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第一章
その華は風にさらされて 5
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話が戻ってきたああ!!
しかも、呼び捨てって何!?
鷹羽氏だって、もう少し遠慮深いデスケド!?
恥ずかしいやら、腹立たしいやらで意味のないツッコミを心の中で入れつつ。
困惑状態に陥っていながら、ふと気づいた。
こ、このテーブルで会計すればいいんじゃない!
その閃きに縋る思いで、店員を呼ぶベルを押して、震える声に怪しまれつつ、そんなことはどうでもいいのでとにかく焦らせて会計を済ませた。
どうしても耳に入って来てしまう男同士の会話にアルコールはかつてないほど、瑞華の体内中に回るのを感じつつ。グラグラとした眩暈すら感じる。
大丈夫、ばれないばれない。あとは店を出るだけ、静かに帰ろう。
帽子を更に深く被り立ち上がった時。
「九条はどう?」
もっとも答えを聞きたくない人間に話が飛んだ。
慌てて小走りに出口へと走り、たまたま入って来た客にぶつかったのも気にせず、閉まりかけた扉を開き、すり抜けるように外に出る。
「ちょ、ちょっと。落ちたよ」
見知らぬ誰かの声が聞こえる。
瑞華は何かを落としたらしい。
いりません!それ!!
何か知りませんけど!
物も確認せずに、ダッシュして掛け出ていき……
どうにか、九条風人氏の返答を聞かずに済んだ。
店がようやく見えなくなった辺りで公園を見つけ、柵に手を掛け深いため息をつくと、くらくらとして足元に力が入らない。
助かった…
短時間でかなりアルコールが回ったことを自覚しつつも、安堵の気持ちが今は勝っている。
呼吸を整えてから適当な所でタクシーを拾おうと歩き出した所で。
声をかけられた。
「ちょっと、落としものだよ」
古典的すぎる、展開。
まさか、と固まった。
この無駄に爽やかで優しい。
女子受けの良さそうな、この。
この、響の良い華やかな色を含んだ声は。
九条風人が
背後に立っている。
よりにもよって。落とし物を持って追ってきたのが。
一番会いたくない人物とは。
さーっと息がつまっていき、視界が狭くなるのが分かる。
「?・・・ちょっと・・・」
再度呼びかけられ
頭に血が上り
くらりとした。
ふらりとしゃがみ込む。
慌てて駆け寄る相手に、手を捕まれた。
分かってる。
貴方は紳士だ。
でも、嫌だ。
かお、顔だけは見られたくない。
俯いてもがいて
「ちょ、ちょっと」
ぱらり、帽子が落ちた。
ダメ、だ
もう、ダメ。
ニゲタイニゲタイニゲタイ
その心から逃げたくなって。
ついには意識を手放した。
気絶って、やれば出来るもんらしかった。
しかも、呼び捨てって何!?
鷹羽氏だって、もう少し遠慮深いデスケド!?
恥ずかしいやら、腹立たしいやらで意味のないツッコミを心の中で入れつつ。
困惑状態に陥っていながら、ふと気づいた。
こ、このテーブルで会計すればいいんじゃない!
その閃きに縋る思いで、店員を呼ぶベルを押して、震える声に怪しまれつつ、そんなことはどうでもいいのでとにかく焦らせて会計を済ませた。
どうしても耳に入って来てしまう男同士の会話にアルコールはかつてないほど、瑞華の体内中に回るのを感じつつ。グラグラとした眩暈すら感じる。
大丈夫、ばれないばれない。あとは店を出るだけ、静かに帰ろう。
帽子を更に深く被り立ち上がった時。
「九条はどう?」
もっとも答えを聞きたくない人間に話が飛んだ。
慌てて小走りに出口へと走り、たまたま入って来た客にぶつかったのも気にせず、閉まりかけた扉を開き、すり抜けるように外に出る。
「ちょ、ちょっと。落ちたよ」
見知らぬ誰かの声が聞こえる。
瑞華は何かを落としたらしい。
いりません!それ!!
何か知りませんけど!
物も確認せずに、ダッシュして掛け出ていき……
どうにか、九条風人氏の返答を聞かずに済んだ。
店がようやく見えなくなった辺りで公園を見つけ、柵に手を掛け深いため息をつくと、くらくらとして足元に力が入らない。
助かった…
短時間でかなりアルコールが回ったことを自覚しつつも、安堵の気持ちが今は勝っている。
呼吸を整えてから適当な所でタクシーを拾おうと歩き出した所で。
声をかけられた。
「ちょっと、落としものだよ」
古典的すぎる、展開。
まさか、と固まった。
この無駄に爽やかで優しい。
女子受けの良さそうな、この。
この、響の良い華やかな色を含んだ声は。
九条風人が
背後に立っている。
よりにもよって。落とし物を持って追ってきたのが。
一番会いたくない人物とは。
さーっと息がつまっていき、視界が狭くなるのが分かる。
「?・・・ちょっと・・・」
再度呼びかけられ
頭に血が上り
くらりとした。
ふらりとしゃがみ込む。
慌てて駆け寄る相手に、手を捕まれた。
分かってる。
貴方は紳士だ。
でも、嫌だ。
かお、顔だけは見られたくない。
俯いてもがいて
「ちょ、ちょっと」
ぱらり、帽子が落ちた。
ダメ、だ
もう、ダメ。
ニゲタイニゲタイニゲタイ
その心から逃げたくなって。
ついには意識を手放した。
気絶って、やれば出来るもんらしかった。
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