251 / 282
第四章 6月
体育祭のあくる日に 5
しおりを挟む
自分が書いたものが、凛子先輩にそんな風に衝撃を与えてることなど知らずに。
春野幸はご機嫌で、寮の近くにある喫茶店に入った所だった。
なんと今日は、幸が大好きな遠い親戚である春野香苗のお誘いがあったのだ。
具体的には、幸の祖父の従兄が、香苗さんのお爺さん。
いつも明るく優しく穏やかな香苗さんは、プリザーブドフラワーのサロンを経営している自立した女性でもあり、幸の憧れ、人生の目標と言ってもいい。
常葉学園への進学を選ぶきっかけも、香苗さんが卒業した学校だったからと言うくらいだ。
常葉学園に助言者制度が出来る前、つまり姉妹制度があった頃に在学していた香苗さんは、幸から今の常葉学園の様子を聞くのを楽しみにしてくれていた。
いつもは幸が香苗さんのサロンに遊びにいくのだが、今日は会わせたい人がいる、という話で、この喫茶店で待ち合わせということになったのだ。
「あ、幸ちゃん。こっちよ」
優しい声が聞こえ、幸を先に見つけてくれて手を振ってくれた香苗さんの方を、幸は目を輝かせてみた。
春の日差しを思わせるような温かな視線と浮かべた笑みに、幸は犬ころ状態だ。
「香苗さんっ、お久しぶりです」
しっぽふりふりといった空気で近づくと、香苗さんの向かいにも1人座っていて、こちらを向いた。
連れがいる、とは聞いていたのだが、幸はその人を見ると思わず息を飲んだ。
き、き、綺麗な人…。
柚鈴の義姉である志奈さんを見たときも、美人さんだと思ったが、こちらはまた種類が違う。
さらりと流れるよな真っ直ぐ整った色素の薄い髪と肌。フランス人形の様に、少し垂れ目気味の大きな瞳。長い睫毛で物憂げに見える表情、北欧あたりの子供の様な印象を受ける。純粋な日本人なのだろうか?
まるで昔話に出てくるお姫様みたいだ、と思った。
細身の体もその可憐な印象を増して見せ、近づきがたい神秘的なものを感じてしまう。
綺麗な瞳に吸い込まれそうな錯覚を受けながら、幸は慌てて挨拶をした。
「は、はじめまして。香苗さんの遠縁の春野幸です」
「ごきげんよう、高宮麗、と申します」
ふわり微笑んだその人のことを香苗さんが紹介してくれる。
「私が常葉学園高等部に通っていた頃の先輩の方なの。今は家系というのかしら?姉妹制度で私のお姉さまのお姉さまだった方なのよ」
お姉さまのお姉さま。
資格を持った助言者だけがペアを持つ今とは違い、お互いの気持ちが通じれば誰でも姉妹というペアを持てた常葉学園がお嬢様校として名高かった頃の繋がり。
話にしか聞いたことのない存在を、しかも大好きな香苗さんの家系と聞いて、幸は言葉を失う。
さ、流石、香苗さん…こんな人が家系にいらっしゃるなんて。
想像していなかった展開。
いかにも育ちの良さそうな、品の良い女性に、思わず動揺してしまうのは仕方ないことにしてほしい。
高宮麗と名乗って人は、どこか俗世離れした透明感のある笑みを浮かべて、首を傾けるようにしてから口を開いた。
「突然ごめんなさい。香苗のご親戚の方が常葉学園高等部に通っていると聞いて、是非会ってみたいと前からお願いしていたの」
ごめんなさい、と口にはしているが、どこかご挨拶程度な言葉で、相手がそれを受け入れると分かっている雰囲気さえある。
幸もこんな人に本心で謝られても困る。
思わず愛想笑いを浮かべて、こくこくと首を縦に振った。
「え、あ、そうなんですか。も、勿論問題ありません!」
「今では姉妹制度もなくて、助言者制度に変わってしまったのでしょう?どんな感じなのか聞いてみたくって」
「は、はい!私は姉妹制度だった時のことも知りませんし、助言者もいないのでお役に立てるかわかりませんけど。それで良ければ、なんでもお話します!」
否、の言葉など思うこともなく、そう口走ると、相手から不思議そうな間があった。
「助言者がいない?」
何故か、そう口にして小首を傾げた。
春野幸はご機嫌で、寮の近くにある喫茶店に入った所だった。
なんと今日は、幸が大好きな遠い親戚である春野香苗のお誘いがあったのだ。
具体的には、幸の祖父の従兄が、香苗さんのお爺さん。
いつも明るく優しく穏やかな香苗さんは、プリザーブドフラワーのサロンを経営している自立した女性でもあり、幸の憧れ、人生の目標と言ってもいい。
常葉学園への進学を選ぶきっかけも、香苗さんが卒業した学校だったからと言うくらいだ。
常葉学園に助言者制度が出来る前、つまり姉妹制度があった頃に在学していた香苗さんは、幸から今の常葉学園の様子を聞くのを楽しみにしてくれていた。
いつもは幸が香苗さんのサロンに遊びにいくのだが、今日は会わせたい人がいる、という話で、この喫茶店で待ち合わせということになったのだ。
「あ、幸ちゃん。こっちよ」
優しい声が聞こえ、幸を先に見つけてくれて手を振ってくれた香苗さんの方を、幸は目を輝かせてみた。
春の日差しを思わせるような温かな視線と浮かべた笑みに、幸は犬ころ状態だ。
「香苗さんっ、お久しぶりです」
しっぽふりふりといった空気で近づくと、香苗さんの向かいにも1人座っていて、こちらを向いた。
連れがいる、とは聞いていたのだが、幸はその人を見ると思わず息を飲んだ。
き、き、綺麗な人…。
柚鈴の義姉である志奈さんを見たときも、美人さんだと思ったが、こちらはまた種類が違う。
さらりと流れるよな真っ直ぐ整った色素の薄い髪と肌。フランス人形の様に、少し垂れ目気味の大きな瞳。長い睫毛で物憂げに見える表情、北欧あたりの子供の様な印象を受ける。純粋な日本人なのだろうか?
まるで昔話に出てくるお姫様みたいだ、と思った。
細身の体もその可憐な印象を増して見せ、近づきがたい神秘的なものを感じてしまう。
綺麗な瞳に吸い込まれそうな錯覚を受けながら、幸は慌てて挨拶をした。
「は、はじめまして。香苗さんの遠縁の春野幸です」
「ごきげんよう、高宮麗、と申します」
ふわり微笑んだその人のことを香苗さんが紹介してくれる。
「私が常葉学園高等部に通っていた頃の先輩の方なの。今は家系というのかしら?姉妹制度で私のお姉さまのお姉さまだった方なのよ」
お姉さまのお姉さま。
資格を持った助言者だけがペアを持つ今とは違い、お互いの気持ちが通じれば誰でも姉妹というペアを持てた常葉学園がお嬢様校として名高かった頃の繋がり。
話にしか聞いたことのない存在を、しかも大好きな香苗さんの家系と聞いて、幸は言葉を失う。
さ、流石、香苗さん…こんな人が家系にいらっしゃるなんて。
想像していなかった展開。
いかにも育ちの良さそうな、品の良い女性に、思わず動揺してしまうのは仕方ないことにしてほしい。
高宮麗と名乗って人は、どこか俗世離れした透明感のある笑みを浮かべて、首を傾けるようにしてから口を開いた。
「突然ごめんなさい。香苗のご親戚の方が常葉学園高等部に通っていると聞いて、是非会ってみたいと前からお願いしていたの」
ごめんなさい、と口にはしているが、どこかご挨拶程度な言葉で、相手がそれを受け入れると分かっている雰囲気さえある。
幸もこんな人に本心で謝られても困る。
思わず愛想笑いを浮かべて、こくこくと首を縦に振った。
「え、あ、そうなんですか。も、勿論問題ありません!」
「今では姉妹制度もなくて、助言者制度に変わってしまったのでしょう?どんな感じなのか聞いてみたくって」
「は、はい!私は姉妹制度だった時のことも知りませんし、助言者もいないのでお役に立てるかわかりませんけど。それで良ければ、なんでもお話します!」
否、の言葉など思うこともなく、そう口走ると、相手から不思議そうな間があった。
「助言者がいない?」
何故か、そう口にして小首を傾げた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
目の前で始まった断罪イベントが理不尽すぎたので口出ししたら巻き込まれた結果、何故か王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
私、ティーリャ。王都学校の二年生。
卒業生を送る会が終わった瞬間に先輩が婚約破棄の断罪イベントを始めた。
理不尽すぎてイライラしたから口を挟んだら、お前も同罪だ!って謎のトバッチリ…マジないわー。
…と思ったら何故か王子様に気に入られちゃってプロポーズされたお話。
全二話で完結します、予約投稿済み
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる