246 / 282
第三章 5月‐結
お姉さま、勝負です! 10 ~姉は強欲に~
しおりを挟む
「じゃあ、紫乃舞さん。あなたでしょう?」
「ぇえ?」
岬紫乃舞はわざとらしく驚いたような顔をしてから、ニヤリと笑った。
「私はただ、たまたまうちの料亭にいらした同窓会会長殿に、ちょっとご挨拶しただけだよ。いやあ、まさかそれが原因で、講師が急に休む気になったとは思わないけどね」
しらじらしい態度に、真美子は目を細めた。
それが原因としか思えないではないか、と。
しかし、どんなご挨拶をしたら、こんな風に休講に出来ると言うのだろう。
それはどのように考えても真美子には思いつくことはない流れだ。
小鳥遊志奈と岬紫乃舞。
真美子には理解しがたいことばかりするこの二人は、何故か同窓会会長である御仁とその代理人を務めることのある令嬢に一目置かれている。
恐らく紫乃舞がやったようなことは、方法は多少違えど志奈もやってのれるだろうし、志奈であれば紫乃舞がどのような言葉を使ったか想像もつくのではないかと思えた。
もう少し穿った見方をすれば。
志奈は、紫乃舞が動くことを理解しているからこそ、自分では何もしなかったのではないだろうか、とさえ思う。
真美子が怒ることはしない。
そんな機嫌を取るような言い方をしながら、結局物事が思い通りにいくことを知っている。
そういった性質の悪いところがあるのだろうと、どこか確信しているのだ。
真美子の視線に、紫乃舞はクスクスと笑ってから肩を竦めてみせた。
「本当に大したことはしていないさ。ただ、志奈がいなくなってから、高等部は退屈だって仰っていたから、自分で急に思いついたんじゃないのかね」
「いくらなんでもそれは無理があるわ。それに高等部からいなくなったっていっても、まだ数か月しかたってないわ」
「それだけ楽しい時間を過ごされてたってことだろう?まあ、おかげで真美子サンが気にされていたような形で私は大学をサボらず済んだし、志奈も体育祭に参加することが出来、そして同窓会会長殿も久々に楽しい時間でご機嫌。生徒会メンバーも大助かりってね」
あくまでも自分は白、もしくはグレーといった体裁を保とうとする紫乃舞に、真美子はしらっとした気持ちのまま、一言わせてもらう。
「…紫乃舞さん。午前の授業も遅刻されてなかったかしら?」
「ああ、ちょっと同窓会長殿に差し入れるお弁当づくりが手間取ってね」
「……」
紫乃舞は悪びれもない。
…結局、今日は休講になると思っていたんじゃない。
いっても無駄であるが、目が口ほどに物を言うのだろう。
真美子の視線に、紫乃舞は口元を歪めた。
「その目、たまらないねえ。こんな風にじゃれあえるのも、今だけだと思うと切ないことで」
「あなたが言うと、全く本音に聞こえないわ」
「おやまあ。これでも真美子とは随分長い付き合いじゃないのさ。特別な感情が湧いていたって、何もおかしいことじゃないだろう?」
「あら。特別な感情を持つのに必要なのは時間だけじゃないわ」
聞き捨てならない、とばかりに志奈は口を挟んだ。
「私は二人に会ったのは高等部に入ってからの新参者ですけど、負けるつもりはないもの」
「負けるって、なんの話をしているのよ」
真美子が思わず聞き返すと、志奈はあっさりと答える。
「友情の話でしょう?」
「……」
真美子は絶句した。
すると、ニヤリと笑った紫乃舞が楽しそうに乗ってくる。
「そうそ。私たちお友達でしょう」
「勘弁してちょうだい」
頭をかかえた真美子を、志奈はにっこり笑って見つめる。
それからふと寂しそうな光を宿してから、何事もなかったようにグラウンドを見つめる。
「さあ、どんな無茶なお願いごとをしようかしら」
弾んだ声が歌うように漏れた。
『賭けになんて乗るんじゃなかった』
どうせならそんな風に後悔する柚鈴の姿が見たい。
機嫌よく悩む志奈の笑顔で5月の体育祭は終了していくのである。
「ぇえ?」
岬紫乃舞はわざとらしく驚いたような顔をしてから、ニヤリと笑った。
「私はただ、たまたまうちの料亭にいらした同窓会会長殿に、ちょっとご挨拶しただけだよ。いやあ、まさかそれが原因で、講師が急に休む気になったとは思わないけどね」
しらじらしい態度に、真美子は目を細めた。
