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第四章 6月
子羊の悩みはつきなくても 5
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薫が少年風、というのは妙に納得したくなるところであるが、そんなことを言いだしてはますます話がややこしくなるだろう。
そこはぐっと抑えて、言わぬが花だ。
「ちょっと幸ちゃん、部活のことで行き詰ってるんだよ。見逃してあげて」
「部活?」
「うん、大変なんだよ」
幸が頷いてため息をついた。
どこか耳の垂れた子犬のように見える幸に、薫は少し考えるようにしてから、仕方ないなと言った様子を見せた。
部活の楽しい薫なりに思うところがあったのかもしれない。
「最近忙しそうにしてるとは思ってたけど、文芸部ってそんなに大変な部活なのかね」
薫は少々疑わしそうに言いつつも、椅子に座る。
それからふと、気になったように口を開いた。
「そういえば幸、沢城先輩とはどうなったの?」
「どうなったって?」
幸がきょとんとすると、薫は苦笑して見せた。
「ペアになってないの?」
「え?申し込まれてないもん」
「は?」
薫は意味が分からないといった表情だ。
「体育祭の借り物競争に誘われたってことは、そういうことなんじゃないの?」
それは柚鈴もそう思う。
幸には言ってないが、おそらく沢城先輩が借り物競争で走ることにしたのは柚鈴の言葉がきっかけのはず。
とすれば、沢城先輩は申し込む気で行ったとしか思えなかった。
だが幸は、ううん?と首を傾げて、本当に少しもそんなことを考えていないという様子でにっこり笑った。
「違うと思うよ!?私は一言もペアになりたいなんて言われてないもん」
「言われなくてもそういうことなんじゃないの?」
「そうかな?言われなきゃわからないでしょう?」
「なんでわかんないの、って思うの?」
薫がぽんぽんと突っ込む言葉に、幸は一瞬怯んだ
それから耐えかねたように、大きな声で叫ぶ。
「だってだってだって!何も言われてないのに、逆になんて言えばいいの?『バッチ貰いにきました!』とでも尋ねにいけと?!」
柚鈴と薫は思わず顔を見合わせた。
よく分からないが、本当にそんな流れではないらしい。
まあ、確かに『バッチ貰いにきました!』はおかしい。
そうは思うが…
沢城先輩は間違いなくそのつもりだったと思うのだが…
柚鈴が思ったことは、薫も同じだったらしい。
「…どうしても幸がムードクラッシャーしてるとしか思えない」
ポツリと呟いた言葉が、まさに答えな気がして、曖昧に笑うしかなかった。
「え~??人を空気読めないみたいに言わないで~」
「柚鈴はどう思うよ」
悲壮感溢れる幸の声が漏れると、薫はパクパクと食事を進めつつ、柚鈴に話を振った。
ええと…
ほぼ薫と同じ意見ではあるのだが、助けを求めるような幸の目線に一瞬言葉に詰まる。
この場に相応しい切り返しを、と頭を悩ませつつ、言葉を選びとった。
「ええと…幸ちゃんは、沢城先輩とペアになりたい、ということでいいんだよね?」
「ほへ?」
「沢城先輩の気持ちも勿論大切だけど、幸ちゃんにその気があるのかないのかでも、随分その後が違ってくる気がするんだよね」
思ってもみなかった言葉だったのだろうか。
幸は柚鈴の言葉に動揺したように目線を彷徨わせた。
「…そ、そうだね」
「うん」
柚鈴は焦らせないように、短く頷く。
そういう方向では考えたことがなかったのか、幸は困惑したように言葉を途切れさせた。
そのまま沈黙が続き、幸の様子が気になりつつも柚鈴も食事を再開させる。
やがて幸も妙に押し黙ったまま食事を再開した。
空気を読んだのか、薫もそのまま黙って食事を終えたが、いつものようにすぐには部屋に帰らず、柚鈴と幸が食事を終えるまで待っていた。
食事を終了して。
そのまま黙って皆部屋に戻る気配で、柚鈴が立ち上がると。
幸は座ったままでぽつりと言った。
「小説、書き終わったら…沢城先輩とゆっくり話してみるね」
そういうと立ち上がり、柚鈴と薫ににっこり笑ってみせた。
そこはぐっと抑えて、言わぬが花だ。
「ちょっと幸ちゃん、部活のことで行き詰ってるんだよ。見逃してあげて」
「部活?」
「うん、大変なんだよ」
幸が頷いてため息をついた。
どこか耳の垂れた子犬のように見える幸に、薫は少し考えるようにしてから、仕方ないなと言った様子を見せた。
部活の楽しい薫なりに思うところがあったのかもしれない。
「最近忙しそうにしてるとは思ってたけど、文芸部ってそんなに大変な部活なのかね」
薫は少々疑わしそうに言いつつも、椅子に座る。
それからふと、気になったように口を開いた。
「そういえば幸、沢城先輩とはどうなったの?」
「どうなったって?」
幸がきょとんとすると、薫は苦笑して見せた。
「ペアになってないの?」
「え?申し込まれてないもん」
「は?」
薫は意味が分からないといった表情だ。
「体育祭の借り物競争に誘われたってことは、そういうことなんじゃないの?」
それは柚鈴もそう思う。
幸には言ってないが、おそらく沢城先輩が借り物競争で走ることにしたのは柚鈴の言葉がきっかけのはず。
とすれば、沢城先輩は申し込む気で行ったとしか思えなかった。
だが幸は、ううん?と首を傾げて、本当に少しもそんなことを考えていないという様子でにっこり笑った。
「違うと思うよ!?私は一言もペアになりたいなんて言われてないもん」
「言われなくてもそういうことなんじゃないの?」
「そうかな?言われなきゃわからないでしょう?」
「なんでわかんないの、って思うの?」
薫がぽんぽんと突っ込む言葉に、幸は一瞬怯んだ
それから耐えかねたように、大きな声で叫ぶ。
「だってだってだって!何も言われてないのに、逆になんて言えばいいの?『バッチ貰いにきました!』とでも尋ねにいけと?!」
柚鈴と薫は思わず顔を見合わせた。
よく分からないが、本当にそんな流れではないらしい。
まあ、確かに『バッチ貰いにきました!』はおかしい。
そうは思うが…
沢城先輩は間違いなくそのつもりだったと思うのだが…
柚鈴が思ったことは、薫も同じだったらしい。
「…どうしても幸がムードクラッシャーしてるとしか思えない」
ポツリと呟いた言葉が、まさに答えな気がして、曖昧に笑うしかなかった。
「え~??人を空気読めないみたいに言わないで~」
「柚鈴はどう思うよ」
悲壮感溢れる幸の声が漏れると、薫はパクパクと食事を進めつつ、柚鈴に話を振った。
ええと…
ほぼ薫と同じ意見ではあるのだが、助けを求めるような幸の目線に一瞬言葉に詰まる。
この場に相応しい切り返しを、と頭を悩ませつつ、言葉を選びとった。
「ええと…幸ちゃんは、沢城先輩とペアになりたい、ということでいいんだよね?」
「ほへ?」
「沢城先輩の気持ちも勿論大切だけど、幸ちゃんにその気があるのかないのかでも、随分その後が違ってくる気がするんだよね」
思ってもみなかった言葉だったのだろうか。
幸は柚鈴の言葉に動揺したように目線を彷徨わせた。
「…そ、そうだね」
「うん」
柚鈴は焦らせないように、短く頷く。
そういう方向では考えたことがなかったのか、幸は困惑したように言葉を途切れさせた。
そのまま沈黙が続き、幸の様子が気になりつつも柚鈴も食事を再開させる。
やがて幸も妙に押し黙ったまま食事を再開した。
空気を読んだのか、薫もそのまま黙って食事を終えたが、いつものようにすぐには部屋に帰らず、柚鈴と幸が食事を終えるまで待っていた。
食事を終了して。
そのまま黙って皆部屋に戻る気配で、柚鈴が立ち上がると。
幸は座ったままでぽつりと言った。
「小説、書き終わったら…沢城先輩とゆっくり話してみるね」
そういうと立ち上がり、柚鈴と薫ににっこり笑ってみせた。
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