後宮にて、あなたを想う

じじ

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6 後宮での初日 ③

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これで、やっと半分か。まだ残り5人。いつになったら、揃うのやら…。
蔡怜は半ば達観した気持ちでぼんやりと人が揃うのを待った。

6番目は李玉淑りぎょくしゅくであった。都から少し離れたところに領地を構える貴族で畜産が盛んな地域である。特に羊毛と絹の質は他の追随を許さず、毎年皇帝に献上されている。そのため、一般に流通しているものでも、それらの値段は飛び上がるほど高く、他の地域のものより、10倍程度値が付けられることも珍しくない。
李玉淑もさすがに美しい絹の衣服を纏い現れた。濃い赤の上に鮮やかな青の羽衣を重ねた姿は、日に焼けた玉淑の姿を艶やかに彩った。
玉淑の領地では、たとえ領主の娘であったとしても、畜産に関わることが義務付けられている。それは、李家が優れた畜産技術を認められて貴族に引き上げられたという歴史があるからだ。
李家はかつて、土地の権力者ではあったが、あくまで身分は平民であった。しかし、その技術力の高さを買われ、時の皇帝より貴族の地位を授けられた。そのとき下された命が、今後貴族という地位に慢心して、この優れた畜産技術を衰えさせないように、というものであった。
そのため、李家は労働する貴族、と他家からは格下に見れられることも多い。
実際、玉淑は健康的な肌の色に加え、全体的に細身ではあるが、筋肉もしっかりついている美しい男性、といった風貌である。
今回、李家が娘の皇室入りに手を挙げたのは、格下扱いする周りの目を、皇室と繋がりを持つことで払拭したいとの思惑からであろう。

続いて現れたのは周穂艶しゅうすいえん
周家は、西の経国と国境が接している領地を持つ貴族で、経国と真国との交易で栄えている土地である。
もとは経国の領土であったが、領地の3分の1を経国王に返還、3分の1を真国皇帝の直轄地として献上し、真国の領土としてもらう形で、真国の傘下に入ることを双方から許された歴史がある。
経国は、周家の土地割譲の見返りとして、真国に自国からの輸出品を多く買い取ってもらうこと、友好国として互いの有事の際には軍事協力を行うことを取り付けた。
周家が真国への領土組み入れを願い出た理由は、経国では東の辺境の領土として、国から重要視されなかった点にある、と噂されている。実際、何度か経国と真国で小競り合いがあった際にも、真国は皇帝が自国の軍を派遣したのに対して、経国は周家が王軍を依頼しても一笑に附しただけであった。
元が外国の貴族という立ち位置の周家は娘を皇室に差し出すことで、真国への忠誠心を示そうとしているのであろう。
穂艶は、経国の人間の特徴である美しい銀の髪に、薄い青色の瞳をもつ女性である。真国ではほとんど見ない色だが、周家の領土には多い色合いだ。
忠誠の証が娘の命か、と考えながら蔡怜はぼんやり門の方を眺めた。
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