176 / 282
第三章 5月‐結
お姉さま、体育祭への準備です 7
しおりを挟む
「薫は何の競技に出るの?」
この話題は、薫にとって楽しい話だったのだろう。
幸への目線をあっさりと外した。
「一応出れる競技は南組のメンツは4つまでだから。組対抗リレーと、スウェーデンリレーに400メートル走、200メートル走。あ、一応は応援合戦も出るよ」
4つまでだと言うのに、4つ出るという薫に驚いてしまう。しかも出る競技が全部本当に足の速い人が選びそうなものだ。借り物競走しか出ない柚鈴とは大違いだ。
しかもこれに加えて応援合戦もとは。あちこち走り回っているのに、そんな練習をする時間が良くあるなと感心してしまった。
「り、陸上部の本領発揮だね。私は借り物競走だけだから、なんか感心しちゃう。陸上部でいつも走ってるから、体育祭も部活の練習と変わらないなんてことはないの?」
「そんなことないよ。他の部活でも結構速い人いるしね。よその先輩じゃあ勝負も中々出来ないし」
「そんな人いるの?」
「噂ではソフトボール部とか、バスケ部のエース辺りは結構速いらしいよ?上級生じゃあ、体育祭とはいえリレーでもなきゃ一緒には走れないけど。今回は大いに期待できる。私、リレーは二つともアンカーだからね」
よほど速い人と競うのが楽しみなんだろう。薫はかなり機嫌が良かった。
そこで機嫌が良くなるというのは柚鈴には理解出来ないが、ワクワクしているのは分かってこちらまで楽しい気持ちになってしまう。
「応援してるね」
その言葉は自然と口に出た。
薫はどこか満足そうに笑ってから、揶揄うように目を細める。
「あはは?組は違うんだし、自分のとこ応援しなよ」
「あ、それもそうか…」
「勝負だし、お互い頑張ろうな。それよりさ、柚鈴。借り物競走に出るって、例のお題の方は誰にしておくか決めたの?」
借り物競争の例のお題。『ペアになりたい人』
柚鈴をメンティにしたいと諦めない東郷先輩も参加が予想されるこの競技で、先手を打って自分の意志表示をすることで、強制的にペアにされてしまうことを避けようという考えだ。
すでにメンティを持っている、もしくはメンティを持つ資格のない人と走れば良いんじゃないかという、志奈さんの案だったが、実際相手を考えると誰もピンと来なかったので随分困ってしまった。
正式に体育祭でその競技に参加が決まるまでは、悩みつつも決定は後回しにしていたのだが、いざ決まってしまえばそうもいかない。
柚鈴は改めて思いつく中で一番打倒なのは誰かを考えていた。
「う~ん…。凛子先輩にお願いしようかとは思っているんだけど」
「なるほど。生徒会長なら、まあ間違いはないか」
「でも、それで東郷先輩が納得してくれるかなぁ」
どうも大正解な気というがしない。
確かに生徒会長である凛子先輩は、柚鈴が憧れてもおかしくはない立場と言えるし、ペアも作れない。
しかも東郷先輩の件も知っているので頼みやすい。
あらゆる面で一番だとは思うのだけど。
それで、東郷先輩が納得して、柚鈴を諦めるのかどうか。
結局はそこが一番大切なのだ。
その時。
「無理ね」
悩んでいる柚鈴の悩みにきっぱりと言い切るようなタイミングで急に話に入ってきたのは、遥先輩だった。
今帰ってきたのか、しかし薫とは違い制服姿。
身支度をしっかり整えてから行動するのだろう、いつも通りのふわふわとツインテールが可愛らしくも美しくリボンでまとめられている。
「お、お帰りなさい。遥先輩」
突然話に参加してきた遥先輩に柚鈴は驚きつつ挨拶をする。
…ど、どこから聞いてたの?
別に聞かれてまずい話ではないものの、予想外でなんとなくわたわたしてしまうのは仕方ないと思う。
「ただいま、戻りました。ごきげんよう、みなさま」
挨拶を返して。ふんわりと愛らしく笑って見せてから、遥先輩はなんだか迫力のある真面目な表情を変えて話を仕切り直した。
この話題は、薫にとって楽しい話だったのだろう。
幸への目線をあっさりと外した。
「一応出れる競技は南組のメンツは4つまでだから。組対抗リレーと、スウェーデンリレーに400メートル走、200メートル走。あ、一応は応援合戦も出るよ」
4つまでだと言うのに、4つ出るという薫に驚いてしまう。しかも出る競技が全部本当に足の速い人が選びそうなものだ。借り物競走しか出ない柚鈴とは大違いだ。
しかもこれに加えて応援合戦もとは。あちこち走り回っているのに、そんな練習をする時間が良くあるなと感心してしまった。
「り、陸上部の本領発揮だね。私は借り物競走だけだから、なんか感心しちゃう。陸上部でいつも走ってるから、体育祭も部活の練習と変わらないなんてことはないの?」
「そんなことないよ。他の部活でも結構速い人いるしね。よその先輩じゃあ勝負も中々出来ないし」
「そんな人いるの?」
「噂ではソフトボール部とか、バスケ部のエース辺りは結構速いらしいよ?上級生じゃあ、体育祭とはいえリレーでもなきゃ一緒には走れないけど。今回は大いに期待できる。私、リレーは二つともアンカーだからね」
よほど速い人と競うのが楽しみなんだろう。薫はかなり機嫌が良かった。
そこで機嫌が良くなるというのは柚鈴には理解出来ないが、ワクワクしているのは分かってこちらまで楽しい気持ちになってしまう。
「応援してるね」
その言葉は自然と口に出た。
薫はどこか満足そうに笑ってから、揶揄うように目を細める。
「あはは?組は違うんだし、自分のとこ応援しなよ」
「あ、それもそうか…」
「勝負だし、お互い頑張ろうな。それよりさ、柚鈴。借り物競走に出るって、例のお題の方は誰にしておくか決めたの?」
借り物競争の例のお題。『ペアになりたい人』
柚鈴をメンティにしたいと諦めない東郷先輩も参加が予想されるこの競技で、先手を打って自分の意志表示をすることで、強制的にペアにされてしまうことを避けようという考えだ。
すでにメンティを持っている、もしくはメンティを持つ資格のない人と走れば良いんじゃないかという、志奈さんの案だったが、実際相手を考えると誰もピンと来なかったので随分困ってしまった。
正式に体育祭でその競技に参加が決まるまでは、悩みつつも決定は後回しにしていたのだが、いざ決まってしまえばそうもいかない。
柚鈴は改めて思いつく中で一番打倒なのは誰かを考えていた。
「う~ん…。凛子先輩にお願いしようかとは思っているんだけど」
「なるほど。生徒会長なら、まあ間違いはないか」
「でも、それで東郷先輩が納得してくれるかなぁ」
どうも大正解な気というがしない。
確かに生徒会長である凛子先輩は、柚鈴が憧れてもおかしくはない立場と言えるし、ペアも作れない。
しかも東郷先輩の件も知っているので頼みやすい。
あらゆる面で一番だとは思うのだけど。
それで、東郷先輩が納得して、柚鈴を諦めるのかどうか。
結局はそこが一番大切なのだ。
その時。
「無理ね」
悩んでいる柚鈴の悩みにきっぱりと言い切るようなタイミングで急に話に入ってきたのは、遥先輩だった。
今帰ってきたのか、しかし薫とは違い制服姿。
身支度をしっかり整えてから行動するのだろう、いつも通りのふわふわとツインテールが可愛らしくも美しくリボンでまとめられている。
「お、お帰りなさい。遥先輩」
突然話に参加してきた遥先輩に柚鈴は驚きつつ挨拶をする。
…ど、どこから聞いてたの?
別に聞かれてまずい話ではないものの、予想外でなんとなくわたわたしてしまうのは仕方ないと思う。
「ただいま、戻りました。ごきげんよう、みなさま」
挨拶を返して。ふんわりと愛らしく笑って見せてから、遥先輩はなんだか迫力のある真面目な表情を変えて話を仕切り直した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
目の前で始まった断罪イベントが理不尽すぎたので口出ししたら巻き込まれた結果、何故か王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
私、ティーリャ。王都学校の二年生。
卒業生を送る会が終わった瞬間に先輩が婚約破棄の断罪イベントを始めた。
理不尽すぎてイライラしたから口を挟んだら、お前も同罪だ!って謎のトバッチリ…マジないわー。
…と思ったら何故か王子様に気に入られちゃってプロポーズされたお話。
全二話で完結します、予約投稿済み
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる