拝啓、お姉さまへ

一華

文字の大きさ
226 / 282
第三章 5月‐結

お姉さま、借り物競争はご一緒に 11 ~東郷千沙、スタートを切る~

しおりを挟む
東郷千紗は、スタート地点に立つと、前を睨むように見つめた。
先を急ぐ必要はない。確実に歩を進めることが重要だ。
最終何位でも構わないのだ。狙いは小鳥遊柚鈴を連れてゴールすること。ただ、それだけなのだから。

1年生の借り物競争にて、小鳥遊柚鈴が前年度の生徒会長と一緒にゴールしたのは千紗にとって確かに驚きだった。
苗字が同じだから、何か感じるところでもあったのだろうか?関係者だとは考えられない。
もしそうであるならば、噂があってもおかしくない。
千紗が小鳥遊柚鈴に興味を持ってから今日まで、周りにその話をしてもそんな話どころか彼女の存在すら殆どの同級生が知らない様子だった。
前生徒会長といえば、千紗の助言者である萩原翔子も生徒会メンバー出会った頃にお世話になった相手でもあり、一目置かざる得ない人物ではある。

しかし2人には繋がりはない。そして小鳥遊志奈先輩は、現在在校生ではないのだから、なんの問題ないはすだ。
むしろ誰よりも助言者制度の成立に力を入れていた人物であった。きっと小鳥遊柚鈴にも助言者を作るように促しているだろう。
案外、既に小鳥遊柚鈴もその気になっているかもしれない。
そうであれば、なによりである。

助言者を望むのであれば。
東組の生徒、しかも特待生が何よりも重視しべき成績向上という目標に置いて、その苦楽を共にし、助けになるのは東組の生徒以外はあり得ない。
他の組の生徒では、なにかと問題が起こることは、現生徒会長である長谷川凛子が証明している。
小鳥遊柚鈴は最初こそ千紗の行動が強引に思え、あまり乗り気にはならなかったかもしれないが、正解に気づけば経緯への反省もするはずだ。

助言者になれる人物が、その正解へと導くことは当然の役割であり、今回彼女の選択について自分が間違いを正すことが出来れば、当然自分こそが彼女の助言者となるべきということなのだ。

小鳥遊柚鈴はきっと、そのことに気づいけば今までの態度を反省するだろう。
そしてその時は、気にすることはないといってあげよう。
単に役割を果たしただけなのだから。
ペアとして当然のことだ。
千紗だって何度となく過ちを犯し、それを助言者である萩原翔子に正してもらった。
そうして次の世代に受け継いでいくことが大切なのだ。

スタートの合図がすれば、千紗は全力で小鳥遊柚鈴に向かって走り出す。
必ず捕まえて、ペアの関係をスタートさせる。

千紗の一年生の終わりに、生徒会に残留しないことを決めた萩原翔子は言った。
『生徒会でやることは終わったわ。3年での仕事は、勉強とあなたの助言者としての役割だけで充分』
その言葉は千紗の中に残っている。
本当なら生徒会会長であってもおかしくない人だった。
だが生徒会長は、誰ともペアを組むことが出来ない。
自分とのペアあることを選んだも言える助言者の言葉は、千紗に大きな決意をさせていた。

私はきちんと成長する。
そのために一日も早く、メンティになるべき相手を見つけ、ペアを持つ。
そして立派に相手を指導する姿を萩原翔子に見せる。

そうすればきっとお姉さまは、自分の決断が間違ってなかったと喜んでくれるに違いないのだ。
東郷千紗は決めていた。
自分の全てを賭けて、お姉さまの正しさを証明していくことを。

2組目の生徒が、題目の相手を連れてとうとうゴールをした。
体育祭実行委員が、千紗を含む3組目のメンバーに「位置について」と声を掛けた。

小鳥遊柚鈴の顔が浮かんだ。
東組の特待生らしく真面目そうであった。寮生というからには、親元から離れ不安もあるだろう。
助言者制度という聞きなれない制度に馴染めない様子だった彼女を思い出すと決意は新たにされた。

必ず自分のメンティにしよう。
そしてそれが正解だったと言わせてやろう。
それが助言者制度の、そして萩原翔子の家系を繋ぐということだ。
千紗に迷うところは1つもなかった。

『頑張りなさい』

萩原翔子はそう言ってくれた。
だから、頑張る。
そう心を固めて、千紗は合図と共に、借り物競争のスタートを切った。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

目の前で始まった断罪イベントが理不尽すぎたので口出ししたら巻き込まれた結果、何故か王子から求婚されました

歌龍吟伶
恋愛
私、ティーリャ。王都学校の二年生。 卒業生を送る会が終わった瞬間に先輩が婚約破棄の断罪イベントを始めた。 理不尽すぎてイライラしたから口を挟んだら、お前も同罪だ!って謎のトバッチリ…マジないわー。 …と思ったら何故か王子様に気に入られちゃってプロポーズされたお話。 全二話で完結します、予約投稿済み

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

熟女教師に何度も迫られて…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
二度と味わえない体験をした実話中心のショート・ショート集です

処理中です...