fateful meeting（フェイトフル ミーティング）～職業【遊び人】になってしまった僕だけど幸せになります！～

【序章】①

『もしもし、母さん――』

　僕は母親に電話を掛けた。

　一週間も連絡できなくてごめんね。
　え？
　警察に捜索願を出した？　
　ダメダメ、それダメだって！　
　すぐに取り消してよ。
　僕だったら、大丈夫だから。
　ただ、訳があって、しばらくは帰れないんだけど……。
　ん？
　どこにいるのかって？
　うーん……、僕もここがどこなのか……。
　さっぱり、わからないんだよね。
　ハハ……。
　いや、違う、違う。
　拉致されたなんて、あるわけないじゃない。
　僕なんて拉致したところで、メリットまったくなしだし。
　え？
　そう言わされてるんじゃないかって？
　いやいや、だから、そういうんじゃないから……。
　それなら、どうしてそんなに声がうわずっているのかって？
　うわずってなんかないよ、僕は前からこんな話し方じゃないか。
　うん、そう、そうだって。
　だから心配しなくていいから。
　可能な限り、連絡するし。
　うん、うん、わかった、わかった。
　え？
　何て？
　名前を言ってみろ？
　はあ？
　どうしてそうなるの？
　オレオレ詐欺だとでも思ってる？
　声でわかるでしょ、この声を聴けばさ。
　雑音がすごくて聴こえ難い？
　ま、そうだね、確かに電波、悪いね……（僕には、電話を掛けることができた自体、不思議なんだけど）。
　え、うん、うん、そうなんだ。
　店長も心配してくれてるんだ。
　そうだな、これ以上の迷惑は申し訳ないから、辞めるって伝えてくれるかな。
　うん、ありがと。
　え？　
　それはちょっとわからないよ。
　検討がつかないんだ。
　あ、ちょっと、泣いたりしないでよ。
　ほんとに大丈夫だから、ね。

　僕は泣きじゃくる母親をなだめすかしてスマホを切った。
（まさか、異世界にいるなんて、言えるわけないもんな……）
　そうなんだ。
　僕はいま、異世界にいるんだ。
（って、なんでだ～～～～～～～！！！）