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第三章
華はどこを向かされるのか 1
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九条風人が華屋本社に通うようになってから、数日後。
様々な見直し案や企画が受け取った瑞華の父は上機嫌だった。
九条風人の見直し案は実に細かく行き届いていたものらしい。
各店舗の売り上げ傾向からの専門フロアの配置や各階との相性などの見直し案や、店舗ごとの指導や商品の販売ラインなど提案。
新しいテナント誘致の候補案から、キャンペーンでの仕掛けなど。
華屋グループ一店舗ごとに、どんどんと改正案を裏付けとなる参考資料と共に届けているらしいのだ。
百貨店業に関わったことのない筈で、大学に行きながらの筈なのに、よくもまあ次から次と出てくるものだと言うくらいの量をこなしているらしく、父の話だけだとイマイチ分からない点もあるのだが、中々面白い案ばかりだと大絶賛だった。
もちろん、それがどの程度実行されるかは、父だけでなく鷹羽氏の意向や、実際の状況に合わされて決まる。
決まったとして実行に移るのにも時間は掛かるだろうから、『面白いから正解』ではない。だが、とりあえず父が満足してる現状というのは、瑞華にとって都合の悪いものではなかった。
その中でも特にお気に入りだったのが、催事企画だ。
「流石は九条家の次男だよ。見てごらん、瑞華」
夏休みが終わってすぐの華屋催物会場で行うイベント企画として纏められた企画書を見せながら、瑞華はなるほど車好きでもある父好みの企画だと思った。
九条グループで来年度から日本で販売予定の逆輸入車の展示である。
逆輸入車とは、そもそも日本のメーカーが海外向けに製造販売している車を日本で販売する車だ。
海外の法規・規格に基づいて作られた車は、日本でそのまま販売することはできないが、デザインや存在感の個性から海外販売の後に日本で販売すると人気車になることがある。
もちろん価格帯も高く、企業の主戦力になるような300万~400万程の乗用車とは違い誰もが持てる車ではない。
だからこそ各車企業が、やるのであれば必ず成功させたい一つが『逆輸入車』販売と言ってもいいだろう。
当然、日本未発表の車種は、大きな会場を貸し切った展示会などで華々しくデビューさせる場合が多く、この企画に乗っている車種もそういった展示会に出す予定の物だ。
この企画は、その展示会に出した後、そのままその車種を『華屋』に移動させて見せると言うもの。
普段、車の展示会に中々行かないが、興味を持つ層を狙うというので、本当の所は分からないが一見すれば九条グループの利益にもなりそうには見える。
企画書での実施予定会場は銀座や新宿の華屋店舗。それもまた、価格帯を考えれば当然。
どうせ華屋の援助をするなら、少しは美味しい所を九条グループに持っていきましょうと考えるのが彼らしい気がした。
催物会場はどちらの店舗でも、高層階。
もちろんどちらの店舗にも、バックヤードには大型の運搬用エレベーターがあるので運ぶことは可能である。
企画書を見れば、かなりのスペースを使うため、その階は貸し切り状態という珍しい状況になるだろうが、高層階で車の展示イベントとは随分華やかだろう。
こういう父を喜ばせる企画、してみたかったなあ。
少々羨ましい気持ちを持ちつつ、瑞華は父が見せてきたその他の店舗への企画や年次プランを見ようと手に取ろうとすると、タイミングを見計らったように携帯がなった。
液晶画面には、鷹羽一王の名前。
どうやらお呼び出しが掛かったようだと、瑞華は伸ばしかけた手を、渋々携帯へと方向転換させた。
様々な見直し案や企画が受け取った瑞華の父は上機嫌だった。
九条風人の見直し案は実に細かく行き届いていたものらしい。
各店舗の売り上げ傾向からの専門フロアの配置や各階との相性などの見直し案や、店舗ごとの指導や商品の販売ラインなど提案。
新しいテナント誘致の候補案から、キャンペーンでの仕掛けなど。
華屋グループ一店舗ごとに、どんどんと改正案を裏付けとなる参考資料と共に届けているらしいのだ。
百貨店業に関わったことのない筈で、大学に行きながらの筈なのに、よくもまあ次から次と出てくるものだと言うくらいの量をこなしているらしく、父の話だけだとイマイチ分からない点もあるのだが、中々面白い案ばかりだと大絶賛だった。
もちろん、それがどの程度実行されるかは、父だけでなく鷹羽氏の意向や、実際の状況に合わされて決まる。
決まったとして実行に移るのにも時間は掛かるだろうから、『面白いから正解』ではない。だが、とりあえず父が満足してる現状というのは、瑞華にとって都合の悪いものではなかった。
その中でも特にお気に入りだったのが、催事企画だ。
「流石は九条家の次男だよ。見てごらん、瑞華」
夏休みが終わってすぐの華屋催物会場で行うイベント企画として纏められた企画書を見せながら、瑞華はなるほど車好きでもある父好みの企画だと思った。
九条グループで来年度から日本で販売予定の逆輸入車の展示である。
逆輸入車とは、そもそも日本のメーカーが海外向けに製造販売している車を日本で販売する車だ。
海外の法規・規格に基づいて作られた車は、日本でそのまま販売することはできないが、デザインや存在感の個性から海外販売の後に日本で販売すると人気車になることがある。
もちろん価格帯も高く、企業の主戦力になるような300万~400万程の乗用車とは違い誰もが持てる車ではない。
だからこそ各車企業が、やるのであれば必ず成功させたい一つが『逆輸入車』販売と言ってもいいだろう。
当然、日本未発表の車種は、大きな会場を貸し切った展示会などで華々しくデビューさせる場合が多く、この企画に乗っている車種もそういった展示会に出す予定の物だ。
この企画は、その展示会に出した後、そのままその車種を『華屋』に移動させて見せると言うもの。
普段、車の展示会に中々行かないが、興味を持つ層を狙うというので、本当の所は分からないが一見すれば九条グループの利益にもなりそうには見える。
企画書での実施予定会場は銀座や新宿の華屋店舗。それもまた、価格帯を考えれば当然。
どうせ華屋の援助をするなら、少しは美味しい所を九条グループに持っていきましょうと考えるのが彼らしい気がした。
催物会場はどちらの店舗でも、高層階。
もちろんどちらの店舗にも、バックヤードには大型の運搬用エレベーターがあるので運ぶことは可能である。
企画書を見れば、かなりのスペースを使うため、その階は貸し切り状態という珍しい状況になるだろうが、高層階で車の展示イベントとは随分華やかだろう。
こういう父を喜ばせる企画、してみたかったなあ。
少々羨ましい気持ちを持ちつつ、瑞華は父が見せてきたその他の店舗への企画や年次プランを見ようと手に取ろうとすると、タイミングを見計らったように携帯がなった。
液晶画面には、鷹羽一王の名前。
どうやらお呼び出しが掛かったようだと、瑞華は伸ばしかけた手を、渋々携帯へと方向転換させた。
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