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【第17話】
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「こんなものしか出せなくて、すまないな」
眼の前に出された食事に、僕はショックが隠せなかった。
海藻のスープに、海藻サラダ。
そして、メインが海藻の炒め物だ。
10Jも払って、どうしてこんな海藻ばかり食べなけりゃならないんだ……。
この島に来てから、ろくなものを食べてない。
いったいどういう食文化なのだろうか。
肉とか魚とかを食べたかっただけに、次第に腹が立ってきた。
そんな僕の表情を窺い見た店主が、
「パンも焼いてるから、もう少し待っててくれよ」
愛想笑いを浮かべて、僕の前に腰かけた。
ワカメをずるずる啜りながらも、僕は気持ちは治まらなかった。
僕という人間は、お調子者的なところもあるけれど、基本は温厚なほうだ。
それなのに、空腹が限界に達すると、こんなにも機嫌が悪くなり、イライラしてしまうものなのか。
元の世界じゃ、空腹はすぐに満たされたし、自分の食べたいものを食べられた。
しかし、この世界では、どうやらそうはいかないみたいだ。
こんなことがつづいたら、元の世界にもどったとき、僕は嫌な性格の持ち主になってしまうんじゃないか?……。
そんなことを、ふと考えていると、
「そうだ。まだ自己紹介をしてなかったな。俺の名はネルだ。本名ではないがな。この世界に来たときは、夢なら覚めてほしいと思って寝てばかりいたら、ネルって名前をつけられて、それが定着しちまったんだ」
へんな自己紹介をしてきた。
僕はそれを聞いて、思わず吹き出してしまった。
お陰で、少しイライラが治まった。
「僕はユート。本名は小島勇人。ネルさん、あなたの本名は?」
「俺の本名は、斉賀流星。あ、いま、名前負けしてるって思っただろ」
店主――ネルさんは、眉根を寄せて僕を見た。
「いや、と、とんでもない。そんなこと思うわけないじゃないですか。あなたは、背も高いし雰囲気もあって、斉賀流星がすごく似合ってますよ」
「ん、そうか? 俺の本名、イケてるってか」
「ええ、とっても」
「そうか」
ネルさんは、満足そうに笑顔になり、だがすぐに真面目な顔になって、
「さっきも言ったが、ふつうはな、王の都の魔術師たちが神殿で勇者を召喚させるんだ。なのにユートはなぜ、こんなへんぴな島に召喚されたんだ?」
そう訊いてきた。
「あ、ええ、それは……」
僕は少し言葉につまった。
三多さんの存在を話してもいいんだろうか……。
たぶん、この様子だと、ネルさんは三多さんの存在を知らないだろう。
とはいえ、この人も僕と同じ世界からこの世界へ召喚されたのだから、これからのことを相談するためにも、包み隠さず説明したほうがいいのかもしれない。
僕がそんなことを思案していると、
「あー、悪い。ユートにそんなことを訊いたって困るよな。王の都のやつらは、こっちの都合も考えずに召喚するんだからな」
ネルさんはそう言って、納得したようだった。
そこで僕は、
「ネルさんは、勇者として召喚されたんですよね。なのにどうして、宿屋なんかやってるの? しかも、海藻しかない食事なんて。この世界の食料事情って、かなりヤバいよね」
真顔でそう訊くと、ネルは「プッ!」っと吹き出した。
「おいおい、こんな異世界に来たってのに、元の世界にもどれる方法とかじゃなくて、飯の心配かよ。ユートは大物だな」
「だってさ、魚料理を食べる気満々だったのに、海藻だけなんてありえないよ」
まったく……。
元の世界にもどる方法だって知りたいけど、まずは食べることが先決だっての……。
「あー、魚が、いや、肉が喰いたい!!」
元の世界にもどる方法は三多さんに聞いてるからいい。
いまは何よりにより、食事のほうが僕には問題なのだ。
ネルさんは、さんざん笑ってから、僕のためのパンを取りにいった。
眼の前に出された食事に、僕はショックが隠せなかった。
海藻のスープに、海藻サラダ。
そして、メインが海藻の炒め物だ。
10Jも払って、どうしてこんな海藻ばかり食べなけりゃならないんだ……。
この島に来てから、ろくなものを食べてない。
いったいどういう食文化なのだろうか。
肉とか魚とかを食べたかっただけに、次第に腹が立ってきた。
そんな僕の表情を窺い見た店主が、
「パンも焼いてるから、もう少し待っててくれよ」
愛想笑いを浮かべて、僕の前に腰かけた。
ワカメをずるずる啜りながらも、僕は気持ちは治まらなかった。
僕という人間は、お調子者的なところもあるけれど、基本は温厚なほうだ。
それなのに、空腹が限界に達すると、こんなにも機嫌が悪くなり、イライラしてしまうものなのか。
元の世界じゃ、空腹はすぐに満たされたし、自分の食べたいものを食べられた。
しかし、この世界では、どうやらそうはいかないみたいだ。
こんなことがつづいたら、元の世界にもどったとき、僕は嫌な性格の持ち主になってしまうんじゃないか?……。
そんなことを、ふと考えていると、
「そうだ。まだ自己紹介をしてなかったな。俺の名はネルだ。本名ではないがな。この世界に来たときは、夢なら覚めてほしいと思って寝てばかりいたら、ネルって名前をつけられて、それが定着しちまったんだ」
へんな自己紹介をしてきた。
僕はそれを聞いて、思わず吹き出してしまった。
お陰で、少しイライラが治まった。
「僕はユート。本名は小島勇人。ネルさん、あなたの本名は?」
「俺の本名は、斉賀流星。あ、いま、名前負けしてるって思っただろ」
店主――ネルさんは、眉根を寄せて僕を見た。
「いや、と、とんでもない。そんなこと思うわけないじゃないですか。あなたは、背も高いし雰囲気もあって、斉賀流星がすごく似合ってますよ」
「ん、そうか? 俺の本名、イケてるってか」
「ええ、とっても」
「そうか」
ネルさんは、満足そうに笑顔になり、だがすぐに真面目な顔になって、
「さっきも言ったが、ふつうはな、王の都の魔術師たちが神殿で勇者を召喚させるんだ。なのにユートはなぜ、こんなへんぴな島に召喚されたんだ?」
そう訊いてきた。
「あ、ええ、それは……」
僕は少し言葉につまった。
三多さんの存在を話してもいいんだろうか……。
たぶん、この様子だと、ネルさんは三多さんの存在を知らないだろう。
とはいえ、この人も僕と同じ世界からこの世界へ召喚されたのだから、これからのことを相談するためにも、包み隠さず説明したほうがいいのかもしれない。
僕がそんなことを思案していると、
「あー、悪い。ユートにそんなことを訊いたって困るよな。王の都のやつらは、こっちの都合も考えずに召喚するんだからな」
ネルさんはそう言って、納得したようだった。
そこで僕は、
「ネルさんは、勇者として召喚されたんですよね。なのにどうして、宿屋なんかやってるの? しかも、海藻しかない食事なんて。この世界の食料事情って、かなりヤバいよね」
真顔でそう訊くと、ネルは「プッ!」っと吹き出した。
「おいおい、こんな異世界に来たってのに、元の世界にもどれる方法とかじゃなくて、飯の心配かよ。ユートは大物だな」
「だってさ、魚料理を食べる気満々だったのに、海藻だけなんてありえないよ」
まったく……。
元の世界にもどる方法だって知りたいけど、まずは食べることが先決だっての……。
「あー、魚が、いや、肉が喰いたい!!」
元の世界にもどる方法は三多さんに聞いてるからいい。
いまは何よりにより、食事のほうが僕には問題なのだ。
ネルさんは、さんざん笑ってから、僕のためのパンを取りにいった。
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