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第三章 5月‐結
お姉さま、体育祭の昼食です! 2 ~相原花蓮~
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もしあの人が体育祭に来てるなら、お招きして少しでも賞味して頂きたかったんですけれど、仕方ありませんわね。
昨年の懐かしい思い出を思い返して、小さくため息をつく。
大きな期待をしていたわけではなかったので、諦めきれない程のことではないが、少々切ない。
昨年の体育祭での出来事が、相原花蓮には良くも悪くも衝撃的に残っているのだ。
部対抗リレーでもメインの選手となっている南組の生徒が、競技を終えて昼食へと流れてくるまでのあと僅かな時間、良い方の記憶でもたどろうかと思っていた時。
悪い方の記憶を引き出す声が、無遠慮に聞こえてきた。
「おお、美味そう」
背中から、艶があり良く響く音。
因縁のある体育祭で、今年はその存在がいないのだから、悪夢のような記憶を呼び起こすことはなかったはずなのに。
この声は。
花蓮は沸き上がるような苛立ちを抑えきれず、震えを感じながら振り返った。
案の定、そこには岬紫乃舞が立っている。重箱が広げられたテーブルから、まさに今、つまみ食いをしようとしている所だ。
「なにをしていますの!?」
「おや、ごきげんよう、花蓮。なに?ここはあんたの組だったの?」
余裕の笑みで手を止めて、間延びしたような言い方で。
しかし花蓮は知っている。瞬間的に相手を一番揶揄える言い方を選べるのだ、この相手は。
「どうして、ここにいるんですの?」
卒業生が体育祭に来るかも知れないという話は聞いていたのだが、唐突のことを受け入れることが出来ずに花蓮は声を尖らせた。
愛らしい顔の分、中々迫力がある。
だが相手は岬紫乃舞だ。特に気にしたようすもなく、ニヤリと笑った。
花蓮とは反対側の、こちらの様子を伺うように見守る後ろの生徒達を振り返り、愛想を振りまくように手を振る。
岬紫乃舞はこの間と違い、青のワンピースにカーディガン姿。
長い髪も大きなバレッタで止めて、どこか上品な美しいたたずまいである。
元々派手で目立つ女性で、ファンも多い。
手を振られれば、好意的としか思えない悲鳴が上がり、手を振り返す生徒も一人二人ではない。
「紫乃舞さま、お召し上がりになりますか?」
あっという間に炊き出し班の中から声を掛ける生徒が出てしまう。
「うん、召し上がる召し上がる」
「馬鹿なことを言わないで下さいます?!これは南組のための炊き出しです。どうして卒業生のあなたが一番に召し上がりますの!」
「え~人徳かなあ?」
差し出された箸と皿を全く遠慮することなく受け取ると、品定めするように重箱の中身を素早く一通り眺めて、花蓮が阻止に走る前に、おはぎを一つ取る。
「うわ、体育祭というのにおはぎなんて持ち込んで。これ食べて素早く走れるの?体育祭クラッシャーじゃないのさ。まさか朝作ったの?」
「はい。おはぎは固くなってしまっては味が落ちますので」
炊き出し班リーダーの花蓮が怒り心頭にもかかわらず、周りの生徒は突然現れた麗しの卒業生の虜である。
例え相手が、メニューに対する毒を吐いて気にも留めない。
そもそも岬紫乃舞といえば、どこかマイペースの型破りが売りなので余計だろう。
しかし箸使いはどこか品よく、紫乃舞はおはぎをサッと口に運んだ。
「うん、美味しい。上品な味付けだねえ。これ、作ったのだあれ?」
満足そうに微笑んで、さっと手を上げた生徒達を見つけると、紫乃舞はよしよしとご褒美のように頭を撫でた。
花蓮もその一人ではあるが、勿論手は上げない。
殺気の籠った目線を紫乃舞に送り、不満を訴えている。
「この私が美味しいと満足したんだから、自信を持っていいよ。ねえ、花蓮」
揶揄うように目線を送る紫乃舞は、花蓮もおはぎを作った一人と分かっている様子だ。
昨年の懐かしい思い出を思い返して、小さくため息をつく。
大きな期待をしていたわけではなかったので、諦めきれない程のことではないが、少々切ない。
昨年の体育祭での出来事が、相原花蓮には良くも悪くも衝撃的に残っているのだ。
部対抗リレーでもメインの選手となっている南組の生徒が、競技を終えて昼食へと流れてくるまでのあと僅かな時間、良い方の記憶でもたどろうかと思っていた時。
悪い方の記憶を引き出す声が、無遠慮に聞こえてきた。
「おお、美味そう」
背中から、艶があり良く響く音。
因縁のある体育祭で、今年はその存在がいないのだから、悪夢のような記憶を呼び起こすことはなかったはずなのに。
この声は。
花蓮は沸き上がるような苛立ちを抑えきれず、震えを感じながら振り返った。
案の定、そこには岬紫乃舞が立っている。重箱が広げられたテーブルから、まさに今、つまみ食いをしようとしている所だ。
「なにをしていますの!?」
「おや、ごきげんよう、花蓮。なに?ここはあんたの組だったの?」
余裕の笑みで手を止めて、間延びしたような言い方で。
しかし花蓮は知っている。瞬間的に相手を一番揶揄える言い方を選べるのだ、この相手は。
「どうして、ここにいるんですの?」
卒業生が体育祭に来るかも知れないという話は聞いていたのだが、唐突のことを受け入れることが出来ずに花蓮は声を尖らせた。
愛らしい顔の分、中々迫力がある。
だが相手は岬紫乃舞だ。特に気にしたようすもなく、ニヤリと笑った。
花蓮とは反対側の、こちらの様子を伺うように見守る後ろの生徒達を振り返り、愛想を振りまくように手を振る。
岬紫乃舞はこの間と違い、青のワンピースにカーディガン姿。
長い髪も大きなバレッタで止めて、どこか上品な美しいたたずまいである。
元々派手で目立つ女性で、ファンも多い。
手を振られれば、好意的としか思えない悲鳴が上がり、手を振り返す生徒も一人二人ではない。
「紫乃舞さま、お召し上がりになりますか?」
あっという間に炊き出し班の中から声を掛ける生徒が出てしまう。
「うん、召し上がる召し上がる」
「馬鹿なことを言わないで下さいます?!これは南組のための炊き出しです。どうして卒業生のあなたが一番に召し上がりますの!」
「え~人徳かなあ?」
差し出された箸と皿を全く遠慮することなく受け取ると、品定めするように重箱の中身を素早く一通り眺めて、花蓮が阻止に走る前に、おはぎを一つ取る。
「うわ、体育祭というのにおはぎなんて持ち込んで。これ食べて素早く走れるの?体育祭クラッシャーじゃないのさ。まさか朝作ったの?」
「はい。おはぎは固くなってしまっては味が落ちますので」
炊き出し班リーダーの花蓮が怒り心頭にもかかわらず、周りの生徒は突然現れた麗しの卒業生の虜である。
例え相手が、メニューに対する毒を吐いて気にも留めない。
そもそも岬紫乃舞といえば、どこかマイペースの型破りが売りなので余計だろう。
しかし箸使いはどこか品よく、紫乃舞はおはぎをサッと口に運んだ。
「うん、美味しい。上品な味付けだねえ。これ、作ったのだあれ?」
満足そうに微笑んで、さっと手を上げた生徒達を見つけると、紫乃舞はよしよしとご褒美のように頭を撫でた。
花蓮もその一人ではあるが、勿論手は上げない。
殺気の籠った目線を紫乃舞に送り、不満を訴えている。
「この私が美味しいと満足したんだから、自信を持っていいよ。ねえ、花蓮」
揶揄うように目線を送る紫乃舞は、花蓮もおはぎを作った一人と分かっている様子だ。
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