拝啓、お姉さまへ

一華

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第二章 5月‐序

一歩、進んで ★7★

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出来上がったスープカレーをつぎ分けてテーブルに並べて。
主食はターメリックライスと白飯。
一応、辛さの緩和になるようにポテトサラダを小皿に乗せた。
オトウサンのカレーは唐辛子の量がかなり少なめで作ってあるので色も茶色。それ以外の3皿はかなり赤い。食欲をそそる香辛料の香りが漂う。
一応、柚鈴は試食をしたので、どれも美味しく仕上がっているのは間違いがない。
辛すぎて食べれないものは作ってないはずだ。……多分。
これは柚鈴基準になってしまうので、言い切ることはできない。

並んだ食事に、リビングにおいやった二人を呼んで椅子に座ってもらう。
そういえば、この家族に食事を作るのは初めてだと気づいて、少し胸の辺りがサワサワとした。
なんというか、ちょっとした緊張だ。
美味しいと思ってもらえると嬉しいな。いやいや、志奈さんにはちょっとくらいは苦しい顔をしてほしいのだけど。
柚鈴は心の中だけでこっそり、そんなことを考えていた。

柚鈴の席の隣がお母さんが、志奈さんが向かいに座り、空いた席にオトウサンというのが席順。四人でテーブルについた。
「美味しそうにできたわね」
「このカレーには感謝と煮込まれたスパイシーになった複雑なものが色々入ってますから」
にっこりと笑うお母さんに、志奈さんがしたり顔で答える。
『複雑なもの』
含みのある言い方を、お母さんは単に香辛料のことだと思ったようだけど、志奈さんが言いたいことが違うのを知っている柚鈴は複雑だ。
「なんか美味しくなさそうなんでやめてください」
志奈さんを小声で止めてから、お母さんの方を向いた。

「私が、母の日には帰ってこれなさそうだから、今日はこれがお母さんへの感謝カレーなの」
「うん、ありがとう」
「志奈さんが作ってくれたし、いつも以上に辛くなるように頑張ったから、美味しいと思うよ」
「姉妹初の共同カレーというわけね」
茶化すようなお母さんの言い方に、瞬間、複雑な表情を浮かべてしまう。
志奈さんは嬉しそうに笑っている。
「……ま、まあ。間違いではないけど」
「共同作業はもう一つあるんですよ」
反論したくなっていた柚鈴を遮るように志奈さんがにこやかに言うと、一度席を離れてから柚鈴の方に手作りのカーネーションの籠を渡した。

そうだった。
食事をふるまうことで、ふっと忘れかけていたが、志奈さんが渡せるように取りにいってくれたらしい。
受け取った柚鈴が、お母さんへと差し出す。
手作りにしては上出来といえるプレゼントに仕上がった籠に、驚いたように息を飲んだ。
「カーネーション?」
「今年は、手作りにしたの。志奈さんと二人で」
お母さんが、柚鈴と志奈さんを交互に見つめてから、なんとも言えない表情でした後に。
にっこり笑った。

「ありがとう」
じっくり手作りのカーネーションを見て、しみじみと呟く。
「そうか。なんだか改めて、娘が二人になったんだなあって思ったわ」

娘が二人になった。
カーネーションを作りながら、柚鈴も同じようなことを感じていたので、お母さんの気持ちが少し分かるような気がする。
形としては今そうなったわけではないけれど、感じる瞬間が今、お母さんの中にあったんだろうと思う。
温かい気持ちに包まれて志奈さんを見ると、頬を両手で口元で押さえて、一瞬泣きそうな顔をしていた。
それを見て、柚鈴も少しだけ泣きそうな気持になった。

「ありがとう。これから沢山『お母さん』するから、よろしくお願いします」
お母さんは志奈さんや柚鈴の気持ちを包むような、柔らかな笑顔で頭を下げると、志奈さんが釣られたように頭を下げた。
「ふつつかな娘ですけど、よろしくお願いします」
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