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第四章 6月
お姉さま、心から大切にしたいものって、何ですか? 3
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夜。清葉寮の談話室にて。
どうにか仕上がったという幸の原稿を頼まれ、読ませてもらいながら、柚鈴は混乱しまくっていた。
理由は当然ながら東郷先輩に知らされた内容のせいだ。
凛子先輩と、志奈さん?
振ってわいたような話が整理できない。
あの後、生徒会手伝いを今すぐ断るように迫る東郷先輩に。
柚鈴はただ「考えさせてほしい」を繰り返すしか出来なかった。
もちろん東郷先輩は納得していない様子ではあったが、荻原先輩に窘められたのが効いているのか、やがて後日改めると帰っていった。
このことは本当に重い事案である。
だが、それ以上に。
志奈さんにペアになりたい人がいた。しかも良く知っていて、好感を持っている先輩である長谷川凛子であった、というのは妙に深く柚鈴に刺さっていた。
事の真偽を、悩んでも考えても何も結論は出ない。仕方ないと分かっていながらもついつい考えてしまう。
その理由は上手く言葉にできなかったが。
一番近い言葉で表すなら。
ショックだった、といったところだろうか。
二人の関係を否定するほどの材料もなく、かといって納得するほど深く関わっているわけでもない。
見えそうで見えない事実に、中途半端に関わってしまっていて、さらに自分でも良く分からない感情がある。
どこから整理して、どう受け止めればいいのか。
妥協点すら見つからなかった。
「柚鈴ちゃん、ちゃんと読んでる…?」
幸の声にはっとして顔を上げると、じぃっと柚鈴を透かし見るような澄んだ瞳が向けられていた。
気が付けば、しっかり手も止まっている。
もちろん頭にも内容は入っていなかった。
「ご、ごめん」
「何かあったの?」
「うん…」
どこか心配そうに聞かれると、感情が動いた。
少し切ないような感情が生まれる。
どう言葉を返せばいいのか。柚鈴が言葉を選んでいると。
「ごきげんよう」
ちょうど入室してきた遥先輩がにこやかに声を掛けてきた。
「ごきげんよう」
躊躇うことなく返事を返したのは幸だ。
郷に入らば、という感じで、された返事をそのまま返すことにしているらしい。
その挨拶に馴染めていない、柚鈴は自嘲してから、こんばんわ、と小さく返した。
挨拶の違いには特に気にした様子はなく、遥か先輩は幸を見た。
「聞いたわよ、幸さん。今年の常葉祭、生徒会作品の話は幸さんが作るそうね」
「へへ。そうなんですよ。と言っても、ようやく形になったところなんですけど」
幸が答えると、遥先輩はあら、と目を輝かせた。
「じゃあつまり、二人の手にあるのが、その原稿ということかしら」
「はい!今、おかしなところがないか柚鈴ちゃんに読んでもらってたんです」
「私も読みたいわ。ダメかしら?」
「生徒会提出作品ですから、良くないかもしれないですけど…」
幸は柚鈴の方を見てから、う~んと考えるような仕草をした。
「正直なところ、提出前にどなたかの感想は欲しい、という本音もあります」
「ご、ごめん。私が役に立ってないんだよね」
上の空にて、ご意見どころか読めてもいない。
幸はニコニコっと笑ってくれたが、これは申し訳なかった。
「ということで、遥先輩がネタバレは厳禁ということで、添削していただけるならとても助かります」
「あら、責任重大なのね。添削、なんて偉そうなことを言えはしないけど、読ませて頂けるなら嬉しいわ」
遥先輩は原稿を受けとって、読み始めた。
「で?柚鈴ちゃんにあったことって、なあに?もしかして東郷先輩に呼び出されてたことが関係してる?」
「鋭いね」
「鋭い、のかな?そう考えちゃうのは仕方ない気も…。だって東郷先輩だもん」
へへっと茶化すように肩を竦めて笑う幸を見て。東郷先輩って…と苦笑してしまう。
どうにか仕上がったという幸の原稿を頼まれ、読ませてもらいながら、柚鈴は混乱しまくっていた。
理由は当然ながら東郷先輩に知らされた内容のせいだ。
凛子先輩と、志奈さん?
