散華へのモラトリアム

一華

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第四章

波打ち際の風に 2

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「次期様って…あぁ、月人さん?来てるわよ。先に着替え終わってる男性諸君は、ビーチでバレー大会よ。楽しそうだけど、あんまり興味ないから迎えに来ちゃった」
「興味、ないんですか!?」
「男同士の戦いなんて、何が楽しいのよ」
けろっとした表情で言われて唖然としてしまう。
本当に弥生は、基本女子好きらしい。
両手に花になって上機嫌な弥生の先導でビーチに行くと、確かにバレーを楽しんでいる男の人らしき姿が見えた。

何気なく目線をやって、何故か真っ先に九条風人を見てしまう。
いつになく親切だったのが、鷹羽の悪さの後では身に染みたのかもしれない。
反対側も見ているので背中しか見えないが、見慣れた姿は見間違えようもない。なんせ大学生活では彼の姿を見るたびにいち早く反応していた瑞華だ。
しかし見つめていると、なんだか少々居心地の悪いような、なんとも上手く言えない感情が湧いてきて、慌てて目線を変える。
九条家の次期様、月人氏。
普段はスーツで隠れてしまっているが、鍛え上げた身体つきは美しすぎるの一言だ。
やっているのはビーチバレーで、瑞華の抱いていた月人像とは、ちょっとイメージが違うスポーツなのだが、何気ない立ち姿などはまさに芸術品。砂浜にあっては何時間鑑賞しても飽きないかもしれない。
もちろんハシタナイ行為なのでそんなことはしないが。
弥生は、恋人の立場でどうして興味を持たないでいられるのだろうか。

見慣れてる、ということ?
ふとその考えが浮かぶと、瑞華は一人で顔を赤らめた。
その件は考えてはいけない。瑞華には刺激が強かったと反省した。

バレーを楽しんでいるのは全部で5人。
どの人も身長が高く、一様にスタイルが良い。
これを興味ないと言ってしまえる弥生も豪気だが、興味あると思って見てしまえば、年頃の女子にあるまじく(もしくは相応しく?)どこまでも凝視することにのりそうなのでこれ以上の説明は割愛。

瑞華はどうにか目線を逸らした。
「おやおや?瑞華ちゃんも、男同士の戦いには興味がないクチ?」
にこにこっと弥生に笑われて、思わず赤くなった。
「目のやり場がないんですっ。なんか男性の水着姿をマジマジ見るのってどうかと思いますし」
「あらやだ。それじゃ見たいんですって言ってるようなもんよ」
ニヤリと笑われて、瑞華は黙秘することにした。

用意された大きなパラソルの下に雪乃と隣り合わせて座ると、弥生は飲み物用意すると行ってしまう。
付いて行こうとしたが
「はいはい。それだと雪乃ちゃんも付いて来ちゃうからダメ。雪乃ちゃん、悪いんだけどあそこでバレーしているのがどういう面子か瑞華ちゃんに教えておいて」
「…分かりました」
同じく自分こそがやりますと言わんばかりに立ち上がりかけた雪乃に、すばやく指示をして弥生は行ってしまった。
仕方なく瑞華は雪乃と二人座りなおす。
確かに雪乃は日差しに強そうには見えない。
お客様だからと、率先して動かしては悪い気がするので、ここは従うべきだろう。
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