甦る妻

星 陽月

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【チャプター 22】

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(僕が殺したのか……)

 中沢は呆然と己の手のひらを見つめた。
 この手で妻の首を絞め、殺してしまった。
 今度こそ、確実に。
 眼を剥いたまま動くことのない妻は、何もかもを投げ出してしまったかのように仰向いて横たわっている。
 淡い灯りに浮かぶその肉体は、もう命の炎を消してしまっているというのに、小高い丘に生えた陰草だけは、残り火のように燃えている。
 剥き出しになったままの花園からは、中沢の吐き出した白く濁った毒が流れ出して鈍く光っていた。

 あなたにはわかる? 
 これは、夢?――

 その声が脳裡に響いてくる。
 それは、横たわった妻の死体から聴こえてくるようにも思え、見開いた眼が、またもぎょろりと動くのではないかという気がしてくる。
 中沢は怖気を覚えて指先で妻の瞼を閉じさせると、彼女の身体に頭からシーツをかけた。
 とにかく、その場から離れたかった。
 中沢はベッドを降り、下着とパジャマを身につけ寝室を出ようとした。
 そのときだった。
 静寂を破って、とつぜん室内のどこからか電子音のメロディが流れ出した。
 中沢は一瞬びくりとして、眼と耳でその音のありかを探した。
 そのメロディは何かに遮られているのか、小さくこもって流れている。
 それが妻のスマート・フォンの着信メロディの音だということに、中沢はようやく気づいた。
 耳で音を探っていくと、そのメロディ音はドレッサーの上に置かれている妻のバッグの中から聴こえてきていた。

(男からだ……)

 その思いに、バッグからスマート・フォンを取り出すと、中沢は相手の確認もせずに出てしまった。

「あ、姉さん」

 相手の声は妻の弟の直也だった。
 そのときになって、妻のスマート・フォンだというのに出てしまったことを後悔した。

「直也だけどさ」
「――――」

 中沢は返答をすべきかどうか迷った。
 ほんのわずかな間が生じる。

「もしもし――あれ? 聴こえてる? もしもーし」

 一瞬の迷いが、声を出すタイミングを失わせてしまった。
 義弟は当然、何も返答がないことをおかしいと思うだろう。
 だが、といっていまさらここで返答を返すというわけにもいかない。
 中沢は身を硬くし、息を潜めた。

「姉さん、聴こえてる? あ、もしかして、電話に出ておいて、また寝ちゃったってやつ? もしもーし――なんだよ、やっぱり寝てるのか。まったく、しかたないな。それじゃ、メールを送っておくよ」

 何のことはなく、義弟は最後に独りごちるとように言うと通話は切られた。
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