それが原因としか思えないではないか、と。
しかし、どんなご挨拶をしたら、こんな風に休講に出来ると言うのだろう。
それはどのように考えても真美子には思いつくことはない流れだ。
小鳥遊志奈と岬紫乃舞。
真美子には理解しがたいことばかりするこの二人は、何故か同窓会会長である御仁とその代理人を務めることのある令嬢に一目置かれている。
恐らく紫乃舞がやったようなことは、方法は多少違えど志奈もやってのれるだろうし、志奈であれば紫乃舞がどのような言葉を使ったか想像もつくのではないかと思えた。
もう少し穿った見方をすれば。
志奈は、紫乃舞が動くことを理解しているからこそ、自分では何もしなかったのではないだろうか、とさえ思う。
真美子が怒ることはしない。
そんな機嫌を取るような言い方をしながら、結局物事が思い通りにいくことを知っている。
そういった性質の悪いところがあるのだろうと、どこか確信しているのだ。
真美子の視線に、紫乃舞はクスクスと笑ってから肩を竦めてみせた。
「本当に大したことはしていないさ。ただ、志奈がいなくなってから、高等部は退屈だって仰っていたから、自分で急に思いついたんじゃないのかね」
「いくらなんでもそれは無理があるわ。それに高等部からいなくなったっていっても、まだ数か月しかたってないわ」
「それだけ楽しい時間を過ごされてたってことだろう?まあ、おかげで真美子サンが気にされていたような形で私は大学をサボらず済んだし、志奈も体育祭に参加することが出来、そして同窓会会長殿も久々に楽しい時間でご機嫌。生徒会メンバーも大助かりってね」
あくまでも自分は白、もしくはグレーといった体裁を保とうとする紫乃舞に、真美子はしらっとした気持ちのまま、一言わせてもらう。
「…紫乃舞さん。午前の授業も遅刻されてなかったかしら?」
「ああ、ちょっと同窓会長殿に差し入れるお弁当づくりが手間取ってね」
「……」
紫乃舞は悪びれもない。
…結局、今日は休講になると思っていたんじゃない。
いっても無駄であるが、目が口ほどに物を言うのだろう。
真美子の視線に、紫乃舞は口元を歪めた。
「その目、たまらないねえ。こんな風にじゃれあえるのも、今だけだと思うと切ないことで」
「あなたが言うと、全く本音に聞こえないわ」
「おやまあ。これでも真美子とは随分長い付き合いじゃないのさ。特別な感情が湧いていたって、何もおかしいことじゃないだろう?」
「あら。特別な感情を持つのに必要なのは時間だけじゃないわ」
聞き捨てならない、とばかりに志奈は口を挟んだ。
「私は二人に会ったのは高等部に入ってからの新参者ですけど、負けるつもりはないもの」
「負けるって、なんの話をしているのよ」
真美子が思わず聞き返すと、志奈はあっさりと答える。
「友情の話でしょう?」
「……」
真美子は絶句した。
すると、ニヤリと笑った紫乃舞が楽しそうに乗ってくる。
「そうそ。私たちお友達でしょう」
「勘弁してちょうだい」
頭をかかえた真美子を、志奈はにっこり笑って見つめる。
それからふと寂しそうな光を宿してから、何事もなかったようにグラウンドを見つめる。
「さあ、どんな無茶なお願いごとをしようかしら」
弾んだ声が歌うように漏れた。
『賭けになんて乗るんじゃなかった』
どうせならそんな風に後悔する柚鈴の姿が見たい。
機嫌よく悩む志奈の笑顔で5月の体育祭は終了していくのである。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
目の前で始まった断罪イベントが理不尽すぎたので口出ししたら巻き込まれた結果、何故か王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
私、ティーリャ。王都学校の二年生。
卒業生を送る会が終わった瞬間に先輩が婚約破棄の断罪イベントを始めた。
理不尽すぎてイライラしたから口を挟んだら、お前も同罪だ!って謎のトバッチリ…マジないわー。
…と思ったら何故か王子様に気に入られちゃってプロポーズされたお話。
全二話で完結します、予約投稿済み
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる