fateful meeting(フェイトフル ミーティング)~職業【遊び人】になってしまった僕だけど幸せになります!~

星 陽月

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【第12話】

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 朝食でフライドポテトをたらふく食べたため、この家の食料がほとんど底をつきてしまった。
 どうやら調子に乗って作りすぎたようだ。
 ルミエールさんもチェルシーちゃんも夢中になって食べていたけど、いちばん口に運んでいたのは、もちろんこの僕だ。
 だからお詫びに、チェルシーちゃんの食料探しに同行することにした。
 話によると、バナナやパパイヤがたくさん採れる場所があるらしい。
 しかしそこは、魔物も好んでいる場所なので、気をつけなければならないそうだ。

「とにかく、ささっと食料を採って、さっと逃げるだ。魔物に囲まれたら、一貫の終わりだ」

 チェルシーちゃんが真剣な眼差しを向けてそう言った。

 ま、魔物だって……!?

 僕は一瞬、尻の穴がすぼまる思いがした。
 どうやら、物見遊山というわけにはいかない。
 命を落とす恐れがあるということなのだ。

 気をひきしめないとな……。

 チェルシーちゃんに格好いいところを見せようとして、魔物に挑んだところで、僕に勝ち目など1億分の1もありゃしない。

 そうだよな。逃げるが勝ちだよ……。

「うん、わかった」

 魔物に囲まれてしまったら、万事休すだ。
 というわけで、同行というよりもお供をするといった感じで、チェルシーちゃんのあとをついていった。
 海に近い小高い丘に向かう中途で、スライムが3回ほど出現し、

 魔物でなければ、この僕だって……。

 その都度倒すと、スマホがブルブルと振動した。
 僕がスマホを手にすると、

「なんだ、それ?」

 チェルシーちゃんが覗き込んできた。
 そのとき、

『Lvが上がり、Lv1~Lv2となりました」

 そんな音声が鳴り、「Lv1~Lv2になりました」という表示が画面に現れたのだった。

 なるほど、Lvが上がるとこんな風に知らせてくれるんだ……。
 そんなことより、僕は現世に帰りたいんだよなぁ……。

 母親に電話を掛けてみたが、やはりつながらない。

 三多め~……。

 胸の中で怒りをフツフツと感じていることに、チェルシーちゃんは気づかず、

「Lvが上がったみたいだ。なだども、兄ちゃんは、なして遊び人なんかを職業に選んだダ?」

 そう言った。

「僕が選んだわけじゃないよ。それに、遊び人が職業だなんて知らなかったし……。そもそも、遊び人て何をしたらいいの? 僕はどちらかと言えば、真面目な働き者なんだけど……」
「んダ。兄ちゃんは見るからに良い人だもんな。遊び人なんて軽薄な職業は似合わね」
「やっぱり、遊び人ていいもんじゃないよね」
「んダよ。パーティに出ても、他の者の邪魔ばかりして足を引っ張るし、まったく役に立たねえダ」

 どうしようのない、とでも言うようにチェルシーちゃんは眼をつぶり、首をふった。

 そこは現実世界のゲームと同じってわけね……。

「でもさ、遊び人を極めたものは、賢者になれるんじゃないの?」

 僕のその言葉に、チェルシーちゃんはハッとした顔をして、僕を尊敬の眼差しで見た。

「賢者……。確かに、賢者様になるには、遊び人になるのが近道だってことだけンども、だから兄ちゃんは遊び人になっただか」
「え、いや、僕は、賢者にも、もちろん遊び人にだってなるつもりなんかないよ。僕は、ふつうでいいんだ。ごくふつうに暮らしたいんだよ。だって、魔物と闘うなんて無理だし……」

 とは言いつつも、ちょくちょく現れるスライムを、その辺に落ちている枯れ枝で叩いて倒しまくった。
 初めは可哀そうだとも思ったけれど、ひんぱんに「ピキーッ!!」という声で襲ってこられると、居たくもかゆくもないけれど、正直ウザい。
 けれど、倒してもすぐにオイルやお金を落として蒸発してしまうから、罪悪感はまったく感じない。

「兄ちゃんは強ェのに、闘うのが怖ェなて信じらんねえダ」

 そう言いながら、チェルシーちゃんは、せっせとオイルやお金を拾い集めてくれている。
 目的地に着いたころには、持ってきたカゴがいっぱいになっていた。
 そして、そのときの僕のLvは、「3」に上がっていた。
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