fateful meeting(フェイトフル ミーティング)~職業【遊び人】になってしまった僕だけど幸せになります!~

星 陽月

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【第13話】

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「こ……、これはいったいどうしたんだ!」

 眼の前にある大量のバナナとオイル(パパイヤは、まだ身が青かったので採らなかった)、そしてお金を見て、ルミエールさんは驚愕している。

「すげーべ、数えたら300j(ジェニ)もあったど。兄ちゃんが、スライムをいっぺーやっつけてくれただからな」

 そう言って歓ぶチェルシーちゃんを横目に、

「ルミエールさん、この島には、他に人がどれくらいいるんですか」

 僕は気になっていたことを、ルミエールさんに訊いてみた。

「この島に住む人間は、30人ほどだな。ほとんどは、ウチと同じように小さな畑を持ち、自給自足しているよ」
「30人ですか……。それで、お店とかはないんですか?」
「雑貨屋もやってる宿屋が、一件あるだけだな」

 ルミエールさんがそう言ったところへ

「客があんまり来ねぇからな」

 チェルシーが、そう口を挟んだ。

「なるほど、宿屋があるんだ。よかった」

 僕は安堵した。
 とりあえずお金はあるし、その宿に滞在しながら、これからのことや現実世界へ帰る方法を考えることができる。

「それと、もうひとつ。この世界での貨幣価値って、どのくらいですか。この300jで宿屋に泊まるとしたら、何日くらい連泊できるんでしょうか」
「一泊で15jだから20日だが、食費は別料金だから1日30j使うとして10日といったところだな」

 それを聞いていて、僕は思わずガッツポーズした。

 ちょっとスライムを倒しただけで300jも稼げたのに、1日の生活が30jだなんて楽勝じゃん……。

 そんなことを考えながら、僕は席を立ち、

「では、日が暮れる前に宿屋に行こうと思います。場所を教えてください」

 そう言った。

「あ、村に行くなら、裏の畑を――」

 ルミエールさんがそこまで言ったとき、

「ダメだ!!」

 その言葉を、チェルシーちゃんがさえぎった。

「え、なんで?」
「ダメだ、ダメだ! おねげーだ、兄ちゃん。行かねぇでけれ」
「だ、だから、なんで?」

 チェルシーちゃんは僕のシャツを握りしめ、チェルシーちゃんは眼を潤ませて黙り込んでしまった。

「こら、チェル。ユートを困らせてはいけないよ。その手を放しなさい」

 ルミエールさんは、チェルシーちゃんを僕から引き離そうとしたが、彼女は頑固としてそれを拒んだ。

「兄ちゃんは他所からきて、ここのこと何も知らねえんダべ」

 チェルシーは涙に滲んだ眼を僕に向けて言った。

「う、うん。まあ、そうだけど……」
「なら、オラの家(うち)にいてけれ。オラ、兄ちゃんと離れたくねえダ……」

 チェルシーちゃんがそう言うと、

「馬鹿なことを言うんじゃない。この狭い家に彼みたいなデ――あ、いや、大きな人がいたら、窮屈になるじゃないか」

 いま、完全にデブって言おうとしたな……。

 僕はルミエールさんを軽く睨んだ。

「なら、父ちゃんが物置小屋で寝たらいいべ」
「な、なにー!! どうしてわたしがそんなところで寝なきゃならん」
「だって父ちゃん、畑仕事もなーんもしねえべさ。日中は庭さいて、バラさ眺めて唄ってるだけだべ。働かざる者食うべからずって、ローザのおばちゃんも言ってたど」
「うぐ……、わたしは、歌を創るのが仕事なんだ。働いてないわけではない」
「なにがさ。1jも稼いだことねぇべさ。そんなの仕事とは言わねぇ。それに比べて兄ちゃんはすげえ。ほんの3時間くらいで300jも稼いだだぞ。オラ、オラ……、感動した」

 ああ、そういうことか……。
 チェルシーちゃんが、僕を引き留めた理由がなんとなくわかった。
 あどけない無邪気な可愛い子供だと思っていたけど、すごく苦労した娘なんだ。

「お、おまえはお金のために彼を利用しようとしているのか」

 ルミールさんが言う。
 それに対し、

「そっだらことしねぇ。兄ちゃん知らねえ土地さきて、不安だろうに、オラたちの為に、芋を揚げてくれたり、バナナを採ってくれたり、ほんとに働きもんだ!母ちゃんがいなくなって3年……。3年間もただ歌っこさ唄ってた父ちゃんとは大違いだ! 一緒に暮らして、少しは兄ちゃんのこと見習ってけれッ!!」

 チェルシーちゃんは、まくし立てた。
 ルミエールさんは、ぐうの音も出なくなってしまった。
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