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第一章 4月
お姉さまの足跡 ★4★
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自分のベッドに腰掛けると、写真を手に取る。幸に、お母さんと志奈さんとの三人写真を見せた。
まずはお母さんを指さす。
「こっちの人が私のお母さん」
それから、志奈さんを指差した。
「で、もう1人は私の義理のお姉さんの志奈さん」
「義理?」
幸に頷いて見せる。
「この春にね、私のお母さんが再婚したの。それの相手が、志奈さんのお父さんだったのよ。だから春から、小鳥遊志奈さんは私のお姉さんになったの」
「春って、常葉学園に来る前にってこと?」
「そう。だから私はこの人と、全然姉妹をしたわけじゃないんだね」
幸は、はぁーと感心したように息を漏らした。
その様子は、全く神妙な様子がなく、柚鈴を安心させた。
なるべく、なんでもない風に伝えたかったのだ。
変に真剣な様子をされたら、本当に困ってしまう。
「一緒に写ってる写真では、つい最近まで全然って感じじゃないのになあ」
「それは弥生さんの写真の撮り方じゃないかな?」
幸はその言葉には納得していないように首を傾げた。
改めて写真を見れば、写真の中の志奈さんは柚鈴を温かな目線で見ているものが何枚もある。
志奈さんの愛情自体は、否定出来ないかもしれない。
本当に柚鈴のことが可愛いと思っている気がするのだ。
柚鈴のなんだかむず痒いような気持になった。
「それで、柚鈴ちゃんにとって、志奈さんってどんな存在なの?」
「どんなって、そんなこと聞かれても。この春に急にお姉さんになったわけだし。綺麗な人だから、正直、妹なんて恐れ多いかなとは思うけど」
「なるほど」
幸はそう呟いて、少し考えるように沈黙した。
その澄んだ瞳は、柚鈴の心の奥まで見てしまいそうで、少し居心地が悪い。
「柚鈴ちゃん」
幸は、にっこり笑った。
「柚鈴ちゃんはお姉さんについて、もう少し知ってもいいんじゃないかな?」
「え?」
「だって、あんまり良く知らないみたいだし。柚鈴ちゃんのお姉さん、常葉学園では有名人だったんでしょう?それならこの学園には、お姉さんの足跡が沢山残っていると思うんだ。せっかく常葉学園にいるんだし、どんな風に有名だったか、足跡探ししてみようよ」
幸の提案に、目を見開いてしまう。
足跡探し。
それは柚鈴自身が、この寮にやってきたときに思ったことだ。
幸から提案されて、柄でもないと思うのに、なんだかドキドキしてしまう。
それはなんだか楽しくて素敵なことに思えるのだ。
「積極的にって、どうやって?」
「知ってる人に聞いてみるとか。幸い、もっともおあつらえ向きな人を私たち知っているじゃない」
その気になってきている柚鈴に気づいているのだろう。
幸が、探偵のように腕を組んで、無邪気に笑ってみせた。
「おあつらえ向きな人」が分からずに首を傾げる。
つまり、詳しい人に聞いてみるということだろう。
「でも、私。志奈さんの義理の妹だなんて、人に知られるのは気がすすまないんだけど」
「そうかぁ。じゃあ、聞き方は工夫しなきゃね」
特に問題にも思っていないようで、頷いて見せてから、幸はなにかを思い出したように勉強道具を手に取った。
「とりあえず時間もまだ早いし。柚鈴ちゃん!課題で分からないところがあったの。教えて」
お願いポーズをされて。
そのマイペースな幸の様子に、思わずふっと笑ってしまった。
立ち上がり、自分のノートを取り出しながら、幸を振り返る。
「良いけど、先に服は着替えた方がいいんじゃない」
「ああっいけない!」
幸はようやく気づいたらしく、慌てて立ち上がった。
その様子にクスクスと笑ってしまう。
とても幸せな気持ちが生まれていた。
それがどうしてか上手くは言えないけれど。
