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第三章 5月‐結
お姉さま、体育祭への準備です 8
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「それよりさっきの話だったら無理よ」
いつも通りだけど、遥先輩は話の切り替えが早い…
恐らくは頭の回転も速いんだろう。
柚鈴は置いていかれないように耳を傾けた。
「無理って東郷先輩のことですか?」
「ええ。凛子が交渉するらしいけど、難航するでしょうね」
「どうしてですか?」
「先日お話させていただいたときの感覚的なものもあるわ。わき目も降らずと言うか、良くも悪くも真っ直ぐな人よね。その割に妙な所で素直。ああいうタイプの方は、猪突猛進に突き進んで、何かに大きくぶつかるまで、中々止まることができないのよ。柚鈴さんが他に憧れの人がいる程度の話で諦めるかしら?凛子が個人的に柚鈴さんを可愛がっているというならともかく」
「…ええと」
遥先輩の愛らしい外見の割に、少々毒舌にも聞こえる物言いは、中々的を得て聞こえる。
それに凛子先輩が個人的に柚鈴を可愛がる、というのもあり得ないだろう。
生徒会長として、生徒のサポートをしたいっていうのが凛子先輩だと柚鈴は思っている。
それは東郷先輩であっても分かっていそうだ。
つまりつけ入る隙は全然あると思われてしまう、と。そういうことなのだろう。
遥先輩は、少し物思いにふけるようにして頬杖をつきつつ、ふうっとため息をついた。
「それにねぇ。東郷千沙さんの助言者の方が誰かっていうのも問題になると思うのよ」
「助言者、ですか」
思いも掛けない話だ。
柚鈴が質問を返すと、遥先輩は頷いた。
「ええ。東郷さんの助言者は、3年東組の荻原翔子さんと言う方よ。特待生で入学当時は首席」
「主席?」
「そう。つまり、凛子にとっては学業においてのライバルのような存在ね」
「そんなこと、凛子先輩は一言も言ってませんでしたけど」
ライバルの言葉に。柚鈴は俄かに信じがたい気持ちになった。
先日相談した時の凛子先輩は、東郷先輩の助言者に関して、特に何の感情も見せなかった気がする。ライバルとは到底信じがたい。
遥先輩は柚鈴の様子に、否定することなく柔らかく笑った。
「凛子はそういう競争意識があんまりないの。勝負事は自分との戦い。人と出来を比べても仕方ないって。でも、翔子さんの方はどうなのかしら?」
「ライバル意識、持たれているということですか?」
「私は個人的に、そうだと思っているわ。翔子さんは凛子が生徒会長になることが決まった時、生徒会入りをきっぱり断っているから。生徒会のお手伝い経験もあるし、生徒会入り有望視されていた、とても優秀かつ真面目な方だったのに」
「…つまり、凛子先輩のことを好きじゃない…?」
「そこまでは分からないけど、上手くいってる関係ではないわね。そもそも東組でトップ争いをしている方々の関係性って、ちょっと特殊な気もするもの」
他にも何かそういった関係に思い出でもあるのか、遥先輩は苦笑した。
しかし、遥先輩の言った通りだとすると。
凛子先輩が、東郷先輩の助言者である荻原先輩と話をしようとしても上手くいかない可能性が高いわけだ。
思いのほか抜け道のなさそうな状況に困っていると。
「なんか、凛子先輩には不得手な所で話をしてもらってばっかですねえ」
薫は他人事のように、のんびりと言った。
見れば、もう食事が終わっている。
「あなたがそれを言うの?薫さん」
遥先輩は薫の様子に呆れたように言った。
「いやあ。申し訳ないと思ってるんですよ。私なりに」
「あらそう。でも、あなたなりでは足らないわね。今度、凛子に体で支払ってさしあげなさい」
のびやかな薫の様子に遥先輩は少々冷たい目線を送る。先月の陸上部の件でのいざこざを思えば、まあ、それも致し方ない所だ。
だが、薫はニヤリと不敵に笑って言った。
いつも通りだけど、遥先輩は話の切り替えが早い…
恐らくは頭の回転も速いんだろう。
柚鈴は置いていかれないように耳を傾けた。
「無理って東郷先輩のことですか?」
「ええ。凛子が交渉するらしいけど、難航するでしょうね」
「どうしてですか?」
「先日お話させていただいたときの感覚的なものもあるわ。わき目も降らずと言うか、良くも悪くも真っ直ぐな人よね。その割に妙な所で素直。ああいうタイプの方は、猪突猛進に突き進んで、何かに大きくぶつかるまで、中々止まることができないのよ。柚鈴さんが他に憧れの人がいる程度の話で諦めるかしら?凛子が個人的に柚鈴さんを可愛がっているというならともかく」
「…ええと」
遥先輩の愛らしい外見の割に、少々毒舌にも聞こえる物言いは、中々的を得て聞こえる。
それに凛子先輩が個人的に柚鈴を可愛がる、というのもあり得ないだろう。
生徒会長として、生徒のサポートをしたいっていうのが凛子先輩だと柚鈴は思っている。
それは東郷先輩であっても分かっていそうだ。
つまりつけ入る隙は全然あると思われてしまう、と。そういうことなのだろう。
遥先輩は、少し物思いにふけるようにして頬杖をつきつつ、ふうっとため息をついた。
「それにねぇ。東郷千沙さんの助言者の方が誰かっていうのも問題になると思うのよ」
「助言者、ですか」
思いも掛けない話だ。
柚鈴が質問を返すと、遥先輩は頷いた。
「ええ。東郷さんの助言者は、3年東組の荻原翔子さんと言う方よ。特待生で入学当時は首席」
「主席?」
「そう。つまり、凛子にとっては学業においてのライバルのような存在ね」
「そんなこと、凛子先輩は一言も言ってませんでしたけど」
ライバルの言葉に。柚鈴は俄かに信じがたい気持ちになった。
先日相談した時の凛子先輩は、東郷先輩の助言者に関して、特に何の感情も見せなかった気がする。ライバルとは到底信じがたい。
遥先輩は柚鈴の様子に、否定することなく柔らかく笑った。
「凛子はそういう競争意識があんまりないの。勝負事は自分との戦い。人と出来を比べても仕方ないって。でも、翔子さんの方はどうなのかしら?」
「ライバル意識、持たれているということですか?」
「私は個人的に、そうだと思っているわ。翔子さんは凛子が生徒会長になることが決まった時、生徒会入りをきっぱり断っているから。生徒会のお手伝い経験もあるし、生徒会入り有望視されていた、とても優秀かつ真面目な方だったのに」
「…つまり、凛子先輩のことを好きじゃない…?」
「そこまでは分からないけど、上手くいってる関係ではないわね。そもそも東組でトップ争いをしている方々の関係性って、ちょっと特殊な気もするもの」
他にも何かそういった関係に思い出でもあるのか、遥先輩は苦笑した。
しかし、遥先輩の言った通りだとすると。
凛子先輩が、東郷先輩の助言者である荻原先輩と話をしようとしても上手くいかない可能性が高いわけだ。
思いのほか抜け道のなさそうな状況に困っていると。
「なんか、凛子先輩には不得手な所で話をしてもらってばっかですねえ」
薫は他人事のように、のんびりと言った。
見れば、もう食事が終わっている。
「あなたがそれを言うの?薫さん」
遥先輩は薫の様子に呆れたように言った。
「いやあ。申し訳ないと思ってるんですよ。私なりに」
「あらそう。でも、あなたなりでは足らないわね。今度、凛子に体で支払ってさしあげなさい」
のびやかな薫の様子に遥先輩は少々冷たい目線を送る。先月の陸上部の件でのいざこざを思えば、まあ、それも致し方ない所だ。
だが、薫はニヤリと不敵に笑って言った。
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