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第一章
その華は風にさらされて 7
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言われてる意味がわからず、目を見開いて相手を見れば、深い瞳が印象的な男っぽい表情と 。
意外と力のあるその手に、かあっと赤くなった。
な、なんなの。この態勢は。
致し方ないとは言え、恋人同士のようなこの距離感。
思わず体を緊張させると、囁くような声が掛けられた。
「それで、君は俺のストーカーなの?」
は?
思いもよらない言葉にギョッとして顔を上げる。
「違います!」
「だよねぇ」
反射的に悲鳴のような声で否定すると納得したように深く頷く。
風人はじゃあさ、と愉しそうに聞いた。
「どうして俺のこと、嫌いなの?」
「え?」
「よく見てるでしょ?俺のこと。恨みがましい視線で」
「......」
気付かれていたことを知って動揺した。思わず目を泳がせる。
ま、まずい。
何故と聞かれて答えられることなんて咄嗟に思いつかない。
上手い言い回しで切り抜けたい欲もあって、瑞華は言葉に詰まった。
九条風人という人間は、信じられないほどそれとなく周りをよく見ているらしい。
目線が合ったことなど、殆どなかったはずなのに。
焦る気持ちと、体に残るアルコールの残りで頭の中がグルグル空回りしている。
答えない瑞華を追い詰めるように言葉が繋がれた。
「どうして?って聞いてるんだけど?」
「っ...」
「すぐに口を割りたくしてあげようか」
やれやれと、掴む手と逆側の手が腰を引き寄せて、瑞華は息を呑んだ。
「花宮さんは、恋人いる?」
「い、いませんけど」
「そう。じゃあ、俺に悪いコトされてもイイねぇ?」
悪いこと?
意味を考えるより先に怯えが勝ってしまう。
「や…。良くない、です」
黒すぎる言葉に動揺しすぎて、声が裏返りながら言い訳のように思いついた言葉を言った。
「あの。親が決めた人ならいますけ...ど...」
つい、口が滑り。
今の状況を脱却したいがために、自分でも認めたくないことを盾にしてしまった。
「へぇ、婚約でもしてるってこと?」
「......」
軽く下唇を噛んでしまう。
婚約者では、ない。それはまだ。
だが、いずれ。
そう思えば、薄暗い抑圧された感情の蓋が開きそうになる。
感情が高ぶり、目に涙が浮かぶが溢れないように上を向いた。
そこには九条風人の顔がある。間近に迫った整った顔が、憎らしく思えた。
意外と力のあるその手に、かあっと赤くなった。
な、なんなの。この態勢は。
致し方ないとは言え、恋人同士のようなこの距離感。
思わず体を緊張させると、囁くような声が掛けられた。
「それで、君は俺のストーカーなの?」
は?
思いもよらない言葉にギョッとして顔を上げる。
「違います!」
「だよねぇ」
反射的に悲鳴のような声で否定すると納得したように深く頷く。
風人はじゃあさ、と愉しそうに聞いた。
「どうして俺のこと、嫌いなの?」
「え?」
「よく見てるでしょ?俺のこと。恨みがましい視線で」
「......」
気付かれていたことを知って動揺した。思わず目を泳がせる。
ま、まずい。
何故と聞かれて答えられることなんて咄嗟に思いつかない。
上手い言い回しで切り抜けたい欲もあって、瑞華は言葉に詰まった。
九条風人という人間は、信じられないほどそれとなく周りをよく見ているらしい。
目線が合ったことなど、殆どなかったはずなのに。
焦る気持ちと、体に残るアルコールの残りで頭の中がグルグル空回りしている。
答えない瑞華を追い詰めるように言葉が繋がれた。
「どうして?って聞いてるんだけど?」
「っ...」
「すぐに口を割りたくしてあげようか」
やれやれと、掴む手と逆側の手が腰を引き寄せて、瑞華は息を呑んだ。
「花宮さんは、恋人いる?」
「い、いませんけど」
「そう。じゃあ、俺に悪いコトされてもイイねぇ?」
悪いこと?
意味を考えるより先に怯えが勝ってしまう。
「や…。良くない、です」
黒すぎる言葉に動揺しすぎて、声が裏返りながら言い訳のように思いついた言葉を言った。
「あの。親が決めた人ならいますけ...ど...」
つい、口が滑り。
今の状況を脱却したいがために、自分でも認めたくないことを盾にしてしまった。
「へぇ、婚約でもしてるってこと?」
「......」
軽く下唇を噛んでしまう。
婚約者では、ない。それはまだ。
だが、いずれ。
そう思えば、薄暗い抑圧された感情の蓋が開きそうになる。
感情が高ぶり、目に涙が浮かぶが溢れないように上を向いた。
そこには九条風人の顔がある。間近に迫った整った顔が、憎らしく思えた。
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