振ってわいたような話が整理できない。
あの後、生徒会手伝いを今すぐ断るように迫る東郷先輩に。
柚鈴はただ「考えさせてほしい」を繰り返すしか出来なかった。
もちろん東郷先輩は納得していない様子ではあったが、荻原先輩に窘められたのが効いているのか、やがて後日改めると帰っていった。
このことは本当に重い事案である。
だが、それ以上に。
志奈さんにペアになりたい人がいた。しかも良く知っていて、好感を持っている先輩である長谷川凛子であった、というのは妙に深く柚鈴に刺さっていた。
事の真偽を、悩んでも考えても何も結論は出ない。仕方ないと分かっていながらもついつい考えてしまう。
その理由は上手く言葉にできなかったが。
一番近い言葉で表すなら。
ショックだった、といったところだろうか。
二人の関係を否定するほどの材料もなく、かといって納得するほど深く関わっているわけでもない。
見えそうで見えない事実に、中途半端に関わってしまっていて、さらに自分でも良く分からない感情がある。
どこから整理して、どう受け止めればいいのか。
妥協点すら見つからなかった。
「柚鈴ちゃん、ちゃんと読んでる…?」
幸の声にはっとして顔を上げると、じぃっと柚鈴を透かし見るような澄んだ瞳が向けられていた。
気が付けば、しっかり手も止まっている。
もちろん頭にも内容は入っていなかった。
「ご、ごめん」
「何かあったの?」
「うん…」
どこか心配そうに聞かれると、感情が動いた。
少し切ないような感情が生まれる。
どう言葉を返せばいいのか。柚鈴が言葉を選んでいると。
「ごきげんよう」
ちょうど入室してきた遥先輩がにこやかに声を掛けてきた。
「ごきげんよう」
躊躇うことなく返事を返したのは幸だ。
郷に入らば、という感じで、された返事をそのまま返すことにしているらしい。
その挨拶に馴染めていない、柚鈴は自嘲してから、こんばんわ、と小さく返した。
挨拶の違いには特に気にした様子はなく、遥か先輩は幸を見た。
「聞いたわよ、幸さん。今年の常葉祭、生徒会作品の話は幸さんが作るそうね」
「へへ。そうなんですよ。と言っても、ようやく形になったところなんですけど」
幸が答えると、遥先輩はあら、と目を輝かせた。
「じゃあつまり、二人の手にあるのが、その原稿ということかしら」
「はい!今、おかしなところがないか柚鈴ちゃんに読んでもらってたんです」
「私も読みたいわ。ダメかしら?」
「生徒会提出作品ですから、良くないかもしれないですけど…」
幸は柚鈴の方を見てから、う~んと考えるような仕草をした。
「正直なところ、提出前にどなたかの感想は欲しい、という本音もあります」
「ご、ごめん。私が役に立ってないんだよね」
上の空にて、ご意見どころか読めてもいない。
幸はニコニコっと笑ってくれたが、これは申し訳なかった。
「ということで、遥先輩がネタバレは厳禁ということで、添削していただけるならとても助かります」
「あら、責任重大なのね。添削、なんて偉そうなことを言えはしないけど、読ませて頂けるなら嬉しいわ」
遥先輩は原稿を受けとって、読み始めた。
「で?柚鈴ちゃんにあったことって、なあに?もしかして東郷先輩に呼び出されてたことが関係してる?」
「鋭いね」
「鋭い、のかな?そう考えちゃうのは仕方ない気も…。だって東郷先輩だもん」
へへっと茶化すように肩を竦めて笑う幸を見て。東郷先輩って…と苦笑してしまう。
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