拝啓、お姉さまへ

一華

文字の大きさ
115 / 282
第三章 5月‐結

お姉さま、ペア作りが本格起動です ★1★

しおりを挟む
「なにこれ」
ゴールデンウィーク明け初日の授業が終わって。
ホームルームの最後に、何枚か綴りで配られたプリントを見て、思わず柚鈴は声を上げた。

主題は『助言者メンター制度推進書類』
配布者は『生徒会』
内容は、2年生と3年生の名簿のようだ。
ざっと合わせて100人ほどだから、なんらかの意図を持った抜粋であることは間違いない。
名前は全て、カタカナ記載がされていて、所属する部活動までは書かれている。

「もう既にご存知の方たちもいらっしゃると思いますが」
ホームルームが始まるとプリントを配ってから前に立って話し始めたのは、東組トップの成績であり、生徒会手伝いをしている明智絵里さんだ。相変わらずの乱れのない三つ編みと、表情を引き締めてみせる黒縁の眼鏡。隙を感じさせない様子である。

「常葉学園では助言者メンター制度という上級生とのペア制度があります。簡単に言えば優秀な上級生から直接、一対一の指導を受け、より良い学園生活を送るための制度です。特進科である東組では外部からの受験によって入学した生徒も多く、上級生と知り合う機会の少ない人も多いと思います。そこで今月から、そういった生徒が助言者メンターの資格を持っている上級生と知り合う機会を生徒会などが設けることになっています。その一環として本日は生徒会から配布物を配らせていただきます」
プリントを提示しつつ、明智さんは淡々と説明を続ける。
生徒会手伝いとしての仕事をしているといった淀みなく話す姿に、誰もがまるで先生の話を聞くように向いあっている。
多少、それぞれが戸惑ったような視線を交わす程度のことはあるが、明智さんはこの教室の雰囲気を上手くリードしていた。

「この配布物には、助言者メンターの資格を持つ中でも、まだペアを持っていない上級生の方々の名前が記載されています。同じように上級生には、一年生の名簿が配布されています」

そこまで言われて、再度プリントに目を落とす。そういえばと思い当たった。
入学してすぐに、生徒会主催の名簿を作るとかで、簡単にアンケートに答えたような気がする。
個人情報においての扱い説明まで記載されていたので、多少は不思議に思ったのだ。だが、生徒会が生徒の名簿を作ると言われれば、そんなこともあるのかもしれないと、なんとなく納得してしまった。
一年生の名簿はそこから作られて、上級生の手に渡っていると考えれば納得がいく。
上級生も進級してすぐに同じようにアンケートに答え、それがこうして1年生の手にも渡っているのだろう。

それにしても。
3年生の名前まであるんだ。

柚鈴はプリントを眺めながら首を傾げた。

ここに名前があるということは、1年生と3年生とのペアもありだということだろうか?制度の仕組みから考えれば、ありなのかもしれない。ダメなら1年生に名前を乗せた資料が配られはしないだろう。

このプリントに載っている3年生が、2年生の間にペアを作らなかった方々なのか、3年生に進学するときに助言者メンターの資格を得たのかは、資料では当然ながら判断できない。しかしながら、この制度に振り回されるのは3年間ずっとなのだということは、新しく分かったことだった。

ペアを作ることを求められている3年生がいると分かったということは、だ。
志奈さんに『ペアの上級生』は作らないと公言した手前、それを果たすためには2年生の間までは頑張らなくてはならないということになる。

ちょっと、自信なくなってきたかも。
柚鈴はどんよりと重い気持ちを抱いた。

更に資料を眺めていると東組の先輩方の中には、名前の前に星印がついている人たちもあり、枠外にそれが「特待生」であることも記載されていた。

つまり、だ。

「柚鈴ちゃんが特待生だっていうのも、上級生は一目瞭然なんだねぇ」
プリントを見て、斜め後ろの席に座っている幸が感心したようにつぶやいた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

目の前で始まった断罪イベントが理不尽すぎたので口出ししたら巻き込まれた結果、何故か王子から求婚されました

歌龍吟伶
恋愛
私、ティーリャ。王都学校の二年生。 卒業生を送る会が終わった瞬間に先輩が婚約破棄の断罪イベントを始めた。 理不尽すぎてイライラしたから口を挟んだら、お前も同罪だ!って謎のトバッチリ…マジないわー。 …と思ったら何故か王子様に気に入られちゃってプロポーズされたお話。 全二話で完結します、予約投稿済み

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

熟女教師に何度も迫られて…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
二度と味わえない体験をした実話中心のショート・ショート集です

処理中です...