拝啓、お姉さまへ

一華

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第四章 6月

体育祭のあくる日に 5

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自分が書いたものが、凛子先輩にそんな風に衝撃を与えてることなど知らずに。

春野幸はご機嫌で、寮の近くにある喫茶店に入った所だった。
なんと今日は、幸が大好きな遠い親戚である春野香苗のお誘いがあったのだ。
具体的には、幸の祖父の従兄が、香苗さんのお爺さん。
いつも明るく優しく穏やかな香苗さんは、プリザーブドフラワーのサロンを経営している自立した女性でもあり、幸の憧れ、人生の目標と言ってもいい。
常葉学園への進学を選ぶきっかけも、香苗さんが卒業した学校だったからと言うくらいだ。
常葉学園に助言者メンター制度が出来る前、つまり姉妹制度があった頃に在学していた香苗さんは、幸から今の常葉学園の様子を聞くのを楽しみにしてくれていた。
いつもは幸が香苗さんのサロンに遊びにいくのだが、今日は会わせたい人がいる、という話で、この喫茶店で待ち合わせということになったのだ。

「あ、幸ちゃん。こっちよ」
優しい声が聞こえ、幸を先に見つけてくれて手を振ってくれた香苗さんの方を、幸は目を輝かせてみた。
春の日差しを思わせるような温かな視線と浮かべた笑みに、幸は犬ころ状態だ。
「香苗さんっ、お久しぶりです」
しっぽふりふりといった空気で近づくと、香苗さんの向かいにも1人座っていて、こちらを向いた。
連れがいる、とは聞いていたのだが、幸はその人を見ると思わず息を飲んだ。

き、き、綺麗な人…。

柚鈴の義姉である志奈さんを見たときも、美人さんだと思ったが、こちらはまた種類が違う。
さらりと流れるよな真っ直ぐ整った色素の薄い髪と肌。フランス人形の様に、少し垂れ目気味の大きな瞳。長い睫毛で物憂げに見える表情、北欧あたりの子供の様な印象を受ける。純粋な日本人なのだろうか?
まるで昔話に出てくるお姫様みたいだ、と思った。
細身の体もその可憐な印象を増して見せ、近づきがたい神秘的なものを感じてしまう。
綺麗な瞳に吸い込まれそうな錯覚を受けながら、幸は慌てて挨拶をした。

「は、はじめまして。香苗さんの遠縁の春野幸です」
「ごきげんよう、高宮麗たかみやれい、と申します」
ふわり微笑んだその人のことを香苗さんが紹介してくれる。
「私が常葉学園高等部に通っていた頃の先輩の方なの。今は家系というのかしら?姉妹制度で私のお姉さまのお姉さまだった方なのよ」
お姉さまのお姉さま。
資格を持った助言者メンターだけがペアを持つ今とは違い、お互いの気持ちが通じれば誰でも姉妹というペアを持てた常葉学園がお嬢様校として名高かった頃の繋がり。
話にしか聞いたことのない存在を、しかも大好きな香苗さんの家系と聞いて、幸は言葉を失う。

さ、流石、香苗さん…こんな人が家系にいらっしゃるなんて。
想像していなかった展開。
いかにも育ちの良さそうな、品の良い女性に、思わず動揺してしまうのは仕方ないことにしてほしい。

高宮れいと名乗って人は、どこか俗世離れした透明感のある笑みを浮かべて、首を傾けるようにしてから口を開いた。
「突然ごめんなさい。香苗のご親戚の方が常葉学園高等部に通っていると聞いて、是非会ってみたいと前からお願いしていたの」
ごめんなさい、と口にはしているが、どこかご挨拶程度な言葉で、相手がそれを受け入れると分かっている雰囲気さえある。
幸もこんな人に本心で謝られても困る。
思わず愛想笑いを浮かべて、こくこくと首を縦に振った。

「え、あ、そうなんですか。も、勿論問題ありません!」
「今では姉妹制度もなくて、助言者制度に変わってしまったのでしょう?どんな感じなのか聞いてみたくって」
「は、はい!私は姉妹制度だった時のことも知りませんし、助言者もいないのでお役に立てるかわかりませんけど。それで良ければ、なんでもお話します!」
否、の言葉など思うこともなく、そう口走ると、相手から不思議そうな間があった。
助言者メンターがいない?」
何故か、そう口にして小首を傾げた。
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