13 / 95
第一章
その華は風にさらされて 5
しおりを挟む
話が戻ってきたああ!!
しかも、呼び捨てって何!?
鷹羽氏だって、もう少し遠慮深いデスケド!?
恥ずかしいやら、腹立たしいやらで意味のないツッコミを心の中で入れつつ。
困惑状態に陥っていながら、ふと気づいた。
こ、このテーブルで会計すればいいんじゃない!
その閃きに縋る思いで、店員を呼ぶベルを押して、震える声に怪しまれつつ、そんなことはどうでもいいのでとにかく焦らせて会計を済ませた。
どうしても耳に入って来てしまう男同士の会話にアルコールはかつてないほど、瑞華の体内中に回るのを感じつつ。グラグラとした眩暈すら感じる。
大丈夫、ばれないばれない。あとは店を出るだけ、静かに帰ろう。
帽子を更に深く被り立ち上がった時。
「九条はどう?」
もっとも答えを聞きたくない人間に話が飛んだ。
慌てて小走りに出口へと走り、たまたま入って来た客にぶつかったのも気にせず、閉まりかけた扉を開き、すり抜けるように外に出る。
「ちょ、ちょっと。落ちたよ」
見知らぬ誰かの声が聞こえる。
瑞華は何かを落としたらしい。
いりません!それ!!
何か知りませんけど!
物も確認せずに、ダッシュして掛け出ていき……
どうにか、九条風人氏の返答を聞かずに済んだ。
店がようやく見えなくなった辺りで公園を見つけ、柵に手を掛け深いため息をつくと、くらくらとして足元に力が入らない。
助かった…
短時間でかなりアルコールが回ったことを自覚しつつも、安堵の気持ちが今は勝っている。
呼吸を整えてから適当な所でタクシーを拾おうと歩き出した所で。
声をかけられた。
「ちょっと、落としものだよ」
古典的すぎる、展開。
まさか、と固まった。
この無駄に爽やかで優しい。
女子受けの良さそうな、この。
この、響の良い華やかな色を含んだ声は。
九条風人が
背後に立っている。
よりにもよって。落とし物を持って追ってきたのが。
一番会いたくない人物とは。
さーっと息がつまっていき、視界が狭くなるのが分かる。
「?・・・ちょっと・・・」
再度呼びかけられ
頭に血が上り
くらりとした。
ふらりとしゃがみ込む。
慌てて駆け寄る相手に、手を捕まれた。
分かってる。
貴方は紳士だ。
でも、嫌だ。
かお、顔だけは見られたくない。
俯いてもがいて
「ちょ、ちょっと」
ぱらり、帽子が落ちた。
ダメ、だ
もう、ダメ。
ニゲタイニゲタイニゲタイ
その心から逃げたくなって。
ついには意識を手放した。
気絶って、やれば出来るもんらしかった。
しかも、呼び捨てって何!?
鷹羽氏だって、もう少し遠慮深いデスケド!?
恥ずかしいやら、腹立たしいやらで意味のないツッコミを心の中で入れつつ。
困惑状態に陥っていながら、ふと気づいた。
こ、このテーブルで会計すればいいんじゃない!
その閃きに縋る思いで、店員を呼ぶベルを押して、震える声に怪しまれつつ、そんなことはどうでもいいのでとにかく焦らせて会計を済ませた。
どうしても耳に入って来てしまう男同士の会話にアルコールはかつてないほど、瑞華の体内中に回るのを感じつつ。グラグラとした眩暈すら感じる。
大丈夫、ばれないばれない。あとは店を出るだけ、静かに帰ろう。
帽子を更に深く被り立ち上がった時。
「九条はどう?」
もっとも答えを聞きたくない人間に話が飛んだ。
慌てて小走りに出口へと走り、たまたま入って来た客にぶつかったのも気にせず、閉まりかけた扉を開き、すり抜けるように外に出る。
「ちょ、ちょっと。落ちたよ」
見知らぬ誰かの声が聞こえる。
瑞華は何かを落としたらしい。
いりません!それ!!
何か知りませんけど!
物も確認せずに、ダッシュして掛け出ていき……
どうにか、九条風人氏の返答を聞かずに済んだ。
店がようやく見えなくなった辺りで公園を見つけ、柵に手を掛け深いため息をつくと、くらくらとして足元に力が入らない。
助かった…
短時間でかなりアルコールが回ったことを自覚しつつも、安堵の気持ちが今は勝っている。
呼吸を整えてから適当な所でタクシーを拾おうと歩き出した所で。
声をかけられた。
「ちょっと、落としものだよ」
古典的すぎる、展開。
まさか、と固まった。
この無駄に爽やかで優しい。
女子受けの良さそうな、この。
この、響の良い華やかな色を含んだ声は。
九条風人が
背後に立っている。
よりにもよって。落とし物を持って追ってきたのが。
一番会いたくない人物とは。
さーっと息がつまっていき、視界が狭くなるのが分かる。
「?・・・ちょっと・・・」
再度呼びかけられ
頭に血が上り
くらりとした。
ふらりとしゃがみ込む。
慌てて駆け寄る相手に、手を捕まれた。
分かってる。
貴方は紳士だ。
でも、嫌だ。
かお、顔だけは見られたくない。
俯いてもがいて
「ちょ、ちょっと」
ぱらり、帽子が落ちた。
ダメ、だ
もう、ダメ。
ニゲタイニゲタイニゲタイ
その心から逃げたくなって。
ついには意識を手放した。
気絶って、やれば出来るもんらしかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
冷徹公爵の誤解された花嫁
柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。
冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。
一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる