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チャプター【063】
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白い壁に包まれた一室。
白衣を着た女性が机に坐り、パソコンの画面を覗きながらキーボードを叩いている。
と、机の上の内線が鳴った。
女性は画面から眼を離さずに受話器を取った。
「植草博士。準備が整いました」
受話器の向こうで、女性の声がそう言った。
「そう。わかったわ」
白衣を着た博士と呼ばれた女性――植草は、そう答えると受話器をもどして立ち上がった。
部屋を出ると、廊下を右へと歩いていく。
廊下も、やはり白い。
すべてが白で統一されているようだ。
しばらく行くと、突きあたりに実験室らしき一室があり、そこへ植草は入っていった。
室内には、白衣を着たふたりの助手がいた。
そのふたりは女性であった。
中央の手術台には、少女が横たわっている。
身体の大半が、深緑色の光沢を持った鱗で被われている。
両手首と両脚がベッドに拘束されていて、その拘束を外そうとでもするように、少女はしきりに腕と足を動かしている。
その少女に植草は近づいていった。
「暴れても無駄よ。これはあなたの力じゃ外せないわ」
少女は、植草を脅えた瞳で見つめる。
「そんなに恐がらなくていいのよ、美鈴ちゃん。ちょっと痛いかもしれないけど、我慢してちょうだい。あなたはこれから、素晴らしいものに生まれ変わるのだから」
植草は微笑みを浮かべてそう言うと、メスを手にして、少女の胸の鱗の部分にあてた。
そのとたん、少女――美鈴は叫び声をあげた。
植草はお構いなしに、美鈴の胸にメスを入れていく。
痛みに耐えきれず、美鈴は手術台の上で暴れる。
「身体を押さえて」
植草に言われ、暴れる美鈴を助手のふたりが抑えつける。
美鈴は首をふり、涙を流しながら叫びつづけた。
その美鈴を、助手のふたりは何の感情もない眼で押さえつける。
と、そのときだった。
ドーン、という重い音とともに室内が揺れたと思うと、とつぜん照明が落ちた。
だれも声をあげるものはいない。
非常照明があるからだ。
数秒も待たずに、その非常照明が点灯し、それと同時に警報のアラームが鳴り響いた。
何事かと、植草が卓上電話の受話器を取り、内線で守衛室を呼んだ。
すぐに応答があった。
「いったい、なにがあったの?」
守衛の男に訊いた。
「バ、バタフライです! バタフライが、電力源を爆破しました!」
「なんですって! なぜ、彼女がそんなことを!」
「わかりません。ですが、すでにふたりが――」
そこで、守衛の男の声が途切れた。
「もしもし! もしもし!」
植草は呼ぶが、応答がない。わずかに沈黙があって、
「植草博士」
女の声が返ってきた。
「蝶子――」
植草の声が固くなった。
「久しぶりだね」
「そんなことより、どういうつもりなの? ラボを襲うなんて」
植草の声には、狼狽の色があった。
「その娘を、返してもらいに来ただけさ」
「その娘って、どういうこと? この娘と、あなたにどんな関係があると言うのよ」
植草は顔を巡らして、室内に取りつけてあるカメラに顔を向けて言った。
「その顔からすると、市川からなにも聞いてないらしいね。私はその子に借りがあるのさ」
そう言うと蝶子は、モニターに映る植草を見つめながら、受話器をもどさずにデスクの上に置いた。
受話器からは、植草の声が響いている。
それにかまわず、蝶子は守衛室を出たると迷わずに廊下を左へと進んだ。
白衣を着た女性が机に坐り、パソコンの画面を覗きながらキーボードを叩いている。
と、机の上の内線が鳴った。
女性は画面から眼を離さずに受話器を取った。
「植草博士。準備が整いました」
受話器の向こうで、女性の声がそう言った。
「そう。わかったわ」
白衣を着た博士と呼ばれた女性――植草は、そう答えると受話器をもどして立ち上がった。
部屋を出ると、廊下を右へと歩いていく。
廊下も、やはり白い。
すべてが白で統一されているようだ。
しばらく行くと、突きあたりに実験室らしき一室があり、そこへ植草は入っていった。
室内には、白衣を着たふたりの助手がいた。
そのふたりは女性であった。
中央の手術台には、少女が横たわっている。
身体の大半が、深緑色の光沢を持った鱗で被われている。
両手首と両脚がベッドに拘束されていて、その拘束を外そうとでもするように、少女はしきりに腕と足を動かしている。
その少女に植草は近づいていった。
「暴れても無駄よ。これはあなたの力じゃ外せないわ」
少女は、植草を脅えた瞳で見つめる。
「そんなに恐がらなくていいのよ、美鈴ちゃん。ちょっと痛いかもしれないけど、我慢してちょうだい。あなたはこれから、素晴らしいものに生まれ変わるのだから」
植草は微笑みを浮かべてそう言うと、メスを手にして、少女の胸の鱗の部分にあてた。
そのとたん、少女――美鈴は叫び声をあげた。
植草はお構いなしに、美鈴の胸にメスを入れていく。
痛みに耐えきれず、美鈴は手術台の上で暴れる。
「身体を押さえて」
植草に言われ、暴れる美鈴を助手のふたりが抑えつける。
美鈴は首をふり、涙を流しながら叫びつづけた。
その美鈴を、助手のふたりは何の感情もない眼で押さえつける。
と、そのときだった。
ドーン、という重い音とともに室内が揺れたと思うと、とつぜん照明が落ちた。
だれも声をあげるものはいない。
非常照明があるからだ。
数秒も待たずに、その非常照明が点灯し、それと同時に警報のアラームが鳴り響いた。
何事かと、植草が卓上電話の受話器を取り、内線で守衛室を呼んだ。
すぐに応答があった。
「いったい、なにがあったの?」
守衛の男に訊いた。
「バ、バタフライです! バタフライが、電力源を爆破しました!」
「なんですって! なぜ、彼女がそんなことを!」
「わかりません。ですが、すでにふたりが――」
そこで、守衛の男の声が途切れた。
「もしもし! もしもし!」
植草は呼ぶが、応答がない。わずかに沈黙があって、
「植草博士」
女の声が返ってきた。
「蝶子――」
植草の声が固くなった。
「久しぶりだね」
「そんなことより、どういうつもりなの? ラボを襲うなんて」
植草の声には、狼狽の色があった。
「その娘を、返してもらいに来ただけさ」
「その娘って、どういうこと? この娘と、あなたにどんな関係があると言うのよ」
植草は顔を巡らして、室内に取りつけてあるカメラに顔を向けて言った。
「その顔からすると、市川からなにも聞いてないらしいね。私はその子に借りがあるのさ」
そう言うと蝶子は、モニターに映る植草を見つめながら、受話器をもどさずにデスクの上に置いた。
受話器からは、植草の声が響いている。
それにかまわず、蝶子は守衛室を出たると迷わずに廊下を左へと進んだ。
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