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【第14話】
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長い話し合いの末、僕は月に300j(ジェニ)を払ってチェルシーちゃんの家の物置小屋に、滞在することとなった。
3畳くらいの小さな小屋だけど、クワが1本とオケがひとつあるだけ。
正直、お金を払ってまで、どうしてこんな目に遇うのかわからない。
宿に泊まりたかったな……。
以前読んだ漫画や小説の異世界の話しは、もっとチートでめっちゃすごいスキルを使えたり、神獣を従魔(じゅうま)にしたりする。
それに、美男か美女に生まれ変わって思うがままの世界を楽しむことが出来るというのに、この僕ときたら、布団も枕もない小屋で生活しなければならない。
「ハア、毛布もワラの1本もないなんて……」
テンションは下がり、モチベーションなどまったくもって上がりそうもない。
「まったく、明日は村に行って、必需品をそろえないとな」
稼いだお金は家賃としてルミエールさんに没収されたから、村へ行く前にスライムを退治してお金をゲットしなければならない。
いったい、いつまでこんなところにいなければならないのだろうか。
唯一、元の世界とのつながりを持つスマホを手に取ってみた。
今日一日で、僕のLvは「5」になり、ステイタスもわかりやすく10ずつ上がっていた。
【体力 150 魔力50 防御力350
攻撃力150 速度100 知力 150
スキル スマホ 特技 石礫(いしつぶて)】
あまりにもひんぱんに現れるスマイルを相手にするのが煩わしくなって石をぶつけたんだけど、それが特技に認定されているのには笑ってしまった。
気になるのは魔力。
魔法が使えるようになるのかな……。
だったら、最高なんだけど。
「もし魔法が使えたら、元の世界にもどれるのだろうか……」
ふいに、その言葉が口から洩れたそのとき、スマホが鳴った。
三多さんだ……。
僕からはどこへも掛けられないのに、どうして三多さんからは掛けられるのだろうか。
「今日一日、それなりにがんばりましたね」
三多さんはそう言ってきて、
「Lvも上がってきたし、始まりの章としてわりとスタンダードな滑り出しでしょ。お気に召しましたか?」
僕のことなどまったく気にせずに、そうつづけた。
「ハァ? 相変わらず何を言ってるのかわからいんですけど。ってか、いいかげん僕をもとの世界にもどしてくださいよ~。なにせ、昨日から芋とバナナしか食べてないんですからね!!」
「ダイエットになっていいじゃないですか」
「まったくよくないって!!!」
「まあ、とにかく、聞き分けてください。あなたは、そこでやらないといけない使命があるんですから。それをやり遂げない限りは、こちらにもどることはできませんよ」
「だったら、こっちで僕は、何をすればいいんです。使命ってのを教えてくださいよ。いや、それよりも、使命ってなんなのさ。重すぎるでしょ?」
「はいはい」
三多さんは、僕の憤りを簡単にあしらい、
「いいですか、よく聞いてくださいね。こちらにもどる方法は3つあります。まずは、魔力をMAXまで貯めること。
Lv99までですよ」
えーッ!!
Lv99って言っても、この島にはスライムばっかりだし、いったい何ケ月、いや、何年かかればそのLVまでいくっていうのさ……。
「魔力が上がれば、私とのカンバセーションの時間も増えるし、他の人とも連絡が取れるようになりますよ」
「そんな簡単に言わないでくださいよ。他人事だと思って、まったく。この現況を作ったのはどこの誰でもない、三多さん、あなたなんですからね!!」
僕は想いの糧をぶつけてやった。
「……………」
すると、現実の世界の三多さんが黙り込んだ。
僕も少しのあいだ口を利かず、耳に意識を集中して待ったが、三多さんの声は返ってこない。
「あの、三多さん?……」
「……………」
それでも、三多さんは何も言ってこない。
さすがの三多さんも、傷ついたのだろうか。
怒らせたかな……。
「そこにいます?」
もう一度、僕は確認した。
と、
「え? 何? 何か言った? ちょっと、電波が悪いみたい」
三多さんは、そう言ってきた。
噓こけー!!
絶対、聞いてたくせに、聞いてないふりかい!!
「あ、いや、もういいです……。それより、あとのふたつは?」
僕は、腹の虫が治まらないのを、グッと堪えた。
「ちょっと、そんなことでは困りますよ。わたし、あなたをそちらに送り込むときに言いましたよね。運命の出逢いをプレゼントするって。だからあなたは、その世界で生涯を共にしてもいいと思えるパートナーを見つけてください」
「へ?」
「へ?、じゃありませんよ」
「そんな、パートナーって、そう簡単に見つかるわけないし、そんなのそっちにもどるのに関係ないじゃないですか」
「いいえ、それがあるんです」
「なんか怪しいな。信用できない」
僕は不信感をあらわにした。
そんな僕に気分を害したのか、
「そうですか。私はべつにいいんですよ。信じてくれなくても。そちらにずっといたいならね」
突き放すように言った。
何怒ってるんだよ!……。
怒ってるのは、僕のほうなんだぞ!……。
そう言ってやりたいのはやまやまだけれど、僕には三多さんの情報しか頼れる術がない。
「ハイハイ、わかりました。それで、3つ目の条件は何ですか?」
気持ちを新たにそう訊いた。
だが、
「…………」
またもや、無言になってしまった。
さすがに僕も腹が立っているので、
「…………」
無言を通した。
沈黙が流れる。
1分ほどが経っただろうか。
ふいに、三多さんの咳払いが聴こえてきた。
そして、
「では、健闘を祈ります」
その言葉を残して、通話が切れた。
「あの、もしもし、もしもーし!」
結局、3つ目の条件は訊けずじまいとなってしまったのだった。
3畳くらいの小さな小屋だけど、クワが1本とオケがひとつあるだけ。
正直、お金を払ってまで、どうしてこんな目に遇うのかわからない。
宿に泊まりたかったな……。
以前読んだ漫画や小説の異世界の話しは、もっとチートでめっちゃすごいスキルを使えたり、神獣を従魔(じゅうま)にしたりする。
それに、美男か美女に生まれ変わって思うがままの世界を楽しむことが出来るというのに、この僕ときたら、布団も枕もない小屋で生活しなければならない。
「ハア、毛布もワラの1本もないなんて……」
テンションは下がり、モチベーションなどまったくもって上がりそうもない。
「まったく、明日は村に行って、必需品をそろえないとな」
稼いだお金は家賃としてルミエールさんに没収されたから、村へ行く前にスライムを退治してお金をゲットしなければならない。
いったい、いつまでこんなところにいなければならないのだろうか。
唯一、元の世界とのつながりを持つスマホを手に取ってみた。
今日一日で、僕のLvは「5」になり、ステイタスもわかりやすく10ずつ上がっていた。
【体力 150 魔力50 防御力350
攻撃力150 速度100 知力 150
スキル スマホ 特技 石礫(いしつぶて)】
あまりにもひんぱんに現れるスマイルを相手にするのが煩わしくなって石をぶつけたんだけど、それが特技に認定されているのには笑ってしまった。
気になるのは魔力。
魔法が使えるようになるのかな……。
だったら、最高なんだけど。
「もし魔法が使えたら、元の世界にもどれるのだろうか……」
ふいに、その言葉が口から洩れたそのとき、スマホが鳴った。
三多さんだ……。
僕からはどこへも掛けられないのに、どうして三多さんからは掛けられるのだろうか。
「今日一日、それなりにがんばりましたね」
三多さんはそう言ってきて、
「Lvも上がってきたし、始まりの章としてわりとスタンダードな滑り出しでしょ。お気に召しましたか?」
僕のことなどまったく気にせずに、そうつづけた。
「ハァ? 相変わらず何を言ってるのかわからいんですけど。ってか、いいかげん僕をもとの世界にもどしてくださいよ~。なにせ、昨日から芋とバナナしか食べてないんですからね!!」
「ダイエットになっていいじゃないですか」
「まったくよくないって!!!」
「まあ、とにかく、聞き分けてください。あなたは、そこでやらないといけない使命があるんですから。それをやり遂げない限りは、こちらにもどることはできませんよ」
「だったら、こっちで僕は、何をすればいいんです。使命ってのを教えてくださいよ。いや、それよりも、使命ってなんなのさ。重すぎるでしょ?」
「はいはい」
三多さんは、僕の憤りを簡単にあしらい、
「いいですか、よく聞いてくださいね。こちらにもどる方法は3つあります。まずは、魔力をMAXまで貯めること。
Lv99までですよ」
えーッ!!
Lv99って言っても、この島にはスライムばっかりだし、いったい何ケ月、いや、何年かかればそのLVまでいくっていうのさ……。
「魔力が上がれば、私とのカンバセーションの時間も増えるし、他の人とも連絡が取れるようになりますよ」
「そんな簡単に言わないでくださいよ。他人事だと思って、まったく。この現況を作ったのはどこの誰でもない、三多さん、あなたなんですからね!!」
僕は想いの糧をぶつけてやった。
「……………」
すると、現実の世界の三多さんが黙り込んだ。
僕も少しのあいだ口を利かず、耳に意識を集中して待ったが、三多さんの声は返ってこない。
「あの、三多さん?……」
「……………」
それでも、三多さんは何も言ってこない。
さすがの三多さんも、傷ついたのだろうか。
怒らせたかな……。
「そこにいます?」
もう一度、僕は確認した。
と、
「え? 何? 何か言った? ちょっと、電波が悪いみたい」
三多さんは、そう言ってきた。
噓こけー!!
絶対、聞いてたくせに、聞いてないふりかい!!
「あ、いや、もういいです……。それより、あとのふたつは?」
僕は、腹の虫が治まらないのを、グッと堪えた。
「ちょっと、そんなことでは困りますよ。わたし、あなたをそちらに送り込むときに言いましたよね。運命の出逢いをプレゼントするって。だからあなたは、その世界で生涯を共にしてもいいと思えるパートナーを見つけてください」
「へ?」
「へ?、じゃありませんよ」
「そんな、パートナーって、そう簡単に見つかるわけないし、そんなのそっちにもどるのに関係ないじゃないですか」
「いいえ、それがあるんです」
「なんか怪しいな。信用できない」
僕は不信感をあらわにした。
そんな僕に気分を害したのか、
「そうですか。私はべつにいいんですよ。信じてくれなくても。そちらにずっといたいならね」
突き放すように言った。
何怒ってるんだよ!……。
怒ってるのは、僕のほうなんだぞ!……。
そう言ってやりたいのはやまやまだけれど、僕には三多さんの情報しか頼れる術がない。
「ハイハイ、わかりました。それで、3つ目の条件は何ですか?」
気持ちを新たにそう訊いた。
だが、
「…………」
またもや、無言になってしまった。
さすがに僕も腹が立っているので、
「…………」
無言を通した。
沈黙が流れる。
1分ほどが経っただろうか。
ふいに、三多さんの咳払いが聴こえてきた。
そして、
「では、健闘を祈ります」
その言葉を残して、通話が切れた。
「あの、もしもし、もしもーし!」
結局、3つ目の条件は訊けずじまいとなってしまったのだった。
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