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本編【第二章】
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勝手に話を進めようとするフォーゼム様に、私は強い悲しみを覚えずにはいられなかった。
「なぜ…そのようにお一人で話を進められるのですか?」
私の言葉に驚いたように、フォーゼム様は初めて私の顔をしっかり見た。
「シュナイダー様とファボ子爵の次男の方についてはしかるべき罰を受けていただきたいと思います。それがどのようなものであれ、犯した罪にあたう罰を。ですが、伯爵家と子爵家の皆様にまで罰を与えるようなこと、少なくとも私は望みません…それに私との婚約も一方的に破棄するなどと。私の意思は聞いていただけないのですか」
罪を犯していないフォーゼム様や伯爵家子爵家の家族の皆が路頭に迷うのを望んでいる、と本気で思われているのだろうか。
婚約にしたってそうだ。私が気に入らなくて破棄するなら分かる。でも、私のためと言って、一方的になかったことにしないで欲しい。
「だが」
反論しようとしたフォーゼム様に被せるように続けた。
「そのような事態になれば、私の身代わりとなったカレンが浮かばれません。」
「なぜ、そのことを…」
驚いた様子のフォーゼム様に、自分の憶測が正しかったことを確信する。
「少し考えれば分かることです。フォーゼム様が私に仰らなかったのは、私が自分を責めないようにでしょう」
そう聞くと、フォーゼム様首を横に振る。
「いや、私は伝えるつもりだった。」
「え」
「カレン殿があなたの重荷になりたくないから、言わないでくれ、と。彼女との最期の約束だった。だが見抜かれていたなら彼女も許してくれるだろう…愛している、と言っていた。」
「そう…でしたか。カレンはきっと最期は私の幸せを願ってくれたのですね。」
「ああ」
「それなら、なおさら罰はお二人だけに。それ以上のものは私は望みません。カレンもきっと。両親には私から伝えます。」
「それは」
「私の家のことです。私の口から両親にはきちんと伝えます。」
「…」
「心配なさらないで。」
「だが」
「一人で大丈夫ですわ」
フォーゼム様が私を心配して一緒に来ようとしてくれているのは分かる。
一方で、娘を殺した仇の身内が屋敷を訪れるなど、相手の心を抉るようなことだと分かっているからこそ、付いてくると言葉に出せない事も。
彼のその逡巡は私にも当てはまる。一人で両親に対峙するのは怖いが、もしフォーゼム様に両親が罵倒の言葉を浴びせたらと思うともっと恐ろしい。
「一人で行かせてください。」
そう言うと彼は覚悟を決めたように小さく頷いた。
「分かった。」
一種の安堵と両親と対峙する恐怖が交差した瞬間、彼は続けた。
「但し、行くのは私だ。」
「なぜ…そのようにお一人で話を進められるのですか?」
私の言葉に驚いたように、フォーゼム様は初めて私の顔をしっかり見た。
「シュナイダー様とファボ子爵の次男の方についてはしかるべき罰を受けていただきたいと思います。それがどのようなものであれ、犯した罪にあたう罰を。ですが、伯爵家と子爵家の皆様にまで罰を与えるようなこと、少なくとも私は望みません…それに私との婚約も一方的に破棄するなどと。私の意思は聞いていただけないのですか」
罪を犯していないフォーゼム様や伯爵家子爵家の家族の皆が路頭に迷うのを望んでいる、と本気で思われているのだろうか。
婚約にしたってそうだ。私が気に入らなくて破棄するなら分かる。でも、私のためと言って、一方的になかったことにしないで欲しい。
「だが」
反論しようとしたフォーゼム様に被せるように続けた。
「そのような事態になれば、私の身代わりとなったカレンが浮かばれません。」
「なぜ、そのことを…」
驚いた様子のフォーゼム様に、自分の憶測が正しかったことを確信する。
「少し考えれば分かることです。フォーゼム様が私に仰らなかったのは、私が自分を責めないようにでしょう」
そう聞くと、フォーゼム様首を横に振る。
「いや、私は伝えるつもりだった。」
「え」
「カレン殿があなたの重荷になりたくないから、言わないでくれ、と。彼女との最期の約束だった。だが見抜かれていたなら彼女も許してくれるだろう…愛している、と言っていた。」
「そう…でしたか。カレンはきっと最期は私の幸せを願ってくれたのですね。」
「ああ」
「それなら、なおさら罰はお二人だけに。それ以上のものは私は望みません。カレンもきっと。両親には私から伝えます。」
「それは」
「私の家のことです。私の口から両親にはきちんと伝えます。」
「…」
「心配なさらないで。」
「だが」
「一人で大丈夫ですわ」
フォーゼム様が私を心配して一緒に来ようとしてくれているのは分かる。
一方で、娘を殺した仇の身内が屋敷を訪れるなど、相手の心を抉るようなことだと分かっているからこそ、付いてくると言葉に出せない事も。
彼のその逡巡は私にも当てはまる。一人で両親に対峙するのは怖いが、もしフォーゼム様に両親が罵倒の言葉を浴びせたらと思うともっと恐ろしい。
「一人で行かせてください。」
そう言うと彼は覚悟を決めたように小さく頷いた。
「分かった。」
一種の安堵と両親と対峙する恐怖が交差した瞬間、彼は続けた。
「但し、行くのは私だ。」
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