37 / 74
【第37話】
しおりを挟む
「あらアンタ、むずかしいこと知ってるじゃないの」
と、カオル。
「大学では、遺伝子工学の中の進化論が好きだったの」
「へー、そうだったの。そんなのこと、私に言ったことなかったじゃない」
と、紀子。
「だって、だれも面白がって聞く人はいないもの。だから話さなかったの。それに、進化論なんて女のする話じゃないでしょ」
「そうかもしれない。でも、私は嫌いじゃないわよ。その手の話」
「アタシも。その進化があってこそ、いまの私たちが存在するんだもの」
「じゃあ、ひとつレクチャーしてあげる。あらゆる生物は、食物連鎖で成り立っているのは知っているわよね」
「ええ、弱肉強食ってやつでしょ?」
紀子が答え、カオルは聞き手にまわる。
「そう。だから、特に人間社会はそうだけど、一般的に弱いものが滅びると思われているじゃない? でも違うの。進化の過程で滅びていったのは、強いものたち。強いものたちは、他に敵がいなくなるから、進化のピークに達してしまうのよ。でも、弱いものたちは違う。身を護るためには、進化しつづけなければならなかったの」
「それが、過酷な環境に適応するための突然変異なのね」
「そうなのよ。生物はバクテリアから進化して魚類になった。そしてそこに強者が生まれる。弱者は、その強者から身を護れるところへと逃げていく。ある弱者は、浅瀬へと逃げた。体躯の大きい強者から身を護れるところといえば、浅瀬が適していたから。なのに強者は、そんな浅瀬にもやってくる。弱者は、朽ちて倒れた木々のあいだに身を隠す。それではさすがに、強者は入りこめない。そうしているうちに、弱者だった魚類の鰭が進化していくの。枯れ枝や枯葉を掻き分けられるように」
「それが脚になるわけね」
「そうよ。すごいでしょ」
「うん。なんか、わくわくしてきた」
「そして、気の遠くなる年月を経て、弱者は陸への第一歩を踏み出した。それでも陸に上がったら上がったで、また強者が生まれてくる」
「そして弱者は、逃げながら進化していく」
「強者だって進化しないわけじゃないわよ。強者はより強くなるために進化していく。そして、強くなりすぎたために進化が止まる。だけど、弱者だって強者がいただけでは進化にはいたらない」
「自然環境の変化ね」
「そういうこと。その頃は、自然環境も安定していないから、天変地異が起こる。そうなると、進化が止まった強者は環境の変化に適応できなくなるから滅びていくだけ」
「なるほど。それにしても、生物って逞しいわね。過酷極まりない環境の中で、生き抜いてきたんだから」
「そうよね。弱者は弱者であるがゆえに、生存をかけて、どんな環境にも適応しようと進化していった。そしてまた、長い年月の末に、哺乳類が誕生するのよ。紀子。ここでひとつ問題。哺乳類と、他の生き物の違いってわかる?」
「それくらい、私だってわかるわよ。哺乳類は受胎だけど、他の生き物は卵でしょ」
「正解。じゃあ、生物はもともと卵を産んでいたのに、どうして受胎する哺乳類に進化したと思う?」
「それは……」
紀子は考えこむ。
「アタシが答えてあげるわ」
聞き手にまわっていたカオルが、あいだに入ってきた。
「それは外敵から子孫を護るためよ。卵だと、巣を離れたときに食べられちゃうじゃない。それに、卵を温めるためには、どんなに危険が待ち受けているとしても巣にもどらなきゃならないし。その点、体内に子供を宿していれば、巣に危険が迫っても、どこへでも逃げることができるでしょ? だから女には卵巣があるのよ。卵の巣」
「そのとおり。カオルちゃんも、なかなか知ってるじゃない」
「あら、先生にお褒めの言葉をいただいちゃったわ」
カオルはうれしそうだった。
「ということは、弱者が進化の過程では勝ち組になったってわけなのね」
紀子が訊く。
「そう。外敵から身を護り、苛酷な自然環境に耐えて、逆境を乗り越えていったの。それがほんとうの当の強さなのよ。猿からホモ・サピエンスに進化したのも、大規模な天変地異があったからなんだから」
「あ、それ知ってる。猿の棲んでいた森林に大地震が起きて、その森林を中央から裂くように大きな山ができちゃったんでしょ? それを大まかに右と左に分けると、右側はそれまでどおりに雨も降って緑も豊かで食物も豊富に採れたけど、それとは対照的に、左側は旱魃(かんばつ)になって木々も枯れていき、食物が採れなくなった猿たちは、地上に降りるしかなかった」
「さすが紀子。この手の話が嫌いじゃないってだけはあるわ」
「そうかな」
照れながら紀子もまたうれしそうだ。
「そして人間の祖先たちは、世界へと広がっていったのね。いまこうして3人で話ができるのも、その祖先たち、ううん、ご先祖さまのお陰ね。ありがとう、ご先祖さま」
感慨深げに言うと、カオルは眼を瞑り合掌した。
「過酷さに打ち勝ってこそ、生きる権利が与えられるのね」
「弱者だったものが、人間にまで進化した。改めて考えてみると、惑わされて悩んでいることが、馬鹿らしく思えるわ」
「ほんと。それにしても、人間がまだ進化の過程にいるなら、これからどう進化していくのかな」
「人間が進化していくのは――ううん、進化していかなければならないのは意識だと思うわ」
カオルが言う。
「人間の文明の発展には、すごく目覚しいものがあるけど、意識はまだまだ遅れてる。だって、いまだに戦争をやっているんだもの。どんなに神を語ったって、戦争は人殺しよ。大儀だの正義だのと言っても、そんなものはいい訳にすぎない。ただのウソっぱちよ。平和な国の人間たちだってそう。組織というものの中には利権やら派閥やら、私利私欲のためなら平気で他者を陥れるでしょう。表はどんなに着飾ったって中身はどす黒いものが蠢いてる。それが人間社会。それを弱肉強食だっていうなら笑っちゃうわ。でもそれが、人間が人間であるゆえんであって、まだ人に進化していないところなのよ」
「まだ人に進化してないって、どういうこと?」
思わず紀子が訊く。
「人間ていう字は、人の間(あいだ)って書くでしょ? 人間はまだ、獣と人との狭間にいるのよ。人に成りきれていないの。だから、神という存在が必要なのかもしれないけど」
「なるほどねえ。人間は完璧じゃないものね。だからこそ、惑い惑わされながら、成長していかなければならないのよね。そうして人間から人へと進化していく」
「そうよ。自分を見失わずに前へ進んでいくこと。それも進化。でもアンタたちは、じゅうぶんに進化しているわよ。美しいということも、進化のひとつなんだから」
「やだァ、美しいなんて、もう。カオルちゃんたら正直なんだから。さあ、どんどん飲んで」
紀子は単純に歓んで、カオルのグラスにスコッチを注いだ。
そんな紀子に里佳は、
「紀子は別の意味で、まだまだ進化が必要みたいね」
皮肉交じりの笑みを浮かべた。
3人のトークは、それからますます拍車がかかっていった。
と、カオル。
「大学では、遺伝子工学の中の進化論が好きだったの」
「へー、そうだったの。そんなのこと、私に言ったことなかったじゃない」
と、紀子。
「だって、だれも面白がって聞く人はいないもの。だから話さなかったの。それに、進化論なんて女のする話じゃないでしょ」
「そうかもしれない。でも、私は嫌いじゃないわよ。その手の話」
「アタシも。その進化があってこそ、いまの私たちが存在するんだもの」
「じゃあ、ひとつレクチャーしてあげる。あらゆる生物は、食物連鎖で成り立っているのは知っているわよね」
「ええ、弱肉強食ってやつでしょ?」
紀子が答え、カオルは聞き手にまわる。
「そう。だから、特に人間社会はそうだけど、一般的に弱いものが滅びると思われているじゃない? でも違うの。進化の過程で滅びていったのは、強いものたち。強いものたちは、他に敵がいなくなるから、進化のピークに達してしまうのよ。でも、弱いものたちは違う。身を護るためには、進化しつづけなければならなかったの」
「それが、過酷な環境に適応するための突然変異なのね」
「そうなのよ。生物はバクテリアから進化して魚類になった。そしてそこに強者が生まれる。弱者は、その強者から身を護れるところへと逃げていく。ある弱者は、浅瀬へと逃げた。体躯の大きい強者から身を護れるところといえば、浅瀬が適していたから。なのに強者は、そんな浅瀬にもやってくる。弱者は、朽ちて倒れた木々のあいだに身を隠す。それではさすがに、強者は入りこめない。そうしているうちに、弱者だった魚類の鰭が進化していくの。枯れ枝や枯葉を掻き分けられるように」
「それが脚になるわけね」
「そうよ。すごいでしょ」
「うん。なんか、わくわくしてきた」
「そして、気の遠くなる年月を経て、弱者は陸への第一歩を踏み出した。それでも陸に上がったら上がったで、また強者が生まれてくる」
「そして弱者は、逃げながら進化していく」
「強者だって進化しないわけじゃないわよ。強者はより強くなるために進化していく。そして、強くなりすぎたために進化が止まる。だけど、弱者だって強者がいただけでは進化にはいたらない」
「自然環境の変化ね」
「そういうこと。その頃は、自然環境も安定していないから、天変地異が起こる。そうなると、進化が止まった強者は環境の変化に適応できなくなるから滅びていくだけ」
「なるほど。それにしても、生物って逞しいわね。過酷極まりない環境の中で、生き抜いてきたんだから」
「そうよね。弱者は弱者であるがゆえに、生存をかけて、どんな環境にも適応しようと進化していった。そしてまた、長い年月の末に、哺乳類が誕生するのよ。紀子。ここでひとつ問題。哺乳類と、他の生き物の違いってわかる?」
「それくらい、私だってわかるわよ。哺乳類は受胎だけど、他の生き物は卵でしょ」
「正解。じゃあ、生物はもともと卵を産んでいたのに、どうして受胎する哺乳類に進化したと思う?」
「それは……」
紀子は考えこむ。
「アタシが答えてあげるわ」
聞き手にまわっていたカオルが、あいだに入ってきた。
「それは外敵から子孫を護るためよ。卵だと、巣を離れたときに食べられちゃうじゃない。それに、卵を温めるためには、どんなに危険が待ち受けているとしても巣にもどらなきゃならないし。その点、体内に子供を宿していれば、巣に危険が迫っても、どこへでも逃げることができるでしょ? だから女には卵巣があるのよ。卵の巣」
「そのとおり。カオルちゃんも、なかなか知ってるじゃない」
「あら、先生にお褒めの言葉をいただいちゃったわ」
カオルはうれしそうだった。
「ということは、弱者が進化の過程では勝ち組になったってわけなのね」
紀子が訊く。
「そう。外敵から身を護り、苛酷な自然環境に耐えて、逆境を乗り越えていったの。それがほんとうの当の強さなのよ。猿からホモ・サピエンスに進化したのも、大規模な天変地異があったからなんだから」
「あ、それ知ってる。猿の棲んでいた森林に大地震が起きて、その森林を中央から裂くように大きな山ができちゃったんでしょ? それを大まかに右と左に分けると、右側はそれまでどおりに雨も降って緑も豊かで食物も豊富に採れたけど、それとは対照的に、左側は旱魃(かんばつ)になって木々も枯れていき、食物が採れなくなった猿たちは、地上に降りるしかなかった」
「さすが紀子。この手の話が嫌いじゃないってだけはあるわ」
「そうかな」
照れながら紀子もまたうれしそうだ。
「そして人間の祖先たちは、世界へと広がっていったのね。いまこうして3人で話ができるのも、その祖先たち、ううん、ご先祖さまのお陰ね。ありがとう、ご先祖さま」
感慨深げに言うと、カオルは眼を瞑り合掌した。
「過酷さに打ち勝ってこそ、生きる権利が与えられるのね」
「弱者だったものが、人間にまで進化した。改めて考えてみると、惑わされて悩んでいることが、馬鹿らしく思えるわ」
「ほんと。それにしても、人間がまだ進化の過程にいるなら、これからどう進化していくのかな」
「人間が進化していくのは――ううん、進化していかなければならないのは意識だと思うわ」
カオルが言う。
「人間の文明の発展には、すごく目覚しいものがあるけど、意識はまだまだ遅れてる。だって、いまだに戦争をやっているんだもの。どんなに神を語ったって、戦争は人殺しよ。大儀だの正義だのと言っても、そんなものはいい訳にすぎない。ただのウソっぱちよ。平和な国の人間たちだってそう。組織というものの中には利権やら派閥やら、私利私欲のためなら平気で他者を陥れるでしょう。表はどんなに着飾ったって中身はどす黒いものが蠢いてる。それが人間社会。それを弱肉強食だっていうなら笑っちゃうわ。でもそれが、人間が人間であるゆえんであって、まだ人に進化していないところなのよ」
「まだ人に進化してないって、どういうこと?」
思わず紀子が訊く。
「人間ていう字は、人の間(あいだ)って書くでしょ? 人間はまだ、獣と人との狭間にいるのよ。人に成りきれていないの。だから、神という存在が必要なのかもしれないけど」
「なるほどねえ。人間は完璧じゃないものね。だからこそ、惑い惑わされながら、成長していかなければならないのよね。そうして人間から人へと進化していく」
「そうよ。自分を見失わずに前へ進んでいくこと。それも進化。でもアンタたちは、じゅうぶんに進化しているわよ。美しいということも、進化のひとつなんだから」
「やだァ、美しいなんて、もう。カオルちゃんたら正直なんだから。さあ、どんどん飲んで」
紀子は単純に歓んで、カオルのグラスにスコッチを注いだ。
そんな紀子に里佳は、
「紀子は別の意味で、まだまだ進化が必要みたいね」
皮肉交じりの笑みを浮かべた。
3人のトークは、それからますます拍車がかかっていった。
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ヤクザに医官はおりません
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした
会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。
シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。
無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。
反社会組織の集まりか!
ヤ◯ザに見初められたら逃げられない?
勘違いから始まる異文化交流のお話です。
※もちろんフィクションです。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
一億円の花嫁
藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。
父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。
もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。
「きっと、素晴らしい旅になる」
ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが……
幸か不幸か!?
思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。
※エブリスタさまにも掲載
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
✿ 私は彼のことが好きなのに、彼は私なんかよりずっと若くてきれいでスタイルの良い女が好きらしい
設楽理沙
ライト文芸
累計ポイント110万ポイント超えました。皆さま、ありがとうございます。❀
結婚後、2か月足らずで夫の心変わりを知ることに。
結婚前から他の女性と付き合っていたんだって。
それならそうと、ちゃんと話してくれていれば、結婚なんて
しなかった。
呆れた私はすぐに家を出て自立の道を探すことにした。
それなのに、私と別れたくないなんて信じられない
世迷言を言ってくる夫。
だめだめ、信用できないからね~。
さようなら。
*******.✿..✿.*******
◇|日比野滉星《ひびのこうせい》32才 会社員
◇ 日比野ひまり 32才
◇ 石田唯 29才 滉星の同僚
◇新堂冬也 25才 ひまりの転職先の先輩(鉄道会社)
2025.4.11 完結 25649字
子持ち愛妻家の極悪上司にアタックしてもいいですか?天国の奥様には申し訳ないですが
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
胸がきゅんと、甘い音を立てる。
相手は、妻子持ちだというのに。
入社して配属一日目。
直属の上司で教育係だって紹介された人は、酷く人相の悪い人でした。
中高大と女子校育ちで男性慣れしてない私にとって、それだけでも恐怖なのに。
彼はちかよんなオーラバリバリで、仕事の質問すらする隙がない。
それでもどうにか仕事をこなしていたがとうとう、大きなミスを犯してしまう。
「俺が、悪いのか」
人のせいにするのかと叱責されるのかと思った。
けれど。
「俺の顔と、理由があって避け気味なせいだよな、すまん」
あやまってくれた彼に、胸がきゅんと甘い音を立てる。
相手は、妻子持ちなのに。
星谷桐子
22歳
システム開発会社営業事務
中高大女子校育ちで、ちょっぴり男性が苦手
自分の非はちゃんと認める子
頑張り屋さん
×
京塚大介
32歳
システム開発会社営業事務 主任
ツンツンあたまで目つき悪い
態度もでかくて人に恐怖を与えがち
5歳の娘にデレデレな愛妻家
いまでも亡くなった妻を愛している
私は京塚主任を、好きになってもいいのかな……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる