散華へのモラトリアム

一華

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第七章

瑞々しく咲く華とならむ 3

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蓋を開けてみれば。 
鷹羽氏が操作していた事柄は、既に九条風人が気づいていたということである。

まずは瑞華が気付いた、通信費や商品券などを利用しての裏金作り。
そして華屋、取引先の取引金額等の契約内容のおかしさ。

華屋は古参の百貨店である。 
それゆえの因習で仕入れに対して昔から礼金が発生していたのである。 

つまり、だ。 
古くからの取引先には『仕入れに欠ける原価』に対してさらに上乗せして払っていたのだ。 
それも一般的な商品でなく、華屋でなければ取り扱わないような高額な物ばかり。 
残念ながら因習にしがみついた卸問屋は次々と潰れていった。 

良い条件と言い鷹羽氏が紹介してくれた「取引先」もなんてことはない。 

実は本来より少しばかり高い取引していたが、の取引原価よりは下がっていたため気がつかなかっただけである。 
その紹介した見返りに、鷹羽氏は自分の所には、きっちりに安い取引をさせていたと言うのだから、しっかりしている。 

「おかしいと思ってね。確かに紹介したのは鷹羽氏だろうけど、そんな不正な取引がばれたら、華屋と今後付き合い出来ないだろ?天秤にかけりゃ、華屋との付き合いが長くなったほうが、会社としては箔がつく」
なのに、どうしてわざわざ不正をしたのか。

九条風人の運転する車で、助手席に座らされて揶揄からかうように問題を出されて、瑞華は答えを探した。
だが、どうしても答えはでない。

「…どうして、でしょう」
「みんな、鷹羽氏が華屋グループの社長令嬢と結婚して、後を継ぐと信じてたわけだよ」
「え!?」
「どうせ社長が鷹羽氏になるなら、契約については不正と思っていても、その分鷹羽氏に返してるし特に問題はないと思ったんだろう。なんて言って言いくるめたかは知らないけどな。ところが、急に華屋のお嬢さんは仲良さげに別に恋人を連れて歩くようになりました。これじゃあ不正をしてる人間は慌てるよな」
「まさか、それで?」
「頼まれて纏めてた資料見てたら、大体銀座店と新宿店に一店舗は入れてる会社が多かったし、取引先も噂が広まれば慌てるかなとデートしたら案の定」
風人は楽しそうに笑って見せた。
そう言われて、先日の華屋でのデートが何だったのか理解した。
確かにそれなら、後日沢山のテナントや取引先から、父に瑞華の恋人の確認があったのも頷ける。
いざとなったら鷹羽は、不正をしていたことをネタにして、華屋と手を切らせるつもりもあったのかもしれない。

風人が従業員の前で、わざわざ数字の確認までして見せたのも、経理の不正に気付いていると、鷹羽氏に協力している従業員にも知らせる為、噂の端に何か残ればいいと思ったからか。
あの日の風人はどうもおかしいと思ったが、理由が分かれば納得がいった。
やっぱりデートじゃなかった、と一人ごちる。
風人は瑞華の様子には気付いていないようだ。

「それに華屋の社長にも、瑞華ちゃんが鷹羽氏に気があるようなことをそれとなく言われてたんだよ。つまりご両親も鷹羽サンの言葉で瑞華ちゃんの気持ちを勘違いしてたというわけ」
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