90 / 95
第七章
瑞々しく咲く華とならむ 3
しおりを挟む
蓋を開けてみれば。
鷹羽氏が操作していた事柄は、既に九条風人が気づいていたということである。
まずは瑞華が気付いた、通信費や商品券などを利用しての裏金作り。
そして華屋、取引先の取引金額等の契約内容のおかしさ。
華屋は古参の百貨店である。
それゆえの因習で仕入れに対して昔から礼金が発生していたのである。
つまり、だ。
古くからの取引先には『仕入れに欠ける原価』に対してさらに上乗せして払っていたのだ。
それも一般的な商品でなく、華屋でなければ取り扱わないような高額な物ばかり。
残念ながら因習にしがみついた卸問屋は次々と潰れていった。
良い条件と言い鷹羽氏が紹介してくれた「取引先」もなんてことはない。
実は本来より少しばかり高い取引していたが、今までの取引原価よりは下がっていたため気がつかなかっただけである。
その紹介した見返りに、鷹羽氏は自分の所には、きっちりに安い取引をさせていたと言うのだから、しっかりしている。
「おかしいと思ってね。確かに紹介したのは鷹羽氏だろうけど、そんな不正な取引がばれたら、華屋と今後付き合い出来ないだろ?天秤にかけりゃ、華屋との付き合いが長くなったほうが、会社としては箔がつく」
なのに、どうしてわざわざ不正をしたのか。
九条風人の運転する車で、助手席に座らされて揶揄うように問題を出されて、瑞華は答えを探した。
だが、どうしても答えはでない。
「…どうして、でしょう」
「みんな、鷹羽氏が華屋グループの社長令嬢と結婚して、後を継ぐと信じてたわけだよ」
「え!?」
「どうせ社長が鷹羽氏になるなら、契約については不正と思っていても、その分鷹羽氏に返してるし特に問題はないと思ったんだろう。なんて言って言いくるめたかは知らないけどな。ところが、急に華屋のお嬢さんは仲良さげに別に恋人を連れて歩くようになりました。これじゃあ不正をしてる人間は慌てるよな」
「まさか、それで?」
「頼まれて纏めてた資料見てたら、大体銀座店と新宿店に一店舗は入れてる会社が多かったし、取引先も噂が広まれば慌てるかなとデートしたら案の定」
風人は楽しそうに笑って見せた。
そう言われて、先日の華屋でのデートが何だったのか理解した。
確かにそれなら、後日沢山のテナントや取引先から、父に瑞華の恋人の確認があったのも頷ける。
いざとなったら鷹羽は、不正をしていたことをネタにして、華屋と手を切らせるつもりもあったのかもしれない。
風人が従業員の前で、わざわざ数字の確認までして見せたのも、経理の不正に気付いていると、鷹羽氏に協力している従業員にも知らせる為、噂の端に何か残ればいいと思ったからか。
あの日の風人はどうもおかしいと思ったが、理由が分かれば納得がいった。
やっぱりデートじゃなかった、と一人ごちる。
風人は瑞華の様子には気付いていないようだ。
「それに華屋の社長にも、瑞華ちゃんが鷹羽氏に気があるようなことをそれとなく言われてたんだよ。つまりご両親も鷹羽サンの言葉で瑞華ちゃんの気持ちを勘違いしてたというわけ」
鷹羽氏が操作していた事柄は、既に九条風人が気づいていたということである。
まずは瑞華が気付いた、通信費や商品券などを利用しての裏金作り。
そして華屋、取引先の取引金額等の契約内容のおかしさ。
華屋は古参の百貨店である。
それゆえの因習で仕入れに対して昔から礼金が発生していたのである。
つまり、だ。
古くからの取引先には『仕入れに欠ける原価』に対してさらに上乗せして払っていたのだ。
それも一般的な商品でなく、華屋でなければ取り扱わないような高額な物ばかり。
残念ながら因習にしがみついた卸問屋は次々と潰れていった。
良い条件と言い鷹羽氏が紹介してくれた「取引先」もなんてことはない。
実は本来より少しばかり高い取引していたが、今までの取引原価よりは下がっていたため気がつかなかっただけである。
その紹介した見返りに、鷹羽氏は自分の所には、きっちりに安い取引をさせていたと言うのだから、しっかりしている。
「おかしいと思ってね。確かに紹介したのは鷹羽氏だろうけど、そんな不正な取引がばれたら、華屋と今後付き合い出来ないだろ?天秤にかけりゃ、華屋との付き合いが長くなったほうが、会社としては箔がつく」
なのに、どうしてわざわざ不正をしたのか。
九条風人の運転する車で、助手席に座らされて揶揄うように問題を出されて、瑞華は答えを探した。
だが、どうしても答えはでない。
「…どうして、でしょう」
「みんな、鷹羽氏が華屋グループの社長令嬢と結婚して、後を継ぐと信じてたわけだよ」
「え!?」
「どうせ社長が鷹羽氏になるなら、契約については不正と思っていても、その分鷹羽氏に返してるし特に問題はないと思ったんだろう。なんて言って言いくるめたかは知らないけどな。ところが、急に華屋のお嬢さんは仲良さげに別に恋人を連れて歩くようになりました。これじゃあ不正をしてる人間は慌てるよな」
「まさか、それで?」
「頼まれて纏めてた資料見てたら、大体銀座店と新宿店に一店舗は入れてる会社が多かったし、取引先も噂が広まれば慌てるかなとデートしたら案の定」
風人は楽しそうに笑って見せた。
そう言われて、先日の華屋でのデートが何だったのか理解した。
確かにそれなら、後日沢山のテナントや取引先から、父に瑞華の恋人の確認があったのも頷ける。
いざとなったら鷹羽は、不正をしていたことをネタにして、華屋と手を切らせるつもりもあったのかもしれない。
風人が従業員の前で、わざわざ数字の確認までして見せたのも、経理の不正に気付いていると、鷹羽氏に協力している従業員にも知らせる為、噂の端に何か残ればいいと思ったからか。
あの日の風人はどうもおかしいと思ったが、理由が分かれば納得がいった。
やっぱりデートじゃなかった、と一人ごちる。
風人は瑞華の様子には気付いていないようだ。
「それに華屋の社長にも、瑞華ちゃんが鷹羽氏に気があるようなことをそれとなく言われてたんだよ。つまりご両親も鷹羽サンの言葉で瑞華ちゃんの気持ちを勘違いしてたというわけ」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる