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第三章 5月‐結
お姉さま、体育祭です! 7 ~凛子~
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競技は進み、ムカデ競争となった。
ムカデ競争は10人が縦並びで足首を紐で繋いで、動きを合わせて前進して早さを競う競技だ。
各学年3チームのリレー形式で行われる。
大番狂わせも当然あり得る競技だった。
この勝負の行方を同窓会用のテントから出て、見届けようとしているのは、長谷川凛子だ。
ムカデ競争では生徒会の手伝いをしている白組の明智さんが参加している。
この日の為に、随分放課後練習に励んでいて、真面目な明智さんらしく、授業の休み時間もリズムに合わせて足踏みをしていたらしい。
「授業で覚えたことが飛んでしまいそうです」
本気で言っているのかどうかは分からないが、本番直前にそんなことを漏らしてもいた。
意外と緊張する方なのだろう。
いつも冷静そうで、動揺している様子など顔に出さないけれど、ふとした時の態度や言葉から、そういった様子も感じ取れて、凛子はなるべく気を付けて見ているようにしていた。
そうして細やかな変化を、先輩に言葉に出す前に気づいてもらい、助けてもらったこともある立場だ。自然とそういう態度になる。
またそうして後輩に気を配ることで、あの時の先輩方が何を感じていたのか、少しは感じれるような気もしてくる。理解できるならしたいと、思っていた。
思い出すと、沢山の恩を感じながら、少しばかりの心残りもある昨年までの出来事に、少し感傷に浸るような気持ちもなる。その気持ちを持ったまま、競技が始まるのを待っていると、背後から穏やかに声が掛けられた。
「あら、生徒会長さん。こちらにいらしたんですの」
探していたという声の様子に振り返ると、そこには茶道部部長である相原花蓮が立っていた。
愛らしいが、どこか曲者な雰囲気を持っている同級生で、凛子自身は遠くから見かけることのほうが多く、あまり関わってきたことがない。
用がある様子だが、わざわざ声を掛けられる理由が思い当たらなかった。
「相原さん。何か御用でしたか?」
「はい。生徒会長さんは同窓会のテントに出入りをしていると思いまして」
「え?ええ」
この言葉には素直に頷いた。
生徒会役員には、同窓会のお世話をする、という仕事がて存在する。
お世話というのは裏も表のなく、そのまま『お世話』だ。
お茶出しから、話し相手等。
そのため、生徒会役員は体育祭でも、自分の競技以外の時間を見つけて、同窓会の為に設けられたテントに出入りをしているのだ。
歴史のある常葉学園で、様々な援助をしてくれる同窓会の役割は大きいため、窓口に生徒会を置いているのは昔からの伝統である。
そのため同窓会のお世話は、自然と生徒会がするのが暗黙の了解になっている。
とはいえ、同窓会メンバーも元々は卒業生だった人たちだ。
今日この日が、現役生徒が体育祭で忙しいのも分かっていて、形式上お世話を受けているという様子で、ほとんどは自分たちで動いているので、そこまでの仕事もない。
そうなると、片時もそばにいないといけないわけでもないので、応援するために、多少テントを離れても問題になるわけではなかった。だがら出入りの回数も多くなる。
相原さんは、凛子が頷くと、少し迷った様子を見せてから聞いた。
「そちらに昨年の卒業生はいらっしゃいました?」
「昨年の?いいえ。テントへの出入りは見ていないわ」
「…さようでございますの」
相原さんの声のトーンが、少し落ちたように感じた。
平日だから、誰かが去年の卒業生が来かもしれないなどと思うとは考えていなかったが、そんなことはわざわざ言わない。
おそらくそれぐらいのことは、彼女もわかっているはずだ。
それでも、なぜか気落ちしたような様子に、凛子は気になって尋ねた。
「どなたかお探しでした?」
ムカデ競争は10人が縦並びで足首を紐で繋いで、動きを合わせて前進して早さを競う競技だ。
各学年3チームのリレー形式で行われる。
大番狂わせも当然あり得る競技だった。
この勝負の行方を同窓会用のテントから出て、見届けようとしているのは、長谷川凛子だ。
ムカデ競争では生徒会の手伝いをしている白組の明智さんが参加している。
この日の為に、随分放課後練習に励んでいて、真面目な明智さんらしく、授業の休み時間もリズムに合わせて足踏みをしていたらしい。
「授業で覚えたことが飛んでしまいそうです」
本気で言っているのかどうかは分からないが、本番直前にそんなことを漏らしてもいた。
意外と緊張する方なのだろう。
いつも冷静そうで、動揺している様子など顔に出さないけれど、ふとした時の態度や言葉から、そういった様子も感じ取れて、凛子はなるべく気を付けて見ているようにしていた。
そうして細やかな変化を、先輩に言葉に出す前に気づいてもらい、助けてもらったこともある立場だ。自然とそういう態度になる。
またそうして後輩に気を配ることで、あの時の先輩方が何を感じていたのか、少しは感じれるような気もしてくる。理解できるならしたいと、思っていた。
思い出すと、沢山の恩を感じながら、少しばかりの心残りもある昨年までの出来事に、少し感傷に浸るような気持ちもなる。その気持ちを持ったまま、競技が始まるのを待っていると、背後から穏やかに声が掛けられた。
「あら、生徒会長さん。こちらにいらしたんですの」
探していたという声の様子に振り返ると、そこには茶道部部長である相原花蓮が立っていた。
愛らしいが、どこか曲者な雰囲気を持っている同級生で、凛子自身は遠くから見かけることのほうが多く、あまり関わってきたことがない。
用がある様子だが、わざわざ声を掛けられる理由が思い当たらなかった。
「相原さん。何か御用でしたか?」
「はい。生徒会長さんは同窓会のテントに出入りをしていると思いまして」
「え?ええ」
この言葉には素直に頷いた。
生徒会役員には、同窓会のお世話をする、という仕事がて存在する。
お世話というのは裏も表のなく、そのまま『お世話』だ。
お茶出しから、話し相手等。
そのため、生徒会役員は体育祭でも、自分の競技以外の時間を見つけて、同窓会の為に設けられたテントに出入りをしているのだ。
歴史のある常葉学園で、様々な援助をしてくれる同窓会の役割は大きいため、窓口に生徒会を置いているのは昔からの伝統である。
そのため同窓会のお世話は、自然と生徒会がするのが暗黙の了解になっている。
とはいえ、同窓会メンバーも元々は卒業生だった人たちだ。
今日この日が、現役生徒が体育祭で忙しいのも分かっていて、形式上お世話を受けているという様子で、ほとんどは自分たちで動いているので、そこまでの仕事もない。
そうなると、片時もそばにいないといけないわけでもないので、応援するために、多少テントを離れても問題になるわけではなかった。だがら出入りの回数も多くなる。
相原さんは、凛子が頷くと、少し迷った様子を見せてから聞いた。
「そちらに昨年の卒業生はいらっしゃいました?」
「昨年の?いいえ。テントへの出入りは見ていないわ」
「…さようでございますの」
相原さんの声のトーンが、少し落ちたように感じた。
平日だから、誰かが去年の卒業生が来かもしれないなどと思うとは考えていなかったが、そんなことはわざわざ言わない。
おそらくそれぐらいのことは、彼女もわかっているはずだ。
それでも、なぜか気落ちしたような様子に、凛子は気になって尋ねた。
「どなたかお探しでした?」
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