fateful meeting(フェイトフル ミーティング)~職業【遊び人】になってしまった僕だけど幸せになります!~

星 陽月

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【第11話】

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「チェルシーちゃん、台所借りるよ」

 僕は芋を持って、形ばかりの台所へ向かった。
 呆気に取られたような顔をする親娘を尻目に、僕は焦げた芋の皮をむいて適当に切り、油を入れて熱したフライパンで揚げた。
 出来上がったのはフライドポテトだ。
 仕上げに塩をふり、ふたりの前に出した。

「うわ、いい匂いだぁ! 食っていいだか?」

 チェルシーちゃんは眼をキラキラと輝かせて言った。
 ルミエール氏までが、よだれを垂らさんばかりにフライドポテトを見つめている。

「もちろんだよ。みんなで食べよう」

 そうして三人は、
 ひたすらフライドポテトを食べ始めた。
 お皿のフライドポテトがなくなれば、また揚げ、そして揚げてはまた食べた。
 それをくり返していたら、タルの中の芋は空になってしまった。

「はぁ、うめかったなぁ。なあ、父ちゃん」
「…………」

 ルミエールさんはそれに答えない。
 しかし、

 フフン、澄ました顔をしていても口許が油でてらてら光ってますよ、ルミエールさん……。

 僕は胸の中で笑ってしまった。
 とはいえ、自分が作ったものを、歓んでもらえるのは気分がいいものだ。
 ちょっとだけ冒険してみるのもいいかな、なんて思ったりしたけど、僕はやっぱり現世にもどって弁当屋で働きたい。
 そんな考えが頭の中に浮かんだ。

 でも、どうやったら、もどれるんだろう……。

 その思いに、

「あ、あの、ですね……、いまの状況を説明するのは、非常にむずかしいんですけど、実は僕……、こことは違う別の世界から来たんです。信じてはもらえないだろうけど、つまり異世界ってやつです」

 そう言った。
 おかしなヤツだと思われるの承知の上でだ。
 けれど、ルミエールさんはというと、冷静な顔で僕を見ると、

「あ、ああ、だろうな。その身なりで察しはつくよ」

 そう返してきた。

「へ? 察しはつくって、それじゃ、僕のように異世界から来た人間がいるんですか!!」

 びっくりしたのは、僕のほうだった。

「10年に一度くらいやってくるよ。勇者ってヤツがな」

 それを聞いてたチェルシーちゃんが、

「わぁ~、やっぱり~!!! 兄ちゃんは勇者様だっただか!」

 チェルシーちゃんは、眼を輝かせていた。

「はは、チェルシーよ、よく見てみろ。こんなふっくらした勇者がどこにいる」

 ルミエールさんは軽く首をふると、ため息までついた。

「だども、見た目は関係ねえべ」

 そこでまた、僕は考えてみた。
 僕は勇者なのだろうか、と。
 でも、三多さんは確かに勇者を探していると言っていた。
 ってことは、僕はほんとに勇者……、なのだろうか。

「オラは、兄ちゃんは絶対に勇者様だと思う」
「わかった。なら、彼を鑑定してみよう」

 僕を鑑定?
 どういうことだ? 

 意味がわからぬまま、ルミエールさんが僕へ手のひらを向けて「オン!」と唱えた。
 すると、僕の眼の前の空間に、なにやら文字と数字らしきものが浮かんだ。

『職業 遊人(ゆうじん) Lv 1
   ステータス
 体力  100 魔力  0
 防護力 303 攻撃力 100
 速度  50   知力      100     』

 え? なに、これ?

 空間に浮かぶその文字と数字を不思議そうに見つめていると、

「これが君のステータスさ」

 ルミエールがそう言った。

「これが、僕のステータス……」

 僕は少し興奮した。

 だけど、遊人って……。
 どうして?
 勇者じゃなかったの?

「やはりな。まあ、Lv1にして、体力、防護力、攻撃、知力はそこそこある。特に防護力。しかし、遊人ではなぁ」

 冷ややかに笑って首をふるルミエールの隣で、チェルシーちゃんがガックシとうなだれていた。
 どうやら言葉どおり、「遊人」はいい職業ではなかったようだった。
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