3 / 95
第一章
その華は拙く演じる 3
しおりを挟む
猫かぶりの性格。
そう瑞華は、幼少より完璧な女性を演じていた。
その発端は、花宮と同じ旧宮家の九条家にある。
九条家といえば旧宮家の中でも、もっとも事業を成功させた一族。
自動車産業をメインに様々な分野で活躍をしている日本有数の資産家である。
正真正銘の名家と言っていいのではないだろうか。
幼い瑞華は、母に連れられて、九条家の催しに出掛けていったことがある。
広い敷地に物語に出てくるような美しい庭。
その時、美しい少年を見た――
九条月人。九条家の跡取りとなるべく生まれた長男で瑞華よりも三歳年上。
昔話に出てくる天上人とはかくあらん、ともいえる程。
少年であるのに美しく艶やかなな眼差しは人を魅了し、微かに笑えばそれだけで絵になる。
本当に綺麗で。妖しいほどに存在感があって。
家に帰った瑞華が、三日熱が出て寝込んだくらい印象的だった。
すぐに家柄が釣り合わないのは分かったけど。
同じ旧宮家と言えど、瑞華と九条家の『次期様』と呼ばれる存在では、月を見上げて地上で跳ねる兎くらいのものだ。
届くことなどあり得ない。
それでもなにかに憑りつかれてしまったのだろうか。
足元くらいに。せめてその光を浴びるのに恥ずかしくない程度にはなりたい。
そう思って、華道茶道日舞、ピアノ、ダンス、etc・・・と様々にお稽古に励み、誰が見ても恥ずかしくないお嬢さんになろうと猫かぶりを始めたのだ。
笑い方は子供らしくなくていい。楚々として上品に。
流行りのメイクなんてどうでもいい。しっかり基礎ケアをして素肌を美しくナチュラルメイク。
恋愛事?ときめくことのできる男性なんてその辺にはいない。
奇妙なことに九条月人氏と恋に落ちたいなんて、雑念も湧かなかった。
理解してもらえないかもしれないが瑞華からすればこうだ。
「モナ・リザ」や「ダヴィテ像」のように至高の美術品に向かいあうとして、一方的に崇拝する以上にすべきことがあるだろうか。いや、ない。
子供ながらに、少々なにか違うものが目覚めてしまった気もするけれど、後悔は欠片もなかった。
強いていえば、あの習い事の数々が、家の没落寸前への道を早めた気もするが
とにかく最大の憧れ。
成長した月人氏は、子供の頃以上に美しく完成体へと成長した。
今は御年24歳になられたその姿は、どこか中性的な艶さえも感じさせる雅なお姿。
絵巻物に出てくる殿上人のように、人目を惹きながら、気安くない高貴な存在。
すらりとした身長と、鍛え上げられた美しいラインに良く似合うオーダーでしか作りえない品の良いスーツを着こなし、その気配を感じるだけでも、自分とはかけ離れた世界を生きていることを周りに感じさせずにはいられない産まれながらの神の化身。ほほ笑まれれば、その言葉は「赤を白と言われても諾とせよ」と言いたくなる威力を持つだろうと確信している。
その美しい存在は経済会に羽ばたいて確実に勢力を伸ばし、今では経済誌の一面を飾っているのだ。
瑞華はそれを眺めて感嘆するだけ。
それが完璧な女性を演じる活動源に今でもなっているのだ。
我ながら困ったクセだが、もはや根付いてしまっているので仕方ない。
そう。恋なんていう生易しいものではない。一つの宗教かのように、崇拝の念を抱いてしまっているのだ。
だが。
大学に入ってからは、その活動源を持つだけに一人だけ妬んでしまう存在が出来てしまった。
それは・・・
そう瑞華は、幼少より完璧な女性を演じていた。
その発端は、花宮と同じ旧宮家の九条家にある。
九条家といえば旧宮家の中でも、もっとも事業を成功させた一族。
自動車産業をメインに様々な分野で活躍をしている日本有数の資産家である。
正真正銘の名家と言っていいのではないだろうか。
幼い瑞華は、母に連れられて、九条家の催しに出掛けていったことがある。
広い敷地に物語に出てくるような美しい庭。
その時、美しい少年を見た――
九条月人。九条家の跡取りとなるべく生まれた長男で瑞華よりも三歳年上。
昔話に出てくる天上人とはかくあらん、ともいえる程。
少年であるのに美しく艶やかなな眼差しは人を魅了し、微かに笑えばそれだけで絵になる。
本当に綺麗で。妖しいほどに存在感があって。
家に帰った瑞華が、三日熱が出て寝込んだくらい印象的だった。
すぐに家柄が釣り合わないのは分かったけど。
同じ旧宮家と言えど、瑞華と九条家の『次期様』と呼ばれる存在では、月を見上げて地上で跳ねる兎くらいのものだ。
届くことなどあり得ない。
それでもなにかに憑りつかれてしまったのだろうか。
足元くらいに。せめてその光を浴びるのに恥ずかしくない程度にはなりたい。
そう思って、華道茶道日舞、ピアノ、ダンス、etc・・・と様々にお稽古に励み、誰が見ても恥ずかしくないお嬢さんになろうと猫かぶりを始めたのだ。
笑い方は子供らしくなくていい。楚々として上品に。
流行りのメイクなんてどうでもいい。しっかり基礎ケアをして素肌を美しくナチュラルメイク。
恋愛事?ときめくことのできる男性なんてその辺にはいない。
奇妙なことに九条月人氏と恋に落ちたいなんて、雑念も湧かなかった。
理解してもらえないかもしれないが瑞華からすればこうだ。
「モナ・リザ」や「ダヴィテ像」のように至高の美術品に向かいあうとして、一方的に崇拝する以上にすべきことがあるだろうか。いや、ない。
子供ながらに、少々なにか違うものが目覚めてしまった気もするけれど、後悔は欠片もなかった。
強いていえば、あの習い事の数々が、家の没落寸前への道を早めた気もするが
とにかく最大の憧れ。
成長した月人氏は、子供の頃以上に美しく完成体へと成長した。
今は御年24歳になられたその姿は、どこか中性的な艶さえも感じさせる雅なお姿。
絵巻物に出てくる殿上人のように、人目を惹きながら、気安くない高貴な存在。
すらりとした身長と、鍛え上げられた美しいラインに良く似合うオーダーでしか作りえない品の良いスーツを着こなし、その気配を感じるだけでも、自分とはかけ離れた世界を生きていることを周りに感じさせずにはいられない産まれながらの神の化身。ほほ笑まれれば、その言葉は「赤を白と言われても諾とせよ」と言いたくなる威力を持つだろうと確信している。
その美しい存在は経済会に羽ばたいて確実に勢力を伸ばし、今では経済誌の一面を飾っているのだ。
瑞華はそれを眺めて感嘆するだけ。
それが完璧な女性を演じる活動源に今でもなっているのだ。
我ながら困ったクセだが、もはや根付いてしまっているので仕方ない。
そう。恋なんていう生易しいものではない。一つの宗教かのように、崇拝の念を抱いてしまっているのだ。
だが。
大学に入ってからは、その活動源を持つだけに一人だけ妬んでしまう存在が出来てしまった。
それは・・・
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる