散華へのモラトリアム

一華

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第六章

風雅公の企み 6

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今日は本当に、意味が分からない。

困惑のまま、社長席の上にあるシステム管理のパソコンに電気を入れた。
パスワードまで入れてしまい、興味深そうに社長室の内装を見て回っている風人に声をかけた。

「パソコン、見ますか?」
「ああ、どうも」 

特に興味もなさそうだったが、瑞華に促されて椅子に座ると、手慣れた様子でパソコンを触った。
覗き込むと、経理のデータをいくつか見ている。
しかし興味がある様子でもない。なんとなく形だけ見ている様子だ。 

そうこうしているうちに、女子従業員の一人がお茶を運んできてくれた。
瑞華は風人が何をしているのか、さっぱりわからず、不安になり尋ねた。
「何かおかしいですか?」 
「いや、例年変わりないよ」 

にっこりと返答がある。  
「強いていうなら、多少原価の下がった項目があるくらいで」 

そうして指差すのは、契約に鷹羽が携わった物だ。 
以前、契約していた幾つかの会社はこの不景気に倒産した。 
よりいい条件でと、鷹羽が探してきてくれた取引相手。 
花宮は古くから取引のある会社が多いのでそういった新しい会社には明るくないところがある。 
だからこそ、救いの神だと両親が話してた。 

それらを風人が、わざわざ指して上げる理由も分からないが、今日は行動の全てが分からない。なので、それに対してだけ。どうこうというのもなかった。

お茶を置いて、従業員が出ていくと、風人はのんびりとお茶を飲んでいる。 
「…あの、もしかして用件って終わりました?」
「何言ってるの?まだ全然、店回ってないでしょう?」
「…回るんですか?」
「そりゃあ、デートだからね」

飄々ひょうひょうとした態度で風人は答えた。

具体的に華屋銀座本店で、一体どこに行きたいのかと聞いても、上から下までとけむに巻くような答えだ。
仕方なく最上階の展示室から、一階ずつ見ていくことにする。

当然のようにまた肩を抱かれて、はたからみれば仲の良い恋人同士なのだろうか。
今日の様子はどこか芝居がかっていて、瑞華もときめいた気分になったのは最初だけで、やがて狐にでも化かされてくらいの気分になってきていた。

最上階の展示場からレストラン街、それからメンズファッション階に移動すると、風人はへぇっと興味深そうに見て、店頭に飾られている服を指さした。

「こういうの流行ってるの?」
瑞華は首を傾げて不思議そうに質問を返した。
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