拝啓、お姉さまへ

一華

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第三章 5月‐結

お姉さま、ペア作りが本格起動です ★2★

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「ソ、ソウダネ」
心の声の代弁をしてくれてありがとう。
ありがたいけど、多少の危機感を感じてしまって複雑な心境なのだけど。

代々、助言者単語メンターの資格を受け継いでいく常葉学園では家系と呼ばれる『メンタリング・チェーン』
それにこだわる人たちには、格好の標的になると言われている特進科の更に特待生。

志奈さんや先輩方のアドバイス通りなら、柚鈴は確かに声をかけられやすいのかもしれない。しかもこんな風に分かりやすくされてしまってはだ。

助言者メンターの資格のある先輩方は、ペアを持つことを学園に推奨されていますので、今後声のかかる生徒もいるでしょうが、先生も補助の上、成績向上につながる実例の多い制度です。前向きに検討してください」
学年主席らしい、なんとも実のある考え方で明智さんは話を続けている。

「もし名簿の先輩方の中で、声を掛けたい方がいらっしゃれば、それも生徒会を通して可能なことです。一言ご相談ください」

ん…?生徒会ってそういうこともするの?

確かに凛子先輩も、そんなことを言っていたような気がしたけれど。

ふいに何だかその言葉に引っかかって、柚鈴が首を傾げた。
なんか、これって。似たような仕組みを知っているかも。
なんだっけ…?
柚鈴が思い当たるより先に幸がポツリと呟いた。
「…なんか結婚相談所てきな…」

柚鈴もはっとして息を飲む。
確かにそうだ。なんというか生徒会の仕事が、そういったものに類似している気がするのだ。

しかし運が悪いことに、明智さんの耳にその言葉が届いてしまったらしい。
その視線がまっすぐに幸に届き、無表情の圧力が与えられる。

「春野幸さん、なにかご質問がおありですか?」
「へ、ええ!?」
幸が思わず驚きの声をあげるが、明智さんは逃がす気がないようだ。

それぞれ心の中では色々思っていたのかクラスの他の生徒まで何かを期待するように幸を見ている。

「なにか?」
質問をしなさい、とばかりの目線に、幸は凍りついている。
助けて~と声が聞こえるようだ。

その空気に思わず、柚鈴が手を挙げた。
「あ、あの。私から質問してもいいでしょうか?」
「小鳥遊柚鈴さん、どうぞ」

…本当のところを言えば、助言者のペアを持つつもりのない柚鈴には、どうしても聞きたい質問はなかった。
空気のようにこの時間を無難に過ごしたかった。
だが、疑問点がないわけでもないし手を挙げておいて、質問がないでは駄目だろう。
一先ず適当に質問をひねり出すことにした。

「えっと。このプリントには3年生の名前もありますが、1年生が3年生とペアになってもいいということですか?」
「それは問題ありません。もちろんその場合は1年間という期間限定になりますけど」
柚鈴は一度頷いた。
やっぱりそうだよね、と心の中で思う。これは予想通りだ。

それから、これから柚鈴が『助言者メンターを持たなくていいように』この場で聞ける質問を考えてから口にした。
「上級生から声がかかるっていうのは、具体的にどういう風なことなんでしょうか?」

柚鈴の質問に明智さんはそうですね、と考えてから答えを返した。
「先輩方の中には、直接1年生のクラスまでいらっしゃって、後輩に声をかけることもあるようです」
「わざわざ?」
「もちろん生徒会が間に立つこともありますけど」
明智さんは、感情を乱すことのないように答える。

そこまでして助言者メンターの資格を持った上級生が、ペアを持たなきゃならないのかと、柚鈴は少し反抗的な気持ちさえ抱えた。一瞬それも聞いてしまおうかと心をよぎった。
だが、なんとなく振り返って幸を見ると実に楽しそうに名簿を眺めている。

ふと周りを見渡せば、クラスの大半が少しばかり楽しそうで、浮足うきあし立ってる雰囲気さえ感じた。

…もしかして、結構このシステムって好意的に受け止められてる?

柚鈴からすると、約束の手前、出来れば回避したい気持ちがあるのだが。
女子高校生にとって、特定の優秀な先輩と親密になれる機会というのは、もしかしたら嬉しいのだろうか。
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