50 / 95
第四章
波打ち際の風に 3
しおりを挟む
どうやら誰か点を入れたらしく、バレーをしてる男性陣が騒いだところで、
「今、点を入れたのが九条魁斗兄様。九条家の分家の方になります。審判席に座ってるのが近衛鏡夜兄様」
雪乃さんの説明に目を向けると、恐らく二人とも社会人なのだろう。
九条魁斗と呼ばれた人は、親戚なだけあってどこか風人に面影が似ているだろうか。だが、かなりの高身長で、動きも迫力があり、少々怖い気もする。
反対にもう一人の近衛鏡夜と呼ばれた人は、優しげな雰囲気だが、どこかインテリ系の気配を感じて、プライベートで話しかけるには気を引き締めないといけないように感じた。
九条分家というのがどういう立ち位置なのか、あまり聞こえて来たことはないが、瑞華すればどちらにしろ、敷居が高い九条の次期様のご親戚。
どうしてもその印象にはフィルターが掛かってしまうのかもしれない。
二人紹介されて、月人氏と風人と数えれば、あと知らない顔は一人。
その一人を指し示すと、雪乃の顔は嬉しそうに顔を綻ばせた。
「あちらの方は…」
紹介しようとした時、その相手の方がこちらに気づいて、その場にボールを置いてしまった。
勢いよく他のメンバーに
「お疲れ様でした」と明るく挨拶して、一目散に雪乃に向かって掛けてくる。
「おい、珪!途中だろうが」
「俺のバレータイムは終了!悪いけど優先順位があるんだよ」
引き止める風人の声が響くが、悪びれた様子などカケラも見せず、軽く手を振って試合から抜けたその人は、雪乃の横に座った。
それでこちらに気付いたらしい風人と目が合った気がしたのだが、思わず逸らしてしまった。
大きな麦藁帽子に表情は隠れていればいいが、なんとも気まずい気持ちになる。
「よろしいのですか?珪さん。途中でしたのでしょう。わたくしのことは、お気になさらず…」
「いいんだよ。そもそも俺の予定では、海は雪乃と二人で行く予定だったんだから。それを過保護な兄サン方が、やれ人混みに妹を連れ出すなだの、せっかくなら静かな場所がいいだろうだの、結局言いくるめられたわけだからね。これくらい許してもらわなきゃ」
どこか甘さを感じる笑顔が好ましさを感じさせるその人は、恐らく雪乃の恋人なのだろう。
「疲れたから、雪乃の水着姿でも見てエネルギーチャージしないと」
聞いているほうが恥ずかしくなりそうなことを言いつつ、機嫌良く雪乃の姿を眺めてから、瑞華に気づいてニコリと笑った。
「花宮瑞華さん?」
「はい、はじめまして」
「どうも。萬屋です。萬屋珪。雪乃サンとお付き合いさせていただきます。花宮さんのことは噂程度に聞いてるよ」
「噂…?」
「あら、珪くん」
何のことかと疑問を口にするまえに、ちょうど弥生が飲み物を持って戻って来た。
「もう少しゆっくり遊んでくれてればいいのに」
「充分、遊びましたよ。どうせこの炎天下じゃ、月の兄サンだって、そろそろ止め時でしょう?」
「あー、そうかもね。じゃあ私ももうすぐ貸し切りか」
試合になるのか分からないが、ビーチバレーのグループは珪が抜けたので仕方なく2対1でのゲームを始めている。その姿を見つめてから、弥生は瑞華を見て笑った。
「その前に瑞華ちゃん行きましょ」
「今、点を入れたのが九条魁斗兄様。九条家の分家の方になります。審判席に座ってるのが近衛鏡夜兄様」
雪乃さんの説明に目を向けると、恐らく二人とも社会人なのだろう。
九条魁斗と呼ばれた人は、親戚なだけあってどこか風人に面影が似ているだろうか。だが、かなりの高身長で、動きも迫力があり、少々怖い気もする。
反対にもう一人の近衛鏡夜と呼ばれた人は、優しげな雰囲気だが、どこかインテリ系の気配を感じて、プライベートで話しかけるには気を引き締めないといけないように感じた。
九条分家というのがどういう立ち位置なのか、あまり聞こえて来たことはないが、瑞華すればどちらにしろ、敷居が高い九条の次期様のご親戚。
どうしてもその印象にはフィルターが掛かってしまうのかもしれない。
二人紹介されて、月人氏と風人と数えれば、あと知らない顔は一人。
その一人を指し示すと、雪乃の顔は嬉しそうに顔を綻ばせた。
「あちらの方は…」
紹介しようとした時、その相手の方がこちらに気づいて、その場にボールを置いてしまった。
勢いよく他のメンバーに
「お疲れ様でした」と明るく挨拶して、一目散に雪乃に向かって掛けてくる。
「おい、珪!途中だろうが」
「俺のバレータイムは終了!悪いけど優先順位があるんだよ」
引き止める風人の声が響くが、悪びれた様子などカケラも見せず、軽く手を振って試合から抜けたその人は、雪乃の横に座った。
それでこちらに気付いたらしい風人と目が合った気がしたのだが、思わず逸らしてしまった。
大きな麦藁帽子に表情は隠れていればいいが、なんとも気まずい気持ちになる。
「よろしいのですか?珪さん。途中でしたのでしょう。わたくしのことは、お気になさらず…」
「いいんだよ。そもそも俺の予定では、海は雪乃と二人で行く予定だったんだから。それを過保護な兄サン方が、やれ人混みに妹を連れ出すなだの、せっかくなら静かな場所がいいだろうだの、結局言いくるめられたわけだからね。これくらい許してもらわなきゃ」
どこか甘さを感じる笑顔が好ましさを感じさせるその人は、恐らく雪乃の恋人なのだろう。
「疲れたから、雪乃の水着姿でも見てエネルギーチャージしないと」
聞いているほうが恥ずかしくなりそうなことを言いつつ、機嫌良く雪乃の姿を眺めてから、瑞華に気づいてニコリと笑った。
「花宮瑞華さん?」
「はい、はじめまして」
「どうも。萬屋です。萬屋珪。雪乃サンとお付き合いさせていただきます。花宮さんのことは噂程度に聞いてるよ」
「噂…?」
「あら、珪くん」
何のことかと疑問を口にするまえに、ちょうど弥生が飲み物を持って戻って来た。
「もう少しゆっくり遊んでくれてればいいのに」
「充分、遊びましたよ。どうせこの炎天下じゃ、月の兄サンだって、そろそろ止め時でしょう?」
「あー、そうかもね。じゃあ私ももうすぐ貸し切りか」
試合になるのか分からないが、ビーチバレーのグループは珪が抜けたので仕方なく2対1でのゲームを始めている。その姿を見つめてから、弥生は瑞華を見て笑った。
「その前に瑞華ちゃん行きましょ」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる