拝啓、お姉さまへ

一華

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第三章 5月‐結

お姉さま、勝負です 3

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柚鈴が白組の待機場所に戻ると、明智絵里がすぐに気づいてくれた。
先程の志奈さんの話の後だからだろう。ちらちらと柚鈴の方を見る生徒も数名いて少々落ち着かないが、話しかけてくる気配はない。
組対抗リレーはすでに2番走者に入っているから、みんなそれどころではないのだろう。
「ご苦労様」
絵里の言葉に、柚鈴は苦笑した。絵里なりの気遣いの言葉なのだろう。
それから、白組の待機場所に対して持っていた心配事の確認をする。
「遥先輩、どこかな?」
「市原遥先輩は、組対抗リレーの応援で忙しそうよ」

そういって指さす方向は、組対抗リレー最後のゴール前になる場所だ。
確かに遥先輩が白組の旗を持って、リレーを気合の入った様子で応援している。

「うわ、やる気だね」
柚鈴は思わずそう呟いた。
この場所にいなくて助かったとも、少し思ったりする。

「白組の出場選手が変わったりして、バタバタしたみたい」
「え?そうなの?」
「借り物競走で、幸さんと走った白組の選手がいたでしょう?沢城先輩。あの方、本当は組対抗リレーに出る予定だったのよ」
「沢城先輩が?」
「そう。1番走者だったそうよ。急遽代わってもらったみたいで、白組は順番も総入れ替えになったみたい」

沢城先輩が、急遽交代…
なんだろう。その言葉に、妙に自分の責任を感じる所があるのだが、気のせいだろうか?

…なんにせよ。あの俊足の沢城先輩が交代とあっては、ますます組対抗リレーにて白組の勝利はなさそうだ。

志奈さん、ごめんなさい。
いや、賭けているのだから思った通りで良かった、というべきなのかもしれない。
そんなことを考えている間にバトンはすでに3番走者へ。

黄組がトップ。2番手を赤組白組の順で競っている。
次の4番走者がアンカーきなる。
最終走者はそれぞれスタート地点で待機していて、そこには薫の姿も見えた。
柚鈴はもう一度、もうすぐバトンパスとなる3番走者の方に目をやって。

…ん?
今、なにか見たような気が…

妙な違和感を覚えて、視線を薫に戻した。
そのまま違和感の正体を探す。
目線の先には、薫が軽く体を伸ばしてから、スタートの位置へとスタンバイを始めてる。
勿論、現在トップを走る黄組のアンカーは先にスタンバイしている。

…えっと、あれ?

違和感の正体が視界に入った、と思った瞬間。
先頭を走っていた黄組が最終ランナーへとバトンパスが行われた。

すこし間を持って、赤組のバトンが薫に渡る。

柚鈴は思わず手を握りしめた。
走り出した薫の走りは、力強い。

薫、勝って!
心の中だけで叫んだ。

「高村さん、少し疲れてるわね」
絵里が隣で早口に言う。
確かにいつもに比べると、どこか精彩に欠ける。

それでようやく思い出した。
さっきの借り物競争で薫は、前田先輩に随分長い間追いかけられていた。
すっかり忘れていたが、随分疲れたのではないだろうか。
力強くはあるが午前の競技では確かにあった余裕を感じさせる走りではない。

それでも。
薫は最初のカーブで黄組のアンカーを抜き去る。
「やった!」
「柚鈴さん、これからよ」
絵里の言葉の意味が、柚鈴にはすぐに分からなかった。
黄組の選手の顔は、薫よりもさらに余裕がなさそうに感じるのだ。

「赤組の勝ちだよね」
柚鈴が言うと、絵里は言葉を失ったようにグラウンドを見ている。
他の生徒たちの歓声もすごい。

柚鈴はゴールに向かう薫を見た。
その時、その向こうに遥先輩の姿が見えた。
そしてその横に、中西花奏が立っているのも見えた。

あれ?花奏ちゃん?

なんで黄組の花奏が、白組の応援の中に、遥先輩の横に立っているのだろう。
そう疑問に思った瞬間。

高村薫の横を走っていた白組のハチマキをした選手が、一歩分大きく飛び出た。

え?あれって…
と思う瞬間。

ゴールに走者が流れ込んでいった。
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