たぶん私にとって嬉しいような素敵なような『何か』を今、始めているんだと実感しているんだと思った。
まずはお母さんを指さす。
「こっちの人が私のお母さん」
それから、志奈さんを指差した。
「で、もう1人は私の義理のお姉さんの志奈さん」
「義理?」
幸に頷いて見せる。
「この春にね、私のお母さんが再婚したの。それの相手が、志奈さんのお父さんだったのよ。だから春から、小鳥遊志奈さんは私のお姉さんになったの」
「春って、常葉学園に来る前にってこと?」
「そう。だから私はこの人と、全然姉妹をしたわけじゃないんだね」
幸は、はぁーと感心したように息を漏らした。
その様子は、全く神妙な様子がなく、柚鈴を安心させた。
なるべく、なんでもない風に伝えたかったのだ。
変に真剣な様子をされたら、本当に困ってしまう。
「一緒に写ってる写真では、つい最近まで全然って感じじゃないのになあ」
「それは弥生さんの写真の撮り方じゃないかな?」
幸はその言葉には納得していないように首を傾げた。
改めて写真を見れば、写真の中の志奈さんは柚鈴を温かな目線で見ているものが何枚もある。
志奈さんの愛情自体は、否定出来ないかもしれない。
本当に柚鈴のことが可愛いと思っている気がするのだ。
柚鈴のなんだかむず痒いような気持になった。
「それで、柚鈴ちゃんにとって、志奈さんってどんな存在なの?」
「どんなって、そんなこと聞かれても。この春に急にお姉さんになったわけだし。綺麗な人だから、正直、妹なんて恐れ多いかなとは思うけど」
「なるほど」
幸はそう呟いて、少し考えるように沈黙した。
その澄んだ瞳は、柚鈴の心の奥まで見てしまいそうで、少し居心地が悪い。
「柚鈴ちゃん」
幸は、にっこり笑った。
「柚鈴ちゃんはお姉さんについて、もう少し知ってもいいんじゃないかな?」
「え?」
「だって、あんまり良く知らないみたいだし。柚鈴ちゃんのお姉さん、常葉学園では有名人だったんでしょう?それならこの学園には、お姉さんの足跡が沢山残っていると思うんだ。せっかく常葉学園にいるんだし、どんな風に有名だったか、足跡探ししてみようよ」
幸の提案に、目を見開いてしまう。
足跡探し。
それは柚鈴自身が、この寮にやってきたときに思ったことだ。
幸から提案されて、柄でもないと思うのに、なんだかドキドキしてしまう。
それはなんだか楽しくて素敵なことに思えるのだ。
「積極的にって、どうやって?」
「知ってる人に聞いてみるとか。幸い、もっともおあつらえ向きな人を私たち知っているじゃない」
その気になってきている柚鈴に気づいているのだろう。
幸が、探偵のように腕を組んで、無邪気に笑ってみせた。
「おあつらえ向きな人」が分からずに首を傾げる。
つまり、詳しい人に聞いてみるということだろう。
「でも、私。志奈さんの義理の妹だなんて、人に知られるのは気がすすまないんだけど」
「そうかぁ。じゃあ、聞き方は工夫しなきゃね」
特に問題にも思っていないようで、頷いて見せてから、幸はなにかを思い出したように勉強道具を手に取った。
「とりあえず時間もまだ早いし。柚鈴ちゃん!課題で分からないところがあったの。教えて」
お願いポーズをされて。
そのマイペースな幸の様子に、思わずふっと笑ってしまった。
立ち上がり、自分のノートを取り出しながら、幸を振り返る。
「良いけど、先に服は着替えた方がいいんじゃない」
「ああっいけない!」
幸はようやく気づいたらしく、慌てて立ち上がった。
その様子にクスクスと笑ってしまう。
とても幸せな気持ちが生まれていた。
それがどうしてか上手くは言えないけれど。
たぶん私にとって嬉しいような素敵なような『何か』を今、始めているんだと実感しているんだと思った。
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