後宮にて、あなたを想う

じじ

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50 皇帝の質問

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「本当にあなたは聡いな。なぜそう思った」
「私が鮮岳様に敬称をつけても何も仰らなかったので。鮮岳様ご自身も私の鮮岳様に対する言葉違いを気にされるご様子がありませんでした。それで、普段から聞き慣れていらっしゃるのだろう、と。
加えて、陛下と殿下が私のことを信頼できると言ってくださったにも関わらず、我を通されたとあれば、一般の宦官のわけがございません。」
「なるほどな」
「具体的にはどのようなご関係なのですか」
「あれは、柳栄の従兄弟だ。だが私達の幼馴染でもあり、弟のようなものだからな。今回は多めに見て後宮に使いにいかせた」
「左様でございましたか。納得いたしました」

自分の推測が概ね当たっていたことにすっきりした蔡怜は、朗らかに皇帝に告げた。

「お茶一杯分と申しておきながら、随分お引き留めしてしまいました。」

用事が済んだからさっさと帰ってくれと言わんばかりの蔡怜に、皇帝は苦笑しながら言った。

「残念ながらあと半分ほど茶が残っている。あなたには申し訳ないが、今度は私の質問に答えてくれないか」

真面目な顔で請われて、蔡怜は頷いた。

「どのようなことでございましょう」
「あなたには答え辛いことかもしれないが、実家との関係はどうだった。」

予想もしなかった突然の質問内容に、蔡怜が目を見開く。それに気づいた皇帝はすぐに言葉を続けた。

「急なことですまない。蔡家の噂は王宮にいても聞こえて来る部分があった。しかし、実際のところはどうだったのだろうか、と。」

悪い噂が流れているに違いない、と思った蔡怜は早鐘を打つ心臓をなんとか落ち着けようと、深呼吸した。そして出てきた第一声は謝罪だった。

「申し訳ございません。」
「いや、あなたに謝ってほしいわけではない」

穏やかな口調で諭すように言う皇帝を見て、蔡怜は自身の家族の情けなさに思わず涙を流した。

「本当に、蔡家の娘として申し訳なく思っております。両親は目先の利益のことしか考えられず…与えて頂いている領地も管理が行き届いているとはいえません。領民達も他の領地に比べて苦労していることかと。」
「そうか。いや、黄貴妃からあなたは、蔡家の良心だ、と言われてな。私も気にはなっていたのだ。」
「申し訳ございません」

再び謝る蔡怜に、皇帝は鋭い視線を向けて、再び問うた。

「領主としてあなたの両親が至らないのは分かったが、あなた自身との関係はどうだったのだ。」

ありのまま答えるしかない、と腹を括った蔡怜は簡潔に述べた。

「決して良くはありませんでした。」





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