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第五章
空に咲く華 5
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「き、今日は随分...」
優しいですね、と言い掛けて辞めた。
良く考えれば、風人は大学では誰にでも人当たりがいい。
むしろ、瑞華が良く知っている風人はイレギュラー。
そう思うと、この態度をどう受け止めればいいのか分からない。
普段通りの対応をしてもらえて喜べばいいのだろうか。
いや、むしろ普段の対応を責めたくなっても仕方ないのかもしれないけど、不思議とそうはならない。
「風人さんは、そういえば、優しいですもんね」
困惑しながらも瑞華は呟いた。
「おや、いつもは優しくない?」
揶揄うような視線を受けて、慌てる。
「えっと...」
優しくないか、と聞かれれば、まったくその通りなのだが、頷くとも躊躇われた。
どうしたものかと思案してると、楽しそうに笑われる。
「いいよ。無理しなくて。俺が『優しい人』じゃ困るだろう」
返ってきた言葉に、思わず一度目線を上げて穏やかで優しい表情に行きあたると、胸が苦しくなって視線をさ迷わせた。
いつもが『優しい人』じゃないだろうと言われているのは分かるのだが、今現在『優しい人』で困っているのを見透かされているようでもある。
風人は縁日を見渡しながら話を変えた。
「さて、何かやりたいのある?へえ、 金魚掬いとか、射的とかあんのか」
「し、射的をしましょう。腕前を見て差し上げます」
九条風人を意識してばかりでは時間を過ごしてもいけない気がして、その手を引いて屋台に向かう。
どうせならその場の空気を楽しんだ方が、このなんともぎこちない自分をごまかせる気もする。
このままではいけない。
「あー...射的は兄貴の方が得意分野なんだが」
風人は口は災いの元と言わんばかりに、しまったと言う顔をして、やれやれ、と景品を見回した。お金を払ってから、瑞華に視線を寄越す。
「で、どれがいいの?」
「え?欲しいものを取ってくれるんですか?」
「勿論、そこはまず狙うでしょう」
「本当ですか?」
声が弾んで、慌てて景品を見回す。
弾むような気持ちになり――可愛い小さなクマのキーホルダーを見つけた――
「あ、あれがいいです」
的の小ささに、風人は一瞬、うっとなったのがわかった。
「また狙いにくいところを」
「あ、無理ですか?じゃあ…」
気を使って狙いやすい景品を探し始めた横で、風人は手を離してから無言で銃を手に取った。
堂にいった構えで、狙いを定め。
少し空気を固める様に集中してから、見事一回。
クマのキーホルダーに当たり、ぽとりと落ちた。
驚いた瑞華が目を丸くするのを、華やかな笑顔でにこりと笑われる。
「ほいよ」
「お上手ですね…」
「欲しかったんだろ?」
肩を竦めてから渡されたキーホルダーを手に取り、眺めた。
手のひらの中で見る、クマの顔は、先ほどより可愛く思える。
「はい。嬉しいです。ありがとうございます」
初めて、だった。
こんな風に自分でもよく分からない高揚感の中、誰かと出掛けたり自分の為の勝負を見れたりするのは。
そしてささやかなのだろうが、特別な瞬間が形になったプレゼント。
高価だが、別に欲しがりはしないブランドのバックや、定番の花束。
そんな風な物は、両親も鷹羽さんもプレゼントしてくれたが、何故かこの小さなクマのキーホルダーの方が嬉しい。
再度、手を繋がれ引かれれば、それも幸せに感じてならなかった。
優しいですね、と言い掛けて辞めた。
良く考えれば、風人は大学では誰にでも人当たりがいい。
むしろ、瑞華が良く知っている風人はイレギュラー。
そう思うと、この態度をどう受け止めればいいのか分からない。
普段通りの対応をしてもらえて喜べばいいのだろうか。
いや、むしろ普段の対応を責めたくなっても仕方ないのかもしれないけど、不思議とそうはならない。
「風人さんは、そういえば、優しいですもんね」
困惑しながらも瑞華は呟いた。
「おや、いつもは優しくない?」
揶揄うような視線を受けて、慌てる。
「えっと...」
優しくないか、と聞かれれば、まったくその通りなのだが、頷くとも躊躇われた。
どうしたものかと思案してると、楽しそうに笑われる。
「いいよ。無理しなくて。俺が『優しい人』じゃ困るだろう」
返ってきた言葉に、思わず一度目線を上げて穏やかで優しい表情に行きあたると、胸が苦しくなって視線をさ迷わせた。
いつもが『優しい人』じゃないだろうと言われているのは分かるのだが、今現在『優しい人』で困っているのを見透かされているようでもある。
風人は縁日を見渡しながら話を変えた。
「さて、何かやりたいのある?へえ、 金魚掬いとか、射的とかあんのか」
「し、射的をしましょう。腕前を見て差し上げます」
九条風人を意識してばかりでは時間を過ごしてもいけない気がして、その手を引いて屋台に向かう。
どうせならその場の空気を楽しんだ方が、このなんともぎこちない自分をごまかせる気もする。
このままではいけない。
「あー...射的は兄貴の方が得意分野なんだが」
風人は口は災いの元と言わんばかりに、しまったと言う顔をして、やれやれ、と景品を見回した。お金を払ってから、瑞華に視線を寄越す。
「で、どれがいいの?」
「え?欲しいものを取ってくれるんですか?」
「勿論、そこはまず狙うでしょう」
「本当ですか?」
声が弾んで、慌てて景品を見回す。
弾むような気持ちになり――可愛い小さなクマのキーホルダーを見つけた――
「あ、あれがいいです」
的の小ささに、風人は一瞬、うっとなったのがわかった。
「また狙いにくいところを」
「あ、無理ですか?じゃあ…」
気を使って狙いやすい景品を探し始めた横で、風人は手を離してから無言で銃を手に取った。
堂にいった構えで、狙いを定め。
少し空気を固める様に集中してから、見事一回。
クマのキーホルダーに当たり、ぽとりと落ちた。
驚いた瑞華が目を丸くするのを、華やかな笑顔でにこりと笑われる。
「ほいよ」
「お上手ですね…」
「欲しかったんだろ?」
肩を竦めてから渡されたキーホルダーを手に取り、眺めた。
手のひらの中で見る、クマの顔は、先ほどより可愛く思える。
「はい。嬉しいです。ありがとうございます」
初めて、だった。
こんな風に自分でもよく分からない高揚感の中、誰かと出掛けたり自分の為の勝負を見れたりするのは。
そしてささやかなのだろうが、特別な瞬間が形になったプレゼント。
高価だが、別に欲しがりはしないブランドのバックや、定番の花束。
そんな風な物は、両親も鷹羽さんもプレゼントしてくれたが、何故かこの小さなクマのキーホルダーの方が嬉しい。
再度、手を繋がれ引かれれば、それも幸せに感じてならなかった。
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