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第三章 5月‐結
お姉さま、借り物競争はご一緒に 13
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人込みを走り抜けながら。
東郷先輩がそのお友達の人達の声に気付くまでの時間のロスのせいか、それとも素早く逃げ出したのが吉と出たのか。
追いかけてくる人の気配はひとまず感じないまま、5組目のスタートの合図が聞こえた。
ああ、なんとかここまで来たーー!
柚鈴は、心の中で叫びつつ泣きそうな気持ちになるが、グラウンドでは相変わらず薫と前田先輩の追いかけっこが行われている。
どこに走っても、二人への歓声が聞こえてくるのだ。
これ、二人の為に延長タイムになったりしないよね?
是非とも薫と柚鈴自身の為に、そんなことにならないで欲しいものだ。
ところで東郷先輩は一体どこにいるんだろう。
そんな思いで人影にまみれて辺りを見回していると、思いも掛けず、間近から柚鈴は肩を掴まれた。
「ねえ、あなた」
多少息を切らせている相手は体操服から3年生と分かる。フレームのラインがはっきりとした眼鏡をしている真面目そうな人だ。
ハチマキの色は赤。
東郷千敗と同じ赤、だ。
誰もついて来てないと思っていたが、赤組の待機場所から追ってきたのだろうか。
息を切らせているということはそうなのかも知れないと柚鈴は思った。
しかし、お題の相手である生徒を、他の誰かが引き止めるのはルール違反の筈だ。
え?なんで?どうしたの?
肩を掴まれた理由が分からないが緊張を走らせないわけにはいかなかった。
「あの、なんでしょうか…?」
「あなた、どうして?どうして会長と…小鳥遊志奈さんと借り物競争で走ったの?」
「え?」
「小鳥遊志奈さんと、どういう関係なの?」
急に聞かれた質問に、柚鈴は息を飲んだ。
どういう、関係。
確かに3年生であれば、柚鈴のことは知らなくても、志奈さんのことは当然知っているはずだ。
先ほど借り物競争で志奈さんと走っていた見知らぬ1年生を見かけて引き止めたとしても不思議ではなかった。
「不躾にごめんなさい。どうしても聞きたくて」
言葉に詰まった柚鈴に気遣うように、口調を少し和らげた。
だが柚鈴は見知らぬ人に問われて、急に具体的な事情を話せるほどの大らかな気質は持っていない。
しかし、ここまでストレートに聞かれて誤魔化せるほど、神経も太くなかった。
どうしよう、と視線を彷徨わせる。
どうすればいいんだろう。
と迷った、その時。
「小鳥遊柚鈴!見つけたわよ!」
観客を背に上手く隠れていたつもりだったが、その隙間から見つけたのだろう。
東郷先輩の声が聞こえて、柚鈴ははっとした。
すぐにでも逃げ出したいが、しっかりと3年生に捕まったままで動けない。
「小鳥遊…?」
柚鈴を捕まえている相手は、その名前を復唱した。
「すみません!離してください。私、逃げなきゃいけないんです!」
今にも観客をかき分けて追ってくる東郷先輩に逃げ腰になりながら、柚鈴がその手を振りほどこうとするが上手くいかない。
東郷先輩の動きの方が早く、柚鈴を射程距離に捕らえた。
捕まる、と思って柚鈴は目をつぶった。
だが。
東郷先輩に捕まえられる感触はしないまま、妙な間があった。
…?
意味が分からずに目を開けると、東郷先輩はまじまじと見ている。
柚鈴ではない。
柚鈴を掴んでいる相手をだ。
一体どうしたのかと怪訝そうに伺うと、東郷先輩はさも驚いたように口を開いた。
「お、お姉さま。何をされているんですか?」
お姉さま?
東郷先輩の言葉に、柚鈴は自然と視線を3年生の方に向けた。
東郷千沙先輩のお姉さま、ということは。
つまり、この人は。
柚鈴は、遥先輩との会話を呼び起こす。
3年東組、荻原翔子。
昨年度の生徒会メンバーの一人。
現生徒会会長である長谷川凛子先輩と不仲と噂され、柚鈴をメンティにしようと全力で走って来た東郷先輩の助言者、その人だったのだ。
東郷先輩がそのお友達の人達の声に気付くまでの時間のロスのせいか、それとも素早く逃げ出したのが吉と出たのか。
追いかけてくる人の気配はひとまず感じないまま、5組目のスタートの合図が聞こえた。
ああ、なんとかここまで来たーー!
柚鈴は、心の中で叫びつつ泣きそうな気持ちになるが、グラウンドでは相変わらず薫と前田先輩の追いかけっこが行われている。
どこに走っても、二人への歓声が聞こえてくるのだ。
これ、二人の為に延長タイムになったりしないよね?
是非とも薫と柚鈴自身の為に、そんなことにならないで欲しいものだ。
ところで東郷先輩は一体どこにいるんだろう。
そんな思いで人影にまみれて辺りを見回していると、思いも掛けず、間近から柚鈴は肩を掴まれた。
「ねえ、あなた」
多少息を切らせている相手は体操服から3年生と分かる。フレームのラインがはっきりとした眼鏡をしている真面目そうな人だ。
ハチマキの色は赤。
東郷千敗と同じ赤、だ。
誰もついて来てないと思っていたが、赤組の待機場所から追ってきたのだろうか。
息を切らせているということはそうなのかも知れないと柚鈴は思った。
しかし、お題の相手である生徒を、他の誰かが引き止めるのはルール違反の筈だ。
え?なんで?どうしたの?
肩を掴まれた理由が分からないが緊張を走らせないわけにはいかなかった。
「あの、なんでしょうか…?」
「あなた、どうして?どうして会長と…小鳥遊志奈さんと借り物競争で走ったの?」
「え?」
「小鳥遊志奈さんと、どういう関係なの?」
急に聞かれた質問に、柚鈴は息を飲んだ。
どういう、関係。
確かに3年生であれば、柚鈴のことは知らなくても、志奈さんのことは当然知っているはずだ。
先ほど借り物競争で志奈さんと走っていた見知らぬ1年生を見かけて引き止めたとしても不思議ではなかった。
「不躾にごめんなさい。どうしても聞きたくて」
言葉に詰まった柚鈴に気遣うように、口調を少し和らげた。
だが柚鈴は見知らぬ人に問われて、急に具体的な事情を話せるほどの大らかな気質は持っていない。
しかし、ここまでストレートに聞かれて誤魔化せるほど、神経も太くなかった。
どうしよう、と視線を彷徨わせる。
どうすればいいんだろう。
と迷った、その時。
「小鳥遊柚鈴!見つけたわよ!」
観客を背に上手く隠れていたつもりだったが、その隙間から見つけたのだろう。
東郷先輩の声が聞こえて、柚鈴ははっとした。
すぐにでも逃げ出したいが、しっかりと3年生に捕まったままで動けない。
「小鳥遊…?」
柚鈴を捕まえている相手は、その名前を復唱した。
「すみません!離してください。私、逃げなきゃいけないんです!」
今にも観客をかき分けて追ってくる東郷先輩に逃げ腰になりながら、柚鈴がその手を振りほどこうとするが上手くいかない。
東郷先輩の動きの方が早く、柚鈴を射程距離に捕らえた。
捕まる、と思って柚鈴は目をつぶった。
だが。
東郷先輩に捕まえられる感触はしないまま、妙な間があった。
…?
意味が分からずに目を開けると、東郷先輩はまじまじと見ている。
柚鈴ではない。
柚鈴を掴んでいる相手をだ。
一体どうしたのかと怪訝そうに伺うと、東郷先輩はさも驚いたように口を開いた。
「お、お姉さま。何をされているんですか?」
お姉さま?
東郷先輩の言葉に、柚鈴は自然と視線を3年生の方に向けた。
東郷千沙先輩のお姉さま、ということは。
つまり、この人は。
柚鈴は、遥先輩との会話を呼び起こす。
3年東組、荻原翔子。
昨年度の生徒会メンバーの一人。
現生徒会会長である長谷川凛子先輩と不仲と噂され、柚鈴をメンティにしようと全力で走って来た東郷先輩の助言者、その人だったのだ。
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