散華へのモラトリアム

一華

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第五章

空に咲く華 6

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それから屋台を回って、金魚掬いをし―活きの良い黒を取ってもらい、瑞華も赤一匹取って―つまり、赤黒一匹ずつ。 

杏飴にお好み焼き、焼きそばにタコ焼き。 
風人が月人へのお土産と買い揃えるのを見ながらそんな兄弟の一面もあるのかと思ったり。
「こういう粉物好きなんだよな、兄貴」
「お土産なんて、気が効いてるんですね」
「まぁ、世話になってるしね。瑞華も知っての通り、抜きん出てらっしゃるからね、うちの次期様は。このくらいは愚弟もさせて頂きましょう」
軽口を笑顔で言葉を繋がれれば、少し思うところもある。
確かに瑞華にとっても最大の憧れである九条月人は、どう考えても他より抜きん出ている。凄いのは分かっている。だが風人はまたそれとは違う。
手を繋いだ先の相手は、瑞華からすれば憧れの人よりも見てきた相手かもしれない。
その感情が好意だったとは言えないけれど、それでも風人はいつも瑞華より前を歩いている。

だから思わず、口を開いた。
「でも風人さんも普通からすれば凄いんじゃないですか?」 
「普通から見てってまた微妙な」 
苦笑を返されて、瑞華は困ってしまう。何度か言葉を選びながら口を閉ざした。
「褒めるならちゃんと褒めな。良い子はちゃんと出来るだろ」 

促されても、上手い言葉は思いつかない。少々投げやりな気持ちで、半端な言葉を勢いのまま、口にした。

「会社のために努力してくれてるのも、こうしてクマのキーホルダーを取ってくれたのも風人さんですから。 
凄いと思ってますっ」 

瑞華の言い方に、ゆっくりと風人の雰囲気が不機嫌そうに変わった。 
瑞華がよく知っている黒い空気。 
しまったと思っても、もう遅い。

「そんなに投げやりに褒められてもねえ。いくら俺が温厚でも、気分を害するよ・・・?」
「……」 
「まあ、今日は息抜きだもんな。大目に見ましょ」 
ふっと笑って空気を和らげて取り成される。

自分でも微妙な言い方だったのは分かってはいるが、瑞華にはどうすればいいのか分からなかった。
こんな言い方しかできない自分では、繋がれた手になんだか申し訳ない気すらしてしまう。
この手を取ってみたい子なんて、いっぱいいるだろうに。
経済学部の王子様と呼ばれる風人に憧れる女生徒は多いのは周知の事実。
もっと喜ぶ言い方をする素直で可愛い子だっているだろう。そう思うと、元気もなくなる。

しかも同時に分かってほしいという、拗ねた気持ちも生まれてしまってどうしようもない。

「風人さんは…女心とか、分かってないんですね」
駄目だしの一言を掠れた声で言ってしまい。
ああ、ばか…と、自己嫌悪に陥った。 

「それは…妹にも散々言われた…」
たまたま、妹の雪乃の言葉と重なったからだろうか。
意外にも風人は気まずそうな顔を浮かべた。
その様子に、瑞華の気持ちも少しだけ軽くなって、ふふっと笑いが出た。

お土産を一つ買い足すために風人が手を離した隙に、ふと思いついて携帯を手にとった。

――弥生さん、ダメです。全然、可愛い女の子になれません 

こっそりメールで知らせると、意外にもすぐに返信が来た。 
『男なんて星の数★☆★』 

思わず吹き出しそうになった。流石さすがの返答だ。 
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