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第四章 6月
子羊の悩みは尽きなくても 7
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「それにしても、生徒会の手伝いなんて。小鳥遊元生徒会長の痕跡でも感じたいの?」
恐らくは嫌味だろうが。
やれやれといった感じで東郷先輩から出た言葉は、柚鈴の中では妙に納得のいく響きがあった。
「…そうと言えば、そうかもしれません」
「…」
思わず肯定してしまうと、ようやく出た言葉に東郷先輩は一度目を見開いてから眉を顰めた。
それから柚鈴をじぃっと伺ってくる。
それが妙にもの言いたげな視線に思えて、緊張を与える。
「な、なんですか?」
「止めておいたほうが、いいんじゃないかしら」
「え?」
「そんなことお勧めはしないわ」
「どういうことですか?」
意味が分からずに聞き返した柚鈴に、東郷先輩は思いのほか真面目な顔を見せた。
それが柚鈴を心配しているようにも見えて、戸惑ってしまう。
「まだ、間に合うわ。止めておきなさい」
「止めるって何をですか?」
「生徒会のお手伝い。辞めれると思うわ」
「ええ!?」
「何も私がペアになるために言ってるわけじゃないわ。勿論、その気持ちもあるけど」
東郷先輩はさらりと本音を吐露して、そのまま何事もなかったように続ける。
「柚鈴さんがそんな気持ちで生徒会を手伝ったりしたら柚鈴さんが後悔することになるのではないかと思ってるのよ」
「後悔、ですか?」
「だって小鳥遊元生徒会長を姉として慕って、生徒会のお手伝いをするというんでしょう?」
「ええと、意味がよく分からないんですが。それはあの人が、生徒みんなのお姉さまだったからですか?」
訳のわからないまま柚鈴が聞き返すと、東郷先輩は小さく首を振った。
しかし理由までは一緒に口にしない。
却って言いよどんだ言葉の先が気になってしまう。
東郷先輩と言えば、どちらかと言えば物事をはっきり言いすぎる方だ。
その東郷先輩が、言いよどむなんて、よほどではないだろうか。
妙に嫌な物を感じてしまい、柚鈴は東郷先輩を見つめた。
その様子に気付いて、目の前で困ったようにため息をつかれた。
「…噂があるのよ」
「噂?」
柚鈴が聞き返すと東郷先輩は目線を彷徨わせた。
話すかどうか、迷っているという雰囲気で。
やがて、柚鈴の方を見た。決意を固めたようだった。
「お手伝いすることのなったのなら、どうせ耳に入ることだから言うわ」
「は、はい…」
「小鳥遊元生徒会長には特別な後輩がいたそうよ」
「え?」
「本当はメンティにしたかった。相思相愛の後輩よ」
「は…」
ふって湧いたような話に、柚鈴は目を丸くしてしまう。
あの、志奈さんが。
在学中にメンティにしたかった相手がいた?
言葉の意味には複雑な所など決してないのに、柚鈴は意味を中々呑み込めなかった。
「まあ相思相愛だった、という噂が一番有力とは言われているけど、どちらかの思慕がより強かったという噂だったりもあるから本当の所は分からないけれど。でも特別な関係であったというのが、一般的な認識なのよ。生徒会に関われば、当然そのことで柚鈴さんも悩むかもしれないわ」
悩むことになる。
思いがけず、東郷先輩の気遣いをうけ、柚鈴は戸惑いつつ確認する。
「それが噂じゃなくて、本当だからですか?」
「恐らく、ね。先日の体育祭の時の前生徒会長である小鳥遊先輩の言葉を聞けば、今は柚鈴さんとの関係を大切にしているのだろうとは思うけど。それでもあなたがあの人を慕って生徒会に関わろうとするのは、良い結果になるとわ思えないわ」
「ち、ちょっと待ってください」
柚鈴は、東郷先輩の言いたいことに気付いて、声を上げた。
さっきから生徒会に関わることで、柚鈴が傷つく、と繰り返されている。
そのことの意味にようやく気づいた。
「つまり、その噂の相手って。今、生徒会メンバーにいるってことですか?」
「そうよ」
あっさりと東郷先輩は頷いた。
それから答えも簡単に言葉にしてくれる。
「現生徒会会長である、長谷川凛子先輩がそうなのだから」
聞き間違えようのない言葉に、柚鈴は息を呑んだ。
恐らくは嫌味だろうが。
やれやれといった感じで東郷先輩から出た言葉は、柚鈴の中では妙に納得のいく響きがあった。
「…そうと言えば、そうかもしれません」
「…」
思わず肯定してしまうと、ようやく出た言葉に東郷先輩は一度目を見開いてから眉を顰めた。
それから柚鈴をじぃっと伺ってくる。
それが妙にもの言いたげな視線に思えて、緊張を与える。
「な、なんですか?」
「止めておいたほうが、いいんじゃないかしら」
「え?」
「そんなことお勧めはしないわ」
「どういうことですか?」
意味が分からずに聞き返した柚鈴に、東郷先輩は思いのほか真面目な顔を見せた。
それが柚鈴を心配しているようにも見えて、戸惑ってしまう。
「まだ、間に合うわ。止めておきなさい」
「止めるって何をですか?」
「生徒会のお手伝い。辞めれると思うわ」
「ええ!?」
「何も私がペアになるために言ってるわけじゃないわ。勿論、その気持ちもあるけど」
東郷先輩はさらりと本音を吐露して、そのまま何事もなかったように続ける。
「柚鈴さんがそんな気持ちで生徒会を手伝ったりしたら柚鈴さんが後悔することになるのではないかと思ってるのよ」
「後悔、ですか?」
「だって小鳥遊元生徒会長を姉として慕って、生徒会のお手伝いをするというんでしょう?」
「ええと、意味がよく分からないんですが。それはあの人が、生徒みんなのお姉さまだったからですか?」
訳のわからないまま柚鈴が聞き返すと、東郷先輩は小さく首を振った。
しかし理由までは一緒に口にしない。
却って言いよどんだ言葉の先が気になってしまう。
東郷先輩と言えば、どちらかと言えば物事をはっきり言いすぎる方だ。
その東郷先輩が、言いよどむなんて、よほどではないだろうか。
妙に嫌な物を感じてしまい、柚鈴は東郷先輩を見つめた。
その様子に気付いて、目の前で困ったようにため息をつかれた。
「…噂があるのよ」
「噂?」
柚鈴が聞き返すと東郷先輩は目線を彷徨わせた。
話すかどうか、迷っているという雰囲気で。
やがて、柚鈴の方を見た。決意を固めたようだった。
「お手伝いすることのなったのなら、どうせ耳に入ることだから言うわ」
「は、はい…」
「小鳥遊元生徒会長には特別な後輩がいたそうよ」
「え?」
「本当はメンティにしたかった。相思相愛の後輩よ」
「は…」
ふって湧いたような話に、柚鈴は目を丸くしてしまう。
あの、志奈さんが。
在学中にメンティにしたかった相手がいた?
言葉の意味には複雑な所など決してないのに、柚鈴は意味を中々呑み込めなかった。
「まあ相思相愛だった、という噂が一番有力とは言われているけど、どちらかの思慕がより強かったという噂だったりもあるから本当の所は分からないけれど。でも特別な関係であったというのが、一般的な認識なのよ。生徒会に関われば、当然そのことで柚鈴さんも悩むかもしれないわ」
悩むことになる。
思いがけず、東郷先輩の気遣いをうけ、柚鈴は戸惑いつつ確認する。
「それが噂じゃなくて、本当だからですか?」
「恐らく、ね。先日の体育祭の時の前生徒会長である小鳥遊先輩の言葉を聞けば、今は柚鈴さんとの関係を大切にしているのだろうとは思うけど。それでもあなたがあの人を慕って生徒会に関わろうとするのは、良い結果になるとわ思えないわ」
「ち、ちょっと待ってください」
柚鈴は、東郷先輩の言いたいことに気付いて、声を上げた。
さっきから生徒会に関わることで、柚鈴が傷つく、と繰り返されている。
そのことの意味にようやく気づいた。
「つまり、その噂の相手って。今、生徒会メンバーにいるってことですか?」
「そうよ」
あっさりと東郷先輩は頷いた。
それから答えも簡単に言葉にしてくれる。
「現生徒会会長である、長谷川凛子先輩がそうなのだから」
聞き間違えようのない言葉に、柚鈴は息を呑んだ。
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