。そして諭すように話し出した。

「あなたとカレン殿は形は違えど、互いに姉として妹として思い合っていたのだろう。」
「そうでしょうか…私は結局…いつも自分ばかりが被害者だと思っていたのかもしれません…」
「カリーナ。あなたがそう思うのは仕方がないことだ。それに、カレン殿はきっとそんな言葉望んでいないと思う。」

優しく嗜めるような声で言われ、はっとする。

「きっと、彼女があなたから望む言葉はただ一つだ。」
「…愛してるわ、カレン。どうか安らかに」
「カリーナ。もう少しカレン殿の側にいてやるといい。私は少し席を外そう。二人きりで話したいこともあるだろう。部屋にはしばらくの間、誰も入れないように言っておく。」

気遣いに満ちた声で言われて頷く。物言わぬ体となったカレンは…本当に天使が眠っているようだった。

「なぜ、あなたが殺されたの?」

フォーゼム様が出て行った後、思わず呟く。その時それまで気がつかなかったことに気づいた。

「あなた、今日は私とよく似たドレスだったのね